【デンマークのリアルを解き明かす⁉️現場訪問レポート②】Det særlige dagtilbud Krudtmøllen

こんにちは、CANVASHIPのAyaneです。
3月末に催行予定の【『福祉』を学ぶ in Denmark 】ですが、ありがたいことに続々とお問い合わせが増えています!!
まだ残席に余裕はありますが、気になる方はお早めにお問い合わせいただくことをおすすめします。

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デンマークの現場レポート第二弾となる今回は、 Det særlige dagtilbud Krudtmøllen という保育所をご紹介します。

…まず名前がややこしいですね。笑
デンマーク語特有のアルファベットが入るのでなんのこっちゃという感じですが、

særlige→特別な
dagtilbud→デイケア(保育所)

なので特別な支援を必要とする子どもを受け入れている、Krudtmøllen障害児保育所という意味です。私は元々保育士だったのですが、いわゆる健常の子どもたちに関わるときにも活かせそうな工夫が盛りだくさんでした!
福祉と保育、両方の面から学べる施設でした。

さっそく見ていきましょう(^^)

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1.保育所の概要

ここは主に自閉症、ADHDなどの精神的な発達障害をもつ子どもを受け入れています。身体障害がある場合も入所できるようですが、設備の関係で自分の力で歩行できることが条件となっています。(歩行ができないなど身体面で援助が必要な子どもたちは、同じくコペンハーゲン市内にいくつかある他の障害児保育所に入所します。)

2クラスで各クラス8名、合計16名の小さな保育所です。8名のペタゴー(保育士)、2名のアシスタント、理学療法士、作業療法士、清掃やキッチンスタッフ、そして施設長が働いています。
職員の人数や職種を見ても手厚いサポート具合が分かりますね。

2.保育室や園内の環境

発達障害や自閉症がある子どもたちは、見えるものに惑わされてやるべきことが分からなくなったり、遊びが続かなかったりします。そのため、この園ではあらゆるところがパーテーションで区切られて適度な目隠しとなっています。

例えばこちらは子どもたちのロッカー。

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 着替えるときに周りが気になる子は、パーテーションで隣の子と仕切られています。実はこの仕切り、防音素材でもあるそうで音に敏感な子にも効果があります。

こちらの部屋は、保育室とは別にある小部屋です。

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外からの刺激が少ない窓の小さな部屋をうまく使うことで、子どもが気持ちを切り替えて次の活動に向かいやすくなるようにしています。
案内してくれたSophiさんによると、一人になりたくて毎日給食をここで食べる子どももいるのだとか。みんなと一緒に食べた方が…と否定するのではなく、その子どもの思いに応えられる環境も、先生方の対応も柔軟で素敵です。

特徴的なのがこの「Senserum(感覚の部屋)」。

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ここには光や音がでるものや様々な素材のおもちゃ(ふわふわしたぬいぐるみなど)が置かれていて、通常の保育室から離れて感覚を刺激する経験ができるようになっています。発達障害をもつ子どもたちは様々な刺激に敏感なことが多く(より強い刺激を求めたり、反対にものすごく過敏だったり)、その気持ちを満たせる環境になっています。私が見学したときにも、迎えに来たお母さんと一緒に部屋でほっこりしている子どもがいました。

3.徹底された視覚支援

発達障害によって言葉の発語が遅かったり先の見通しが持ちにくい子どもが多いため、保育室、トイレ、個人のロッカーなど子どもが使う全ての場所に数々の絵カードが掲示されていました。

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これは1日の流れを絵カードで並べたものです。
上から(保護者と)バイバイ、手を洗う、朝の会、遊ぶ…と並んでいます。
マジックテープで取り外しができるので、今やることの横に赤い矢印がついていて、終わったものから隣にあるボックスに入れていく仕組みです。一人ずつ発達や理解の度合いに差があるので、それぞれ貼られている絵カードの枚数が違います。一人ひとりの子どもの発達状況に合わせてその種類や使い方を変えているところから、細やかな支援がされていることが感じられます。

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こちらは「ヘルプマーク」。大人に手伝ってほしいときにこのカードで意思表示をします。障害によって発語が遅かったり、語彙が少ない子どもも多くいるので、このようなカードが役立ちます。

また、分かりやすくするだけではなく保育士も子どもが示した絵カードに合わせて言葉で返すことで発語を促していました。
その例がこちら。

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これは給食時に使う絵カードをまとめた小さなバインダーで、PECSmappe(Picture Exchange Communication System)というシステムです。中にたくさんの食材の絵カードが入っています。先ほどのヘルプマークや、「færdig(おしまい=ごちそうさま)」というマークもありますね。
子どもたちは食べたいものを緑色の部分に貼り付けて文章にし、保育士に渡します。

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こんな風に取り外せます。
「私はパンとバターとチーズがほしい」とあります。保育士はこれを受けて給食を配るのですが、その時にかならず言葉にして返すそうです。これによって絵やもらった実物の食べ物と言葉を結びつける機会を作っています。また、ここでポイントとなるのは先回りして言わないこと。子どもが示したカードだけをゆっくりと言葉にしていくそうです。

おもちゃや遊びに対してもバッチリ視覚支援されています。

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どこに何が入っているが分かるようにカゴにおもちゃの写真がはられています。これは、私も保育所で働いていたときにやっていました。
でもここまでやるのはすごい!と感じたのがこれ↓です。

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別の部屋にあるおもちゃも全て写真にしてありました。ひとつの保育室に全てのおもちゃを置くことはできませんが、これで子どもたちの「あれで遊びたい!」という思いにかなり応えることができるのではないでしょうか。

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ちなみに、一人でパズルなどで遊びたい子には壁に向いた机と椅子が用意されています。左の棚からおもちゃを出し、遊び終わったら右の棚に片付けます。

めっちゃ細かく決まってるやん…と感じた人もいるのでは?
一見いろいろなルールが決まっていて覚えるのが大変そう、厳しそうにも見えますが、発達障害をもっていたり理解がゆっくりな子どもたちには、ある程度「このときはこうする」ときっちり決まっているほうが分かりやすいのです。その時によって、人によってやり方が変わってしまう「臨機応変」が彼らには一番難しく、混乱してしまいます。Sophiさんも「ここは普通の保育所に比べたらキチキチしてるよ」と言っていましたが、子どもが過ごしやすいようにするためなのです。

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そして椅子にも絵カードが(子どもの顔写真が貼ってあるので隠しています)。ちなみに椅子は座ることに意識が向くようにクッションが置かれている子もいました。クッションの厚みや素材も一人ずつ違うそうです。

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時間も目に見えるよう、いろんなタイマーや砂時計が使われていました。外遊びのときに園庭に持って出ることもあるのだそう。

もちろんトイレにも。

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手洗いの順序や、

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トイレのしかたが丁寧に描かれています(これはトイレットペーパーのケースです)。

とても細かく書かれていますね。逆に言うと、このような援助があれば、少し発達がゆっくりな子どもたちも一人でトイレにいくことができるのです。全てを「やってあげる」ことだけが最良ではなく、「自分でできた」と達成感、満足感を感じて自分に自信をもつ、さらに別のこともやってみようと思える関わり方や環境づくりが大切だなあと感じました。これはどんな子どもでも、そしてもしかしたら高齢者に関わる場合も同じかもしれませんね。


4.個人の発達課題に取り組むための『一対一の時間』

この園の取り組みの大きな特徴の一つとして、『一対一の時間』というのがあります。これはその名のとおり、子どもと保育士が一対一で約30分ほど、それぞれの発達課題に合わせた活動をすることです。

言葉を話すのが苦手だったり、読むことに課題がある子がいたり、集団で過ごすことが難しかったり。年齢や発達段階、その子の特性によって課題はさまざまです。保育所では一人ずつHandelplaneという個人カリキュラムを組むのですが、それに合わせて保護者とも話をしながら子どもの目標を設定し、それを達成するために保護者がするべきこと、子どもがするべきことを書き出していきます(ここに保護者が絡んでくるところが日本と違って面白いですね!)。それに沿って一人ずつプログラムを組んで取り組むのだそうです。

そして誰かが一対一をしている間は、他の子どもたちは残りの保育士で見ているため、チームとしての連携も大切になってきます。

もちろん普段の遊びから多くの子どもが課題としていることにつながる遊びを取り入れているそうです。感触遊びや吹いたり吸ったりする遊びがそうです。吹いたり吸ったりする遊びはストローで自然と口周りの筋肉を使うので、言葉をはっきりと発音することに繋がります。感触遊びは泡、粘土、片栗粉など、変わったテクスチャーを楽しむことももちろんですが、いろいろなものを味わう味覚の遊びもあるそうです。レモン、玉ねぎ、ケチャップ、チョコレートなどなど…。食べ物にこだわりがあったり、偏食がきつい子も多いため、遊びの中でいろいろな味に触れることも非常に大切です。

5.番外編

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こちら、職員室にあったマッサージチェアです…!!
休憩時間に使えるの、すごくいいですね!!!

マッサージチェアがあることは珍しいと思いますが、保育所だけでなくどの施設でも、職員が満たされていないと利用者(子ども、高齢者など)に良い関わりやパフォーマンスができないという考え方がデンマーク全体に浸透しているため、特に施設長は職員が心身ともに満足して働けているかということを常に気にかけているように感じます。

これも、デンマークの幸福度が高い秘密の一つかも。


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