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投資家対談「IPOはあくまで通過点」Spiral Innovation Partnersが2度目の出資に至った理由


鎌田和博さんプロフィール
Spiral Innovation Partners株式会社 General Partner

2001年:東京大学卒業後、フューチャーアーキテクト株式会社に入社
2004年8月:ボストン・コンサルティング・グループ入社
2009年9月:ペンシルバニア大学ウォートン校にMBA留学
2011年7月:ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門に入社
2022年9月:Spiral Innovation Partners株式会社に入社。Spiral Capitalグループの一員として、大企業のCVC運営をサポート

中村仁プロフィール
株式会社400F 代表取締役社長

2005年4月:関西大学卒業後、野村證券株式会社に入社。支店営業後、野村資本市場研究所のニューヨーク拠点に赴任し、金融業界の調査を実施。帰国後は営業企画部で営業戦略の立案・国内外の金融業界の調査を行い、京都支店で上場企業向け法人営業を担当
2016年4月:株式会社お金のデザイン入社
2017年3月:同代表取締役CEO就任。同年11月、同社子会社として株式会社400Fを設立
2018年7月:株式会社400Fの代表取締役CEO就任。同年11月、「お金の健康診断(現 オカネコ)」をリリース
2020年7月:MBOにより、お金のデザイングループから独立


FinTech領域のど真ん中

中村)前回ラウンドでSpiral Innovation Partners社(以下、SIP)がGPを務めるT&D Innovation Fund(以下、T&Dファンド)からご出資頂いたのに続き、今回はゆうちょ Spiral Regional Innovation 1号投資事業有限責任組合(以下、ゆうちょファンド)よりご出資頂きました。本当にありがとうございます。

鎌田)今回はゆうちょファンドからの出資ということで前回とファンドは異なりますが、SIPとして2度目の出資になります。2度目の出資に至った理由としては、この2年間での400Fさんの実績や成果に対する評価が大きなポイントでした。想定外の事態に直面した時でもやりきる力をこの2年間ですごく感じましたし、皆さんであれば、これからも成果を出し続けられると期待しています。

中村)元々T&Dファンドからご出資頂いた2年前に遡って、当社への第一印象はいかがでしたか? 

鎌田)400Fさんはあらゆるユーザーのお金の悩みを解決していくという、難しくてみんながやろうとしないFinTech領域のど真ん中に切り込んでいます。これまでも多くのスタートアップが様々なアプローチでトライしてきましたが、貴社のように「オカネコ」というポップなイメージで潜在ユーザー層を低いCPAで惹きつけ、オンライン・アプローチで効率的にニーズを顕在化していく戦略は理にかなっていると感じました。

中村)たしかに私たちは難しい領域に挑戦しています。エンプラ事業においても現時点では金融機関がメインターゲットですが、出来上がったものを売っていくという世界ではありません。金融機関への提案は難易度が高く大変ですが、そこで生き残れば勝ち筋も見えてくると思っています。

鎌田)そうですね。エンプラに加えて、先程申し上げた通りto Cでも貴社独自のアプローチで潜在ユーザー層を取り込めていますし、提供サービスもオカネコ転職など新たな領域に広がりが期待できる点で、大きな成長ポテンシャルがあると考えています。改めて、貴社がFinTechのど真ん中で戦っているのはとてもユニークだと思います。

中村)今当社が取り組んでいるテーマは多分人気ではないし、事業領域を絞っているわけでもないので、結局ど真ん中に行って成功するしかないと思っており、なんとかやり抜きたいですね。

鎌田)貴社には、ユーザーに対してお金にまつわる悩みを解決するソリューションの提供をしっかりやり切って欲しいと思います。そして、そこから出てくるノウハウをエンプラに還元して、エンプラ経由でもより多くのユーザーに貴社のサービスを届ける世界観をぜひ実現してほしいと思います。

to C / to Bの両輪で事業展開する意味

中村)この領域の難しさゆえに中々出資に至らないケースもあるのですが、2年前のT&Dファンドに続き、今回ゆうちょファンドからもご出資頂きました。検討から投資実行に至るなかでの議論やポイントなど差し支えのない範囲で伺えると嬉しいです。 

鎌田)to Cとto Bの二本柱が力強くあることが素晴らしいと思いました。to Cで見ると、データ分析を元に些細なコミュニケーションまで細かくデータを見て定量的に科学し実績を出されています。このデータをto Bで活用するというベースがあるのが、投資家としては安心材料でしたね。

中村)論点として、to Cとto Bどちらも展開している会社はあまりなく、私たちのやろうとしていることを本質的に理解しないと、「経営資源をどちらかに張った方が良いのでは」という意見を頂くこともあります。一方で私たちからすると、この両輪があるからこそ強い。そういえばT&Dファンドから出資頂く際のマネジメントインタビューでも、「エンプラビジネスがそんなに獲得できるのか」、「コンサル的なモデルだけで本当にビジネスになるのか」というご指摘を頂きましたね。

鎌田)to Bのコンサルティングだけを見ると確かにレッドオーシャンです。貴社についてパワフルだと感じたのは、教科書的なコンサルティングではなく、金融オンライン・アドバイザー(以下、金融OA)がユーザーに営業してきた実体験に基づくコンサルティングを提供していることです。一度そのような形で食い込めれば安定的な売上推移が期待できる。投資判断においてはこれが決め手だったと思います。

 中村)そうですね。一方で私たちも今までは人力で対応してきましたが、それでは人手が足りないので今はどんどんプロダクト機能に落とし込んでいっています。実際、一気にエンプラビジネスが立ち上がり、当時のご懸念もだいぶ払拭できたのではないかと考えています。

鎌田)エンプラ事業でも中村さんは大手金融機関を相手にちゃんと実績を出されている。成長の実績をしっかり示してくれたことも今回の出資に至った大きなポイントの1つでした。特にコンサルティングやサービス提供によってエンプラクライアントの課題を解決していくという観点ではデータと睨めっこしたりなど泥臭いこともあると想像しています。FinTech領域のど真ん中を泥くさく、地に足をつけて突破しようとされている会社は稀有ですし、そこが貴社の素晴らしいところだと思います。

FinTechで地域貢献

鎌田)あと、ゆうちょファンド特有ですが「地域貢献」をテーマにしています。貴社は基本的にオンラインでサービスを提供されているので、全国津々浦々、なかなか金融サービスが行き届かない地域の方にも適したサービスだねという話になりました。実際に金融OAの方が全国で活躍されてインパクトを与えていることも評価ポイントでした。

中村)地方に行けば行くほど金融機関との接点があまりないし、「どこに相談に行ったら良いのかわからない」、「このような形で相談できるのはありがたい」という声は頂きますね。今後はオンラインとオフラインの融合という形も面白いかもしれません。

鎌田)貴社はオンラインに振り切られているからこそ、「ここはオフラインの方がいい」なども見えてくる。最適なバランス感覚をお持ちだと思います。

中村)今当社では職域の取り組みもしていますが、私たちが金融機関ではないからこそ相談に来ているという声もあります。究極的な仲介ポジションを作り、地方でお勤めの方たちにも最適な金融サービスを提供していきたいと思っています。

常に背水の陣

中村)別の観点で、当社の経営陣についてはどういう評価でしょうか?

鎌田)私たちが普段から接点を持っているのは中村さんと鵜月さんなのでお2人に絞ったコメントにはなりますが、お2人のコンビネーションが素晴らしいと思います。中村さんはよく「経営者として業績面での成長をお届けするというのが自身の責任であり、資金調達など投資家周りの交渉は鵜月に任せています」と仰っていますが、ご自身の成果に対するコミットメントや、信頼して背中を預けられるCFOがいるというチームワークが印象的です。アーリーステージの会社だと調達も含めて全部CEOがやるというパターンもありますが、貴社はIPO、さらには上場後の継続的な成長を見据えて、中村さんが鵜月さんを信頼している感じがあっていいなと思いますね。

中村)成果に対するコミットメントは私のこれまでの経験から来ている部分もあります。日本ではまだ事例も少ないですが、海外ではそういった緊張感の中でみんな全力でやっているからこそ上場後も伸びていると思っているので、緊張感はとても大切にしています。

鎌田)お2人の高いプロフェッショナル意識も素晴らしいですね。今の話でいうところの、中村さんの「僕はもう業績で示すしかないので、できなかったら去るのみです」 と背水の陣を敷いているところは、覚悟を持って日々経営に臨まれてらっしゃるんだなと、感嘆しています。

中村)私たちは取締役会も含めて緊張感を持たせたいと思っているので、そういう取締役のフォーメーションにしています。株主の皆さんにも事業提携や協業はもちろん期待していますが、他の投資先と比較したときに当社がどうなのか、良い意味で厳しく言っていただきたいなと思っています。

鎌田)そこはとても大事だと思いますし、私たちも投資家という立場で、お2人と同じぐらい高いプロ意識を持って皆さんのお役に立てればと思っています。一方で、先日貴社のファミリーイベントのBBQにお邪魔しましたが、あれはすごく楽しかったですね。中村さんは常に背水の陣で戦う怖い経営者なのかと思っていましたが、とても和気藹々とした雰囲気を感じました。私たちも貴社のチームの一体感に触れることができましたし、チームの一員としてサポートできればと改めて思いました。

中村)社員はみんな私のことを「優しい」と言うと思いますよ(笑)私たちがいつも言っているのが、 なあなあな関係になるのは良くないということ。やっぱり投資家と経営者って一緒に目指すところはあれど、プリンシパル⇔エージェントとしての関係が前提にあります。その程よい緊張感が大事ですよね。

鎌田)鵜月さんともお話ししている中で、投資してくれたところに対して企業価値を高めて最終的にリターンで返すという、リターンに対する目線やプロ意識を感じました。お2人揃って、それぞれの領域のプロフェッショナルとして信頼のおけるパートナーだと感じます。私たちからの評価というとおこがましいのですが、数ある弊社の投資先の中でも、最もマネジメントが素晴らしい会社の1社だと思います。

中村)リターンをお返しするためにも日々背水の陣で戦うことが重要だと思っています。私自身が証券会社にいたからこそ、上場オーナーを見ていてそういった雰囲気も感じていましたし、現在当社の社外取締役に就任されている多田さん(野村證券元会長)からも徹底的に教え込まれた部分です。

鎌田)中村さんは野村證券出身ですからね。リテール営業経験もあるので金融OAの現場感をお持ちのため、投資検討項目の一つであるファウンダーマーケットフィット(FMF)がとてもあると感じました。実際にご自身の経験も活かしながら、金融OAの営業プロセスを論理的に科学されているので、しっかりした経営者・ビジネスモデルだなと思っています。またFMFとは違いますが、経営者は多くの素養を求められる。特にスタートアップでは売上を作ってなんぼだと思うので、中村さんのエンプラ営業力はすごくポジティブです。

IPO時に期待する姿

 中村)最後の質問になりますが、当社がIPOをする際にはどういう姿になっていれば成功だとお考えですか。

鎌田)IPOをゴールとするのではなく、あくまで通過点というところはお2人とも重々ご承知だと思います。キャピタルマーケットからの継続的な資金調達や、上場で得られる社会的信用を活用して事業成長を加速すること、具体的には貴社のビジョンである、あらゆるお金の悩みに対するソリューションを提供するところにさらに近づいていってほしいと期待しています。

中村)仰るとおり、当社がIPOするときにはto C、to Bの両輪を通してお金の問題の解決に繋がっている状態をつくり、「この会社だったらもっと伸びるよね」という期待を維持しなければなりません。キャピタルマーケットを活用したファイナンスもしっかりできる形を目指したいと思っています。

鎌田)IPOはあくまで通過点ですからね。そのためにもエクイティ・ストーリーが重要です。既に一定のトラクションは見えてきていますが、to Cの領域的な広がりをさらにみせていけるという期待感を、一定の実績を伴って訴求できることが大切だと思います。もちろんエンプラ事業についてもまだまだ伸びしろがあると思いますし、そういった成長ストーリーをバチッと打ち出せるタイミングで上場されるのが良いと考えています。

中村)そうですね、我々も焦って進めるのがよいとは思っていません。

鎌田)私からすると、貴社が上場することはほぼ間違いないと思っています。あとは先程申し上げたように、上場後に成長を加速させていって、フォローオンでの資金調達もして、中長期的な成長を目指してほしいですし、貴社にはそのポテンシャルが十分あると思っています。

中村)ありがとうございます。しっかりやっていきたいと思います。


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