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方程式14 コンセプトワーク 「里山十帖」岩佐十良さんの巻

人事異動したキャンパスマガジン『Kiッカケ』は、ひとつ後輩の秋山進くんが編集長として創刊した雑誌。
 

企業の新卒募集広告を掲載したリクルートブックを届ける相手は大学生だが、就職活動時期にいきなり電話帳のようなリクルートブックが段ボールで送りつけて、「なんじゃこれ?」と怪しまれることが当時は多々あった。

そうならないように、リクルートという媒体発行者の信用と親しみを醸成するための早期コミュニケーション雑誌が『Kiッカケ』の役割。

主に大学1年生2年生を読者とし、媒体コンセプトは「成長や気づきの節目となるキッカケ情報を提供する」というもの。
 
例えば、舛添要一さんや田原総一郎さん、波頭亮さんなど著名な方が、世に出るキッカケ、大きくジャンプアップした節目などのインタビュー記事を組み、直接意見交換する場を設けたり、企業の新商品企画のアイデア募集をしたり、ブラジルの熱帯雨林破壊の視察ツアーを組んだりと当時の大学では教えてくれないような編集企画とイベントが連動した雑誌だった。

この時、一緒に汗を流してくれたのが、岩佐十良くんを中心とした武蔵野美術大の大学生が設立した編集プロダクション。

岩佐くんは、のちに雑誌「自遊人」や高級旅館「里山十帖」を後に手がけて一躍有名になった経営者だ。

編集会議に出されてくる企画はトンガったものばかりで、社会人5年目となり「常識」で固まりつつあった僕の頭を毎回シャッフルしてくれた。

それまで雑誌の「コンセプト」というと、「旅行」とか「クルマ」などジャンルで括ることしか知らなかった僕にとって、「成長のキッカケ」という「状態」や「節目」でコンセプトをまとめることは斬新で、あらためて「コンセプトワーク」について考え直す僕自身の「きっかけ」にもなった。

コンセプトワークについての本を貪るように読み、様々な試行錯誤の中で僕が感じたのは、コンセプトには2つの種類があるということ。
 
ひとつは、今ある情報に横串を刺し、大きな方向について情報集約するコンセプト。

もうひとつは、未来のあるべき姿を提示し、その方向へみんなを引っ張っていくコンセプト。

僕の好きな言葉に

「旗を揚げる人の前は真っ暗。その中を歩いていく。旗に集まってくれた人にとっては、旗を立てた人の背中だけが希望の光なんだ」というのがある。

まさしく後者はそういうこと。

岩佐くんたちから、何者にも囚われない、自由で理想だけを見つめる強さや、旗の上げ方、光の放ち方を編集会議の度に僕はエキスをもらい続けた。

僕の経営者としての強みは、ビジョンを構想する力やコンセプトを作る力と言われることがあるが、そのスキルを身につけるキッカケはまさしくこの時の編集会議だったと思う。


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