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方程式➓イメージする力 〜高宮浩之さんの巻・前編〜


高学歴、高身長、高収入。
昭和男子のモテる男の条件「3高」をすべて兼ね備えたような先輩が
1学年先輩の高宮浩之さん(現・城崎温泉観光協会会長)った。

昭和60年代、サラリーマンは「ねずみ色の背広」が主流。
そんな中、高宮さんはデザイナーズブランドのスーツを着こなし、
冬のコートは氷室京介が着るようなロングコート。

まるでメンズノンノから飛び出してきたモデルのようで、
唯一、隙を見せるのは、
クシャクシャな笑顔で、「ウヒャヒャ」と笑うところくらい。

「こんなサラリーマンもありなのか!」
と僕の固定観念を覆してくれた。

その高宮さんとプロジェクトを一緒にやらせてもらったのが       入社1年目の秋。
僕は、大学生インターンシップ企画の責任者を任せてもらった。

入社後半年は、業務を卒なくこなし、自信満々で仕事をしていたので、  そろそろ責任の重い仕事をしたいと思っていたし、           先輩よりも上手くやる自信も芽生えていた。
「自分ならバシっとやれるはず」と、鼻はシュルシュル伸びていたのだ。

過去事例や他社事例を調べ、リクルートならではのオリジナリティを加え、
企画は順調に進んでいった。

取締役への起案も一発でOK、まずます自分のスキルに自信を深める。

募集告知がスタートし、満員御礼となる予約数。
そして、いよいよ明日本番を迎えることになった。

しかし、準備万端のはずなのに、なぜか胸騒ぎがする。
本当に大丈夫か?
抜けはないか?
「もしも?」が起こったらどうすればよいのか?
一気に不安が押し寄せてきて、眠れなくなる。

「僕ならできる」と自信満々だったのに、今はビビりまくった新人そのもの。

絶対それだけはやらないと決めていたけど、いても立ってもいられず、
高宮さんに夜遅く電話をかけてしまった。

「夜分すいません。明日のことが心配で眠れません。
でも、どうしたらよいかわからなくて、思わず電話しちゃいました。
こういう時、高宮さんはどう対応していたのですか?」

「まぁ、そういうことはあるよ。落ち着けといっても無理だから、    明日のイメージを一緒にやってみよか。

まず、受付開始の9時30分になりました。
そこにいるのは誰? 何人? 準備物は何?

しばらくすると学生がきました。受付で名前を書いています。
ペンを忘れたヤツがおるみたいよ。印鑑忘れもいる。

一気に学生が増えて、列が長くなっているけど、どうする? 
待たせる? 早く来た学生は中に入って30分間じっと待っているの?
なんかその時間もったいなくない?・・・・」

高宮さんとの頭の中の予行演習は延々続いた。
あらゆるケースを想定して、高宮さんが質問し、自分では考えていなかったケースが発覚する。

その場面をイメージする力と、解決策のオプションの多さに驚かされながら、電話は2時間に及んだ。

いつのまにか僕の不安は少しずつ溶けていき、
運営シナリオの末端は枝分かれして、あみだくじのような姿になっている。

これがシミュレーションなんだ。

あらゆる場面を想定し、どういうことが起きようとも
一度頭の中で対応しているので、
パニックにならずに、落ち着いて対処できるような気がする。

弱音を吐き、不安を吐露することを恥ずかしく思っていたが、
そんな小さなプライドで明日のイベントが失敗したら目も当てられない。

「ありがとうございました。明日、大丈夫な気がしてきました」

高宮さんにお礼を言い、電話を切る。

落ち着きを取り戻して、ベッドに横になって思った。
「まだまだダサいな、俺。もっと謙虚に頑張らないと」

高くなっていた鼻は、すっかり元に戻っていた。


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かしのたかひと

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リクルート、福岡ドーム、メディアファクトリーを経て、映画プロデューサー、ベンチャー経営者、政治家、作家に。