【400Fクロストーク】社外取締役就任記念対談 元メルカリのデータチームトップが400Fを選んだ理由
出会いのきっかけ
中村)樫田さんに初めてお会いしたのは2020年4月でしたね。ちょうど樫田さんが山代さんとGrowth Campを立ち上げる頃でした。当時SmartNewsの西口さん経由である方を紹介されて、その方経由でさらに山代さんを紹介されて、山代さんに僕らの構想を伝えて。
樫田)そうですね。僕らが前職(株式会社メルカリ)を卒業して、Growth Campとして活動を開始しようとした時にお話を頂きました。
中村)あまりに創業初期すぎるスタートアップはスコープではないというお話でしたが、少し関心があるということでオカネコの話を聞いていただいたのがきっかけです。
樫田)お金のデザインの社長が起業するというので、これは面白そうだなと思って少し調べたのですが、まずオフィスのGoogle Mapでの写真を見てみて。。オフィスがどう見ても汚い感じの雰囲気の所で、こいつ大丈夫か?って思いましたよ(笑)
中村)(笑) あの時、その汚いミーティングルームで初期のオカネコの構想をお話したじゃないですか。あの時ってどう思われたんですか?
樫田)あの頃は弁護士ドットコムの時価総額が伸びていたこともあり、「”そのお金版”のようなサービスだからポテンシャルはある」と聞いた時に、確かにそうだなと思いました。お金の話は万人に関係がありますし、自分としてもそこに課題があるというのは、物流業界の課題とかを説明されるよりは、当事者感があり分かりやすかった。現代においてお金の問題は誰一人として無関係ではいられないので、弁護士ドットコムよりも課題を抱えている人数は多いだろうというのもあるし。あとは金融業界って誰にでもエントリーチケットがあるドメインではない中で、中村さんは元々金融業界の経験が豊富にあって、裏も知り尽くしていると感じたので、そこが組み合わさると面白いことになるかも?という期待がありました。
スタートアップの典型的な難しさを引き受ける
中村)今回樫田さんに社外取締役就任をお願いした背景でもあるのですが、オカネコのユーザー登録数がちょうど100万人に達しそうなんですね。これまではアーリーアダプターが、何となくではあってもある程度目的意識をもって相談に来ていた。でも100万人を超えると目的意識がさらに曖昧な人たちが来るので、僕らとしてはその地域に住んでいる人の悩み方などにフィットするプロダクトを提供する必要がある。
たとえば港区の方が持つ教育の悩みは留学やインターナショナルスクールだけど、別の地域ではあまり同じ悩みを持っていなかったりする。同一カテゴリーであっても同じ内容の提案をしてもユーザーの便益には刺さらないです。なのでユーザーニーズはなるべく詳細に分岐させていこうみたいな構想を立てていて、そうなってくるともう一度プロダクトのあり方を考えないといけないし、データをどのように使ってユーザー体験を作り出すのかがメインになってくるだろうなと。
樫田さんに最初に手伝って頂いてから約4年経ち、僕らがまた大きな転換点に差し掛かってきたところで、会社として再度プロダクトについて深堀りした議論をできる体制が欲しいと思いお声掛けしました。
樫田)ありがとうございます。
中村)ちなみに樫田さんは社外取締役ってほぼ受けていないと思うのですが、今回特に迷いなく受諾頂けたのはなぜですか?
樫田)こう見えて、僕は中村さんも400Fの事業も愛しているから、ですかね(笑)なので経営者である中村さんを一番近くでサポート出来るということがあります。
さらに社外取締役ということで立場的に本質的で非連続的な意思決定に関わるような意見も言いやすい。いまの400Fの事業においては、経営の意思決定の価値がとても高くなっているのではないかと思っています。
400Fは現在のスタートアップ界隈の中で典型的な難しさを引き受けている会社です。当初はTo C課題が大きいと思っていたけれど、そこを煎じ詰めて考えると既存のビッグプレイヤーが抱えている問題を同時に解決しないといけない、つまりTo Bの課題解決にたどり着きます。これまでのスタートアップは自分たちが頑張って直接的に顧客課題を解決すれば世の中がいい感じにまわっていくという世界観だったけれども、ここ数年、スタートアップは既に業界に陣取っているビッグプレイヤーとうまく共存したり、部分的にはディスラプトしていかないと業界自体が変わらないというターニングポイントを迎えている。
そこに適合できる経営者とそうじゃない経営者は分かれるし、「壊すだけじゃない、でも仲良くするだけでもない。」というバランス感覚を持ち、既存のビッグプレイヤーを少しずつアップデートしていくことができるかが問われている今のスタートアップは、理念と現実を両立してバランスよく経営をしていく必要があると思っています。400Fは創業当時の成り立ちや初期のメンバー構成から理念が強いカルチャーを有していて、それは良いことなのだけれど、今後それをどうより大人な会社へと変えていくか、現実と両立させていくかが課題だと思っています。
中村さんはその辺りのバランス感覚も抜群だけれども、やはりそこを間違えると相当しんどい。400Fは今C向けとB向けのビジネスを両方抱えていて、とても変数が多いビジネスになってきている。その中で何に注力して、逆に何をしないのかというレベルで意思決定を間違えると、それ以下のところでいかに努力しても全てが水泡に帰す可能性があります。その難しい舵取りを中村さんが一人でするよりも、多角的な意見を取り入れた上で最終的な意思決定をしてもらうことに意味があると思いました。今後僕じゃない人からも色々な意見が聞けると思いますが、今この瞬間は僕から言いたいことを言おうと思っています。
ダークホースであり、本命
中村)400Fに期待することは何ですか?
樫田)それはもう、株主のひとりとして企業価値をどんどん上げてほしいな、と(笑)
僕は勝手に400Fって、スタートアップ業界の本命でありダークホースのようなポジションだと思っています。中村さんはスタートアップ界隈の付き合いが多くなく、スタートアップの世界でフロントランナーとして分かりやすく目立つことを避けてますよね。 ただ、先程の話に出てきた通り、To Cビジネスにおける理念と、To Bビジネスのための現実的なものの見方、業界のドメイン知識。この両方を持って金融という大きな業界を変えようとしているわけで、これは今の時代のスタートアップの「本命」とも呼ぶべき立ち位置だという気がします。一気に浮上して「ダークホースであり、本命」のような立ち位置で勝つというのは最高に格好いいじゃないですか。
中村)結果で示したいですよね。
樫田)それに尽きるかなと思っています。変な風に「スタートアップ」に染まってほしくないですね。
事業構造がカルチャーを規定する
中村)せっかくなので前職との比較という意味で、メルカリが成功した要因と、400Fと比較したときに当社の強みや足りていないところは何だと思いますか?
樫田)僕は市場と事業構造がほぼ全てだと考える原理主義者なんですよね。例えばカルチャーみたいなソフトなものベースとしても、要はお金を儲けられることと、良い事業モデルであることが重要だと考えています。
メルカリのカルチャーは確かによかったですが、事業モデルが違っていたら実はあのカルチャーは実現できなかったんじゃないかなとも思います。 CtoCビジネスは基本的には全社員が顧客のためになることをしていれば良い、というシンプルなモデル。ユーザーに対して善を為してユーザー獲得していけば売上が同じように伸びていく。組織全体を単一のシンプルな共同幻想でマネジメントできるため、「顧客のUXを追求したい vs 広告の売上を増やしたい」といった組織内の対立が原理的に起こりづらい。 仮にメルカリがユーザーにサービス提供を行い、広告でマネタイズするような事業モデルだったとしたら、ああいうカルチャーになっていたかは疑問です。
このように、実は事業モデルがカルチャーや人を規定していくんですね。その意味で400Fが事業モデルとして良いものを作れるかはとても重要だと思います。400Fの事業モデルって、To CビジネスとTo Bビジネスが両立しているがゆえに変数が多く複雑ですよね。事業チャレンジとして面白いと思う一方、カルチャー含めて舵取りが難しいなと思う所以です。
中村)事業に合わせてカルチャーも変えないといけないですよね。
樫田)そうですね。すごく面白いなと思ったのが、メルカリとメルペイってカルチャーが全然違ったんですね。メルペイでは加盟店舗に対する営業がファクターとして重要になる事業モデルで、CtoCのメルカリとは根本的に違う。そのため、同じグループ内でも大幅に異なる組織カルチャーでした。
ただのデータには意味がない?
中村)当社は家計やチャットに関するデータを保有して、面談も全て文字起こししています。さらに成約データも持っている。こうした個人の家計関連の構造・非構造データを持つ中でデータを集計・解析してアウトプットを出すという取り組みについて、専門家としてどうご覧になりますか?
樫田)意向データと実際の行動データには天と地ほど価値の違いがあるため、単純なやり方では難しいと思います。人は「これがしたい」とか「これに興味がある」って、平気で嘘をついたり見栄を張ったりしますからね。一方で、身銭を切って行動したという事実には基本的に嘘がないため、成約データには価値があります。でも成約データのサンプル数って少ないじゃないですか。金融やライフイベント系の行動だと、基本的に1人1回とは言わないまでも、せいぜい数回とかだし、全員がコンバージョンするわけでもない。価値が高いデータが大量に生成されるわけではないという点では400Fの事業領域構造は不動産業に近いのかなと感じています。不動産って、たくさんのメタ情報(立地、日当たり、階数、その土地柄、新築・中古、共用施設など)があり、それをベースに価格がどう決まるを当てるゲームで、予測すべき対象も価格に収斂していくと思うんですけど、成約情報自体は少ないじゃないですか。内見人数などは逆に実はさほど価値がない情報だと思うんですよね。
そして400Fも年収や世帯構成など、メタ情報はとても多く保有しています。こうしたメタ情報を人対人のコミュニケーションにおいてどう補助的に活用するかが重要ですが、そのためにはデータ内容や背景について詳細な理解が必要です。
中村)当社では、ユーザーの住んでいる地域、収入や家賃、保険料、結婚しているのか、お子様がいるのかなどの家計データを持っているので、ユーザーの生活状況を把握するのに役立つと考えています。
樫田)人生におけるステータスのようなものと、その方が欲しがるものは何かの相関分析は役に立つと思います。人生においてその方のライフスタイルが変わる条件を考えると、子供や結婚、仕事の有無とか、持ち家かどうかなど色々とありますが、子供がいるかどうかというドラスティックな変化が恐らく一番影響が大きいじゃないですか。
その順位が分かれば、じゃあそれをどう推定するかという話になってくると思うんですね。
なので、何がその方のライフステージにおける重要なゲームチェンジャーなのかっていうことの影響度合いを、オカネコで詳細に把握できたら面白いですね。そうすると単純に既婚・未婚という情報よりも、子供がいるかという情報に10倍お金を払うみたいな話ができます。
これからのデータ・プロダクト人材に求められること
中村)最後に、これから当社に入社を考えている方、もしくは既に当社で頑張ってくれているメンバーへのメッセージを頂けませんか?
樫田)この領域って人の心理がすごく関わってくる部分で、
人を排したプロダクトで効率的に機械で解けるもの
単純に効率化したプロダクトでは解けないが、アルゴリズムやデータを絡ませることで、なるべく1 to 1に近い形で人間味を持たせたプロダクトだったら解けるもの
それですら解けない、人対人だから解けるもの
に分かれてくると思っています。それを峻別するのはこれからの時代に求められるスキルだし、PMやデータ人材にとって重要な能力だと思います。
これからデータやプロダクトが進化する中で、逆に人対人じゃないとできないことが際立つ時代が来るし、逆にプロダクトだけで解けることもどんどん先鋭化していく。その中でどうプロダクトを作っていくかという話になると、どう先鋭化をやり遂げるかと、人対人で解決すべき問題についてはどう人を補助するためのプロダクトを作るかに分かれてくる。
後者については営業自体を効率化、機械化するのではなく、営業員が効率的に動けるための補助ツール、たとえばプレゼンや議事録を勝手に作ったりと、人の機能を拡張していくことが重要になります。これを見極める力や、どちらも両立して作れる力が必要になってきますし、400FのPMやエンジニアはそういう方向に進化していくと思います。
AI全盛期と呼ばれる個の時代を迎える前段階で、そうした経験を積む場所として400Fは最適なのではないでしょうか。
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