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方程式9 感情と行動のコントロール〜 ずっこいゴッド登場〜


 1986年夏、新卒採用も大詰め。
僕が担当している神戸大学の学生が伊藤忠商事かリクルートで迷っている。

前回会った時は、「樫野さんがいるリクルートにお世話になります!」と言っていたのに、今日は一転して五分五分の状態。
あの言葉はそんなに軽かったの?
ちょっとした混乱と怒りの気持ちを胸に冨永課長のもとへ相談に行き、
早口で一気に説明した。
 
「冨永さん、聞いてください。
あいつ、この前、まっすぐに僕を見て、『リクルートにお世話になります』って言ったんですよ。なのに、舌の根も乾かないうちに、伊藤忠だなんて。もちろん伊藤忠は良い会社だと思いますけど、その変心は人としてどうかと思いませんか?
ほんまガッカリですよ。でも、彼はええ奴やからどうしても採用したいし・・・。でも、迷ってるって言うし・・・。どう思います??」

 富永さんは最後まで僕の話をウンウンとうなづきながら聞いてくれ、一通り僕がまくし立てた後、ゆっくりと、僕をなだめるように、こう言った。

 「樫野、それは大変やなぁ。
で、その樫野の大変な気持ちを『かわいそうやなぁ、えらいことが起こったなぁ。困ったなぁ』って僕は聞いてあげたらいいの? 
それとも樫野には手に負えないから、翻意させるために僕が代わりに彼と話に行ったらいいの? それとも対応策のアドバイスが欲しいの?
樫野の相談はどれ?」

 冷水を浴びせられた気持ちになった。
 頭に血が上り、感情的になった僕は、気持ちのコントロールと具体的な対応策をごっちゃにして課長に相談。
それは相談というにはあまりに稚拙。
なんてカッコ悪い。

 「冨永さん、すいません。興奮して、ワケわからない話をしてしまいました。えーっと、冷静に考えると・・・。
彼を取り戻すためのヒントをください。
あとは自分が直接彼と話して、なんとか頑張ります」

 冨永さんに一礼して、僕は彼が待つ応接室に向かっていった。
 いつもながら冷静な判断と指摘。
 慌てふためいている部下を怒ることもなく、
 上手い言い回しで、本人に気づかせるその話術。
 さすが、「ずっこいゴッド」と言われるだけのお方、
いつも勉強になります。


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かしのたかひと

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リクルート、福岡ドーム、メディアファクトリーを経て、映画プロデューサー、ベンチャー経営者、政治家、作家に。