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人間

わたしは神様に操られていて、神様は生まれる前のわたしだった。生まれる前、わたしは脚本を書いた。満足のいく作品だった。書くだけでなく、演じてみたいと声をあげたわたしの一部が、今のわたしとして生まれてきた。だからこれは、映画だ。演劇だ。囚われの身で体験することには五感の楽しみがあり、感情に彩られ充実していた。最初は楽しんでいたが、やがてバッドトリップに陥り、自由を求めた。死を求めた。逃げ道として、ほかの物語にのめり込んだ。読むだけでなく演じたいと思い、演じるだけでなく書きたいと思った。そうだ、人生は書くことができるのだ。わたしは書くことができるのだ。書こう、本当のわたしをとりもどすために。書いたことから、自由になるために。本当の意味を生きるために。痛みも、苦しみも、味わい深い色をしている。幸せだって、単色ではない。あらゆる場面を楽しみたい。映画みたいに。演劇みたいに。欠かせないシーンだったねと終わったあとに笑おう。神様に書かされるのではなく、わたしの意志で書こう。呪いを祈りに変えよう。わたしは人形じゃない。

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