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TikTokがInstagramを超える理由|SnapchatのCEOが語るSNSの未来とは

こんにちは。AR技術に特化したスタートアップOnePlanetをやっています村上と申します。弊社はAR技術を活用した様々なソリューションを提供しており、日々世界中のAR事例を研究しています。

この記事では、2020年1月にミュンヘンで開催されたデジタルライフデザインカンファレンス(DLD)にて、SnapのCEOスピーゲル氏はTiktokがInstagramを超える可能性について言及した件を掘り下げていきます。

Snapchatは米国ではZ世代から大きな人気を集めるSNSで、直近ではZoomなどオンライン会議で使える同社のSnapCameraも人気です。SNSビジネスの世界的リーダーが「TiktokはInstagramを超える可能性がある」と言及したために、世界では本件はニュースとして取り上げられています。

しかし日本国内でSnapchatはユーザーが少なく、そのためか、この件について日本語で取り上げている情報があまり見当たりませんでした。(私のリサーチ不足かもしれませんが)

この記事では、SNSビジネスの未来に関心がある方を広く想定読者として、SnapのCEOが語る「TiktokがInstagramを超える可能性」について解説していきたいと思います。

SNSビジネスのピラミッド:最も広い基盤部分

日本でも有名なInstagramのストーリー(24時間で投稿が消える機能)は、もともとはSnapのアイデアです。Snapはそのストーリー機能を模倣されて大きく株価を落とした過去があります。(直近でもARソフトウェアやアバター機能などFacebookはSnapのコピー戦略を徹底しています。)

そんなSnapchatのCEOスピーゲル氏に対して、質疑応答の場でカンファレンスの参加者から

「ストーリー機能はSNSのベースとなる機能だと考えているが、Tiktokではストーリー機能をベースとせずにダンスのセッションや演技のようなコンテンツが多い。それについて、SnapのCEOとしてどう思うか?」

という内容の質問が出ました。そこからのスピーゲル氏の回答を以下に意訳込みで記載していきます。

Spiegel:
「インターネットやコミュニケーションに関するテクノロジーについて、ピラミッドを想像してみてほしい。もっとも広い基盤となる部分は自己表現コミュニケーションだ(Self Expression and Communication)

Snapchatはその基盤部分に該当するSNSなので「誰しもが、ただ感じたことを友人との会話で正しく気持ちよく表現する」と言う役割を担っている」

上記にある「友人との会話でピュアに自分の感情を表現する」という役割は、確かに人間のベースとなる大切な感情に紐づいているなと感じます。

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SNSビジネスのピラミッド:中層部分

そこからスピーゲル氏は、「ベースとなる自己表現の上位にくるレイヤーに"ステイタス"があります」とし、以下のように続けます。

Spiegel:
「もともとのソーシャルメディアは、ステータスに関するものでした。あなたが誰であるかを表し、あなたがクールであることを人々に示し、高評価やコメントを得るようなことがSNSを構成していました。」

「ステイタスを誇示するニュアンスを含む"インスタ映え"のようなものは、先述の基盤となるピュアなコミュニケーションに比べるとアクセス可能な人数を狭め、より限定的なコミュニケーションになります。」

「なぜかと言えば、クールな出来事は日常のくだらないことに比べて発生頻度が低いので、ステイタスに紐付けた投稿はどうしても週に1度/月に1度という低い頻度になってしまうからです。」

と整理しています。(分かり易いように、かなり意訳を含ませてます。)

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確かにFacebookをはじめとするSNSはステイタスを誇示するための場として活用され始めました。その結果、「ドヤ疲れ」をし始めた人がFacebookから離れていく傾向が見てとれます。

そしてステイタスの誇示に疲弊した人たちは、より心理的安全性が高い場所としてInstagramにて鍵をかけたアカウントを自己表現の場に移行している流れがあります。

それでもやはり「インスタ映え」の言葉の通りInstagaramは「ステイタス」を起点にしたSNSなので、その結果「ドヤれるコンテンツ」は日常の出来事に比べるとどうしても発生数が少なくなり、結果としてSnapよりアクセス性は下がるよね、とスピーゲル氏は話を展開させていきます。


SNSビジネスのピラミッド:上層部分

スピーゲル氏は、そこからSNSビジネスの最上層部へと言及していきます。

「私がTiktokで表現されていると思う部分は、ピラミッドの最上位に該当します。それは"本物のタレント"です。」

「人々は新しいダンスを覚えるために数時間を費やしていますし、新しいクリエイティブな方法を思いつくために時間を使って考えたり、彼らは本当に人々を楽しませるためにメディアを作っている。」

「コンテンツを作る人に"努力/タレント"が必要となるため、コンテンツの参加者は中層よりもさらに数が小さくなっている。」

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そして、"タレントベースのコンテンツ"は、多くの場合"ステイタスをベースにしたコンテンツ"よりも純粋に面白いです。

その意味で、TkitokはInstagramよりも大きくなる可能性があると感じています。

スピーゲル氏は、TikTokユーザーは社会的地位やステイタスではなく努力や才能を通じて得られた「本物のコンテンツ」を提示しており、そこにTiktokの本質がある、というSNSビジネスの構造を明らかにしました。


まとめ

スピーゲル氏がこのスピーチで言及した新しいSNSビジネスのピラミッド構造は、本質的でありながらも、SNSビジネスに従事する多くの人の頭にはなかった新しい角度の論理構造ではないかと思います。

いかにFacebook・InstagramがSnapchatをコピーしてきた/しているのかという問題についてもスピーゲル氏は「私たちはコピーが私たちのビジネスの成長を制限するものだとは考えていません」と回答しています。

自社ビジネスを俯瞰して構造的に捉え、皆と違ったアングルで市場を再定義するモノサシを持つことは、起業家には必須のスキルではないかと感じます。以下にイベント登壇時の動画がありますので、ぜひ一度ご本人のスピーチを聞いてみてください。

動画の途中に大変面白いARの演出がありますが、弊社はARのスタートアップとしてSnapに注目し、同様の体験をブランドへ提供しています。

ARの興味のある企業様は、お気軽にお問合せください。それでは!


ありがとうございます!