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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第18わ「本当の始まり」

承前

いったい何が起きたのか。全身を拘束されて身動きがとれない。視界も塞がれた。それでいて圧迫感が感じられないのが恐ろしかった。何も見えない。空も地面も無い暗闇に放り込まれたような錯覚。聴覚だけが自由だった。

「❝ゲーム❞にはチュートリアルが必要ですよね?今から最後のレッスンが始まります」

……必要ない。
戦闘、待機、索敵、そして戦闘。
このゲームの流れは十分に分かっている。

「それだけでは不十分です。貴方にはゲームに脱落した❝ニンゲン❞の末路について、特等席で見学していただきます」

そう言うと、視界の暗闇が一気に拭い去られた。五感が徐々に回復する。相棒の隣で尻餅をついたまま金縛りに遭ったように固まった自分を認識する。右腕からは冷気が伝わってくる。俺の右手は相棒の左手に繋がれて、相棒の右手は佐々木の首を掴んだままだ。よせ。やめてくれ。

「ゲームに負けた❝ハントマン❞と❝マンハント❞がどうなるかは既にお見せしましたよね?同胞を躊躇いなく排除する私がニンゲンに情けをかけると思いますか?」

そこを何とか。

「このニンゲンを見逃したとして、その後はどうする気ですか?」

どうするもこうするもあるか。
俺も佐々木も学校に行かなきゃならない。

「口を封じる必要があるのです。❝ゲーム❞のことを口外されると面倒です」

誰も信じやしないさ。
そもそも誰かに話したところで、佐々木にメリットがあるだろうか?

「このニンゲンを生かしておくメリットが何か私にありますか?」

何かしらあると思う。待て。待ってくれ!

「これ以上の話し合いは無駄のようです」

相棒の右腕に一際、力が込められたのが嫌でも感じられる。佐々木が大きく痙攣すると、そのまま血を吹いて白目を剥いて───、全身が弛緩したようだった。四つの牙を獲物の首筋に突き立てると、そのままおぞましい音を立てながら血を啜り始めた。啜る音は止まらない。見る間に同級生の肉体が干からびていくのが分かる。

続く

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