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ハントマン・ヴァーサス・マンハント

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逆噴射小説大賞に応募にしたパルプ小説と、その続きを思いつくまま書き殴っています。ヘッダー画像もそのうち自前で何とかしたいのですが予定は未定のままであります。
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2019年1月の記事一覧

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第22わ「生存ボーナス」

(承前) 手早くシャワーを済ませて居間に向かった俺を待ち受けていたのはテーブルの上に、これでもかと並べられた料理の世界地図であった。 ロシアのピロシキ。モロッコのクスクス。 「待っていましたよ、ダンナ!さぁさぁ!冷めないうちに!」 何なんだ一体。どういう状況だ。 この料理の山は如何にして調達せしめたのか。 「この料理ですか?私のポケットマネーで買ったものですけど?さ、遠慮しないで!食べたいものを食べたいだけ食べて良いのですよ!」 部屋の照明がいつもよりも明るく感じら

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第21わ「生きて夕陽を拝めば」

(承前) 自室のベッドで泥のように眠りに就いた俺が目を覚ましたのは、夕方のことであった。学生の本分である学業のことは、努めて考えないようにした。同級生を見殺しにしておいて、俺の一番の気がかりは自分の暮らしのことなのだ。つまり、俺はそういう人間なのであった。 「ダンナ、目は覚めたか?おはようございます!」 我が相棒の弾みに弾んだ声が聞こえる。そして一気に頭が重くなったように感じられる。返事をしてやる気にもならない。昨日までとは打って変わって砕けた口調である。俺に歩み寄って

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第20わ「さよならも言えずに」

(承前) 乾ききった佐々木の死体に、腕章を付けた❝マンハント❞どもが(まさにホラー映画のゾンビそのものだ)が群がっていくのを眺めながら、俺は相棒に引きずられて今宵の戦場から退場することになった。 「今日のダンナは大金星でしたよ!ニンゲンがハントマンに一矢報いるなんて、滅多にあることではないのですから!」 心の底から嬉しそうで誇らしそうな相棒の声。映画ならば『ただの家畜が、ここまで健闘するとは思わなかった』と字幕が表示されているシーンだろう。大体、その「ダンナ」というのは

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第19わ「別離」

(承前) 言葉では止められない。止まるような吸血鬼ではない。 ではどうする?正真正銘、本当の怪物を前に俺に何が出来る? そうだ、俺には銀の弾丸がある。 そうと決まれば善は急げ。俺の銀玉鉄砲が───、これ見よがしに相棒のベルトに差し込まれている。いつの間に?考えるまでもない。 ……片腕で全身を同時にまさぐられた時だろう。 「ぷはっ。どうかしましたか?何か探し物ですか?」 そういうことになる。 俺の銃が見当たらなくて。 血を吸うのは一旦やめにして、探すのを手伝ってくれないか

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第18わ「本当の始まり」

(承前) いったい何が起きたのか。全身を拘束されて身動きがとれない。視界も塞がれた。それでいて圧迫感が感じられないのが恐ろしかった。何も見えない。空も地面も無い暗闇に放り込まれたような錯覚。聴覚だけが自由だった。 「❝ゲーム❞にはチュートリアルが必要ですよね?今から最後のレッスンが始まります」 ……必要ない。 戦闘、待機、索敵、そして戦闘。 このゲームの流れは十分に分かっている。 「それだけでは不十分です。貴方にはゲームに脱落した❝ニンゲン❞の末路について、特等席で見