史上最高のMV集#1-ヒロ・ムライ作品-【ブンガク×オンガクVol.1】

はじめに

キャンディプロジェクト主催公演のない期間、Twitterに書くことがどうしても少なくなる。
日常的な些末事を呟くのは苦手だし、興味のある事象を140字にまとめるのも苦手だ。

ということで、せっかく【ブンガク×オンガク】を標榜しているプロジェクトなので、「文学」「音楽」そして「演劇」について、徒然なるままに書き散らかしてみることにした。
乱文失礼。


発展し続けるMV

昔からMV(ミュージックビデオ)を見るのが好きだった。
ヒットチャートのMVをひたすら垂れ流している音楽専門チャンネルは、何時間でも見続けられた。

YouTube全盛のこの時代、楽曲やアーティストのプロモーションとして、MVはますます重要視され、予算もかけられている。
映像作品としてクオリティが上がっていることはもちろん、強いメッセージ性(あるいは文学性)を内包した作品も増えている。

例えば、2018年にアメリカのラッパー、チャイルディッシュ・ガンビーノが発表した楽曲『This Is America』のMVは、YouTubeに数多の初見リアクション動画が上がるほど、衝撃的な内容だった。

第61回グラミー賞で、最優秀ミュージック・ビデオ賞はもちろん、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞など、四冠を達成した。
この年の、アメリカミュージックシーンの顔といっても過言でない。

ジョーダン・ピール監督の映画『Get Out』が公開されたのが2017年。
「アメリカ」の抱える根深い闇にスポットを当てながらも、ある種ポップな表現ジャンル(MV/ホラー映画)から生み出されたという意味で、両作品を比較するコラムも多かった。

これを見るだけでも、MVはもはや単なるプロモーションツールの範疇を飛び出し、作品形態の一つになっていることが分かると思う。


映像作家ヒロ・ムライ

この『This Is America』の映像監督を務めたのは、東京生まれの日系アメリカ人「ヒロ・ムライ」だ。

チャイルディッシュ・ガンビーノの楽曲をはじめ、アメリカで多くのMVを監修している。

彼の映像は、徹底的に美しく、独創的で、お洒落な映像的仕掛けがスパイスとして散りばめられている、オンリーワンの作品群だ。
いくつか紹介したい。

A Tribe Called Quest 『Dis Generation』(2017)

Chet Faker 『Gold』(2014)

Flying Lotus 『Never Catch Me』(2014)

特にFlying Lotusの『Never Catch Me』は、すごく好きなMVで、昔から繰り返し見ていた。
『This Is America』へ繋がる萌芽も感じさせる内容だし、ヒロ・ムライのことを知ったのは、このMVからだった。

当時は、「フライング・ロータスだし、日本人の映像作家つかってるんだ」くらいにしか思ってなかったが、今ではすっかり有名になって、何だか妙に嬉しい。

※フライング・ロータスは、日本のゲームなど、サブカル文化が好きなことで有名で、昨年もアニメ監督の渡辺信一郎がMVを作っている。

※ヒロ・ムライは、すでに帰化して「アメリカ人」であるので、名前だけを見て「日本人」と思ってしまう、この日本人らしい感性が、まさに「This Is America」の本質を理解できない、あるいは昨今のアメリカの人種問題に対して的外れなコメントをしてしまう日本人を表している。と自己批判しておく。

さて、色んなアーティストのMVを紹介するつもりが、気づいたらヒロ・ムライ作品について、つらつらと書いてしまっていた。

あまり長くなりすぎてもアレなので、今回は「チャイルディッシュ・ガンビーノ×ヒロ・ムライ」のMV作品を、もう一つ紹介して終わろうと思う。

「難しいメッセージ性や文学性を抱えた作品は疲れる」という日本人も多いだろう。
このMVは、とてもキャッチーでポップで、有り体に言えば「キュンとする」作品だ。
デザートとしてご視聴いただきたい。

Childish Gambino『Sober』(2015)


(筆者)キャンディ江口
キャンディプロジェクト主宰。
作家、演出、俳優。
映像出演時は「江口信」名義。(株)リスター所属
Twitter:@canpro88
HP:http://candyproject.sakura.ne.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?