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ハントマン・ヴァーサス・マンハント

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逆噴射小説大賞に応募にしたパルプ小説と、その続きを思いつくまま書き殴っています。ヘッダー画像もそのうち自前で何とかしたいのですが予定は未定のままであります。
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2020年3月の記事一覧

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第128わ「児戯」

(承前) 「嗚呼、絞まってます!私の首が絞まってますよ!ダンナもやりますねぇ。どれどれ、私も少し本気を出すとしましょうか……」 顔色一つ変えない、どころではない。吸血女は少しも堪えていないようだ。このままだとマズい。腕を増やして形勢逆転されてしまう。 「あ、私が腕力を以ってしてダンナに対抗すると思いましたか?不正解!」 何だ?何を繰り出す気だ?狼男か、コウモリの群れでも召喚するつもりか。 「どれも不正解!正解は……べろべろ、ばぁー!!」 離脱は出来ない。俺の四肢は

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第127わ「死の影の谷を往く」

(承前) 左の眼窩が焼けるように痛い。そして痒い。眼球を失った空洞を左手で掻き出そうとするのを右手で咄嗟に押しとどめる。何だ?何が起きた? 「今のはハントマンがニンゲンの皆さんから血液を分けて頂く際に、血管に流し込む体液です。気分次第で分泌される成分の比率は変わりますけどね」 ……蚊だ。蚊の唾液と同じ仕組みなのだ。地獄のような痛痒から逃れようとしてアスファルトの上を仰け反ったり丸まったりしながら転げ回る。 「あ、今のダンナは瞬間的に人類の限界を超えた筋力を発揮できるの

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第126わ「獣面、されど人心」

(承前) ……犬か?俺は犬になればいいのか? 「あれ?この国の犬は人間みたいに喋るんですか?違いますよね?ほらほら、さっさと四つん這いになってください。それからそれから、返事は『ワン』ですからね」 ……耐えろ。逆らって頭の中身をいじくられて、俺が俺でなくなることだけは何としても避けなければならない。俺は俺のままで家族と再会するんだ。 「よしよし、次は❝おすわり❞してもらいましょうか。出来ますかぁ?」 ❝おすわり❞ぐらい出来るワン。舐められたものだワン。 「お手!」

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第125わ「さらば、戻れない日々」

(承前) 相棒の瞬きが止まる。まるで時間を止める魔法にでもかけられたみたいに息遣いが止まる。慎重に相棒の目を覗き込むと、カラフルな飴玉のようだった瞳が今や、スプーンで叩かれたゼリーのように波打っているではないか。 「……演技なんですよね?」 そうだ。あんたを退屈させない為の演技。そのデモンストレーションだ。 「いや、何と言うか。あまりにも迫真の演技だったといいますか。不覚にも茫然自失としてしまって……」 方向性について要望があれば何でも言って欲しい。王侯貴族に仕える

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第124わ「孤独に慣れた心」

(承前) 「はぁ。私が一人で退屈するだろうと。お心遣いはありがたいのですが、そもハントマンとは孤独なものなのです。ニンゲンは家畜に過ぎず、マンハントどもは駆除すべき害獣、そして他のハントマンも、更なる領土を求めて、いずれ戦うことになるライバルでしかないのですから」 その孤独を紛らそうとして、お前ら吸血鬼は❝ゲーム❞とかいう回りくどいことをやっているのかと思った。前に❝ゲーム❞は吸血鬼の長すぎる人生の退屈を解消するためのものだと言っていたのも本当なんだろう。だが、それが全て