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「広島の風」 #20(最終回)

● エピローグ 1  昭和三十二年、かつて「市民グランド」と呼ばれた場所からほど近く、原爆ドームの向かいに、念願のナイターつきの「広島市民球場」が完成した。  浜…

「広島の風」 #19

<力道山>  広島の歓楽街、薬研堀にある「トリスバー・チェリー」は、ここのママである折田芳子が戦後に開いた小さなバーで、彼女と石本は古い知人であった。  折田芳子…

「広島の風」 #18

<待ち人来たる>  手入れの行き届いた真新しい墓石の前に立ち、手を合わせる白石の姿があった。  志摩半島の北側、伊勢市郊外の鬱蒼とした森に、ひっそりと新しい墓が立…

「広島の風」 #17

<通暁>  千鳥ヶ淵に清廉と立ち並ぶ三分咲きの枝垂れ桜が、まるですぐそこの春を待ち遠しくするかのように、濠からの風にその花実を揺らめかせている。河口豪が運転する…

「広島の風」 #16

<烏合の衆>  かつてカレル四世は、飢える民のために城壁を建設し、その建設を担った民には見返りとして褒賞を与え、食事まで与えた。後世に「飢えの壁」と呼ばれるよう…

「広島の風」 #15

<郷里へ>  汽笛の鳴り響く早朝の広島駅に猿猴川からの乾いた風が吹き、鉄条網で囲まれた線路のまわりにまばらに生えた萌黄色の鉄道草を揺らしている。  白石が東京を発…