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方程式6 「チューニングの切り札」

新卒採用の仕事は学生の能力や思考を見極めること。そして必要な人材だと判断したらリクルートの魅力を理解してもらい、口説き落とすこと。

もともと話すのは得意な方だが、聞くことは「営業マンビデオ」を見て修行中。まだ完璧とは言えない。
それに、やはり相性がある。初対面で気が合いそうだと肌で感じ、すんなり会話に入っていける学生と、何から話せば良いのか切り口がわからない学生もいる。

なんとなく苦手なタイプ、話が弾まないタイプの学生を面談する時は、定型の質問はするものの、無言の間ができて気まずい空気が流れることもある。共通の趣味があったり、僕がある程度詳しいジャンルなら良いのだが、全く知識のないジャンルだとちんぷんかんぷん状態だ。

先輩たちを見ていると、どんな学生とでも話が弾む。
学生生活の話でも、映画や絵画やワインの話でも、政治経済の話でも。

どんな分野の話に展開しようと意見を交えて話に花が咲く。
その幅広い知識に驚くとともに、それに追いつくには莫大な時間がかかりそうで気が滅入ってしまう。

「先輩。いったいどうやってそんなに知識を身につけたのですか?    もともと多趣味なのですか?それとも読書とかを死ぬほどして努力しているのですか?」

「もちろん何にでも興味を持って努力はしているよ。それより1番のポイントは学生に教えてもらうこと。誰でも部活動やサークルなど、何か趣味を持っているよな。その分野に関してはかなり詳しいから、それを教えてもらえばいい。ヨットをやっている学生からはヨットの話を、ワンゲルの学生からは山の話を、軽音楽部の学生からは音楽の話を教えてもらえばいいと思うよ。
そうして1日4人の学生と面談したら、4つの分野の知識が手に入ることになる。みんなミニ専門家だし、その場ですぐに質問もできる。       演劇好きのAという学生から話を聞いた後に、違う演劇好きのBという学生と会ったら、Aくんから聞いた演劇の話をBくんにぶつけてみて意見交換すると、知識に幅や深さが出てくるのよ」 

確かにそうだ。それを続けていって年間1000人の面接をこなすと、1000の分野の知識が手に入ることになる。でも、そんなに簡単にできることなのだろうか?

少し怪訝な顔をしている僕に向かって先輩はなおも続けた。

「大切なのは相手の言語で話すこと。
外国人と話す時は相手の言語で話すのと同様に、日本人でも相手がわかりやすい言語で話さないと理解は進まないし、腑に落ちた話にならない。
 
相手の趣味をベースに話をするのは、相手の得意な言語にチューニングするということ。趣味に例えて話をすると、お互いにうなづく回数も増えるし、相手も楽しそうに話してくれる。価値観や思考が好きな分野への取り組み方に必ず表れているしね。」

なるほど。学生に対して、会社の将来性や組織の話など未経験な話を聞いても、想像でしか答えられない。就職活動用に、にわか勉強してきた考えを披露されるだけでは意味がない。

今打ち込んでいる趣味なら、自分の考えが明確に反映されているし、その結果どうなったかという事実も明らかだ。

「先輩。よくわかりました。今度からやってみます。
あと、もうひとつ教えてください。昔やっていたけど今は趣味がないとか、『打ち込むことを探し中』みたいな学生の場合は、どうしたら良いのですか?」

「あー。たまにいるな、そういう学生。本当に困った時の最後の手段は恋愛話かな。恋愛だけは人類共通。大抵の学生は興味があるから、困ったら恋愛話に持ち込めばいい。で、お互いの恋愛秘話を共有できたらシメタもの。友達になったも同然だ。
でも、学生にいきなり彼女のことを聞いても教えてくれるわけがないから、こちらの恋愛事情を先に話して腹を割らないと相手も話してくれない。まずは身を切っておもしろい恋愛話をする。
もちろん、女子大生にそんなことを聞いたらセクハラになるからアウトだけどね。」


会話のチューニングの切り札は恋愛。
人に話せる恋愛ネタを作るのも、そんなに簡単ではないけど(笑)。

一度、身を切って話してみようかな。

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かしのたかひと

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リクルート、福岡ドーム、メディアファクトリーを経て、映画プロデューサー、ベンチャー経営者、政治家、作家に。