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キャンプ場の主な経営指標とは?OCC/ADR/RevPARについて

昨今のアウトドアブームにより、メディアでキャンプ特集を目にする機会が増えました。SNSやYouTubeでも、キャンプをテーマにしたものが少なくありません。実際、2011年前後から、キャンプ参加人口は増加の一途を辿っています。

一方で、キャンプ場の経営側に目を向けてみると、苦しい声が聞こえてきます。人気のキャンプ場であれば話は別ですが、そうでないキャンプ場の場合、なかなか収益性を向上させるのは難しいです。施設の老朽化や後継者不在問題も絡んでくれば、お手上げ状態になってしまうでしょう。

そのため、多くのキャンプ場経営者が、「キャンプ場の経営指標について学び業績を向上させたい」と考えているはずです。そこで今回は、「キャンプ場の経営指標」について、簡単に分かりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

①■キャンプ場経営の現状

具体的な経営指標の話をする前に、まずは、「キャンプ場経営の現状」について簡単に触れておきます。

冒頭で述べた通り、近年は、キャンプの需要が非常に高まっています。日本オートキャンプ協会が発表した『オートキャンプ白書2020』によれば、オートキャンプ参加人口は7年連続で増加しており、2019年には860万人を記録したそうです。2012年には720万人であったことを考えると、ここ数年でキャンプブームが巻き起こっていることが分かります。

実際、テレビでは、毎日のようにキャンプ特集が組まれています。TwitterやInstagramなどのSNSでも、キャンプ専門のアカウントが多く存在します。さらに、YouTubeでは、キャンプに関する情報を発信するチャンネルが少なくありません。芸能人の中にも、「キャンプ好き」を公言する人が増えています。

しかし、需要が高まっているからと言って、全てのキャンプ場が儲かっているわけではありません。当然、経営に苦しんでいるキャンプ場も多く存在します。特に、キャンプ参加人口の少ない地域にあるキャンプ場、経営基盤の弱い中小企業が運営するキャンプ場、個人経営や家族経営のキャンプ場などは、資金繰りに苦労しているはずです。加えて、施設の老朽化や後継者不在問題も絡んできて、廃業を目前にしているキャンプ場も増えています。

そもそもキャンプ場運営は、特別利益率の高いビジネスモデルではありません。事実、「大きく儲けたいから」という理由でキャンプ場運営を始める人よりも、「キャンプが好きだから」「やりがいを感じたいから」という理由で始める人の方が多いと思います。もちろん、それ自体は素晴らしいことです。しかし、ビジネスである以上、経営が悪化してしまえば、キャンプ場運営を続けることは困難になります。

だからこそ、多くのキャンプ場経営者が、業績を向上させるためにあらゆる施策を講じています。イベントを行ってみたり、各種サービスを充実させたり、運営形態を変更したり、様々な工夫を凝らしているのです。

②■キャンプ場の主な経営指標

上述の通り、多くのキャンプ場経営者が、業績アップのために様々な施策を講じています。しかし、自社の経営指標をしっかりとチェックし、分析を行った上で戦略を考えているキャンプ場経営者は、まだまだ多くありません。

そこで以下では、キャンプ場運営において特に重要な経営指標について、分かりやすく解説していきます。具体的には、下記の3つです。
・OCC
・ADR
・RevPAR

経営指標を入念に分析することで、自社の経営課題を細かく抽出できます。健全なキャンプ場経営のためにも、ぜひ覚えておきましょう。

ⅰ▪OCC

最初に解説するのは、「OCC(オーシーシー)」という経営指標です。

OCCとは、「Occupancy Rate(オキュパンシー・レート)」の略語で、「区画(サイト)の稼働率」を意味します。つまり、キャンプ場が販売している全区画数のうち、実際に利用された区画数の割合を表します。主に、キャンプ場業界や宿泊業界における販売管理に活用される指標です。

OCC(区画稼働率)は、以下の式で求めることが出来ます。

「OCC(区画稼働率)= 実際に利用された区画数 ÷ 販売している総区画数」

それでは、とあるキャンプ場の1日のOCCを計算してみましょう。例えば、そのキャンプ場には販売可能な区画が50区画あり、そのうちの20区画が利用されたとしましょう。この場合、OCCは下記のよう計算できます。
「20 ÷ 50 = 0.4」
つまり、この日のOCCは「40%」になります。

また、OCCが計算できれば、その日利用されなかった区画の割合も分かります。上記の例で言えば、40%の区画が稼働しているので、残りの60%の区画が利用されなかったことになります。

一般的に、キャンプ場では、ゴールデンウィークや夏休みなどのオンシーズンに、OCCが高くなります。反対に、オフシーズンにはOCCがガクンと下がります。そういった傾向を踏まえ、自身のキャンプ場のOCCを分析してみてください。

当然ですが、OCCが高ければ高いほど、多くの区画を販売できているので、売上は上がります。一方で、OCCが低ければ、売上は上がりません。そのため、キャンプ場全体を効率よく活用し、最低でも事業継続できる水準までは、OCCをアップさせる必要があります。

ゆえに、キャンプ場の経営者は、OCCの状況や推移を常に把握しなければなりません。そして、OCCのデータを参考にしながら、料金設定やイベントの企画などを考えます。

ⅱ▪ADR

続いて解説するのは、「ADR(エーディーアール)」という経営指標です。

ADRとは、「Average Daily Rate(アベレージ・デイリー・レート)」の略語であり、「一区画(一サイト)あたりの平均的な販売単価」を意味します。キャンプ場経営における基礎的な業績評価指標のひとつです。

ADR(1日あたりの平均区画単価)は、以下の式で求めることが出来ます。

「ADR(平均区画単価)= 全区画の売上合計額 ÷ 販売した区画数」

それでは、とあるキャンプ場のADRを計算してみましょう。例えば、その日の全区画の売上合計額が100,000円、実際に利用された区画数は10区画であったとしましょう。この場合、ADRは下記のように計算できます。
「100,000円 ÷ 10区画 = 10,000円」
つまり、この日のADRは「10,000円」になります。一区画あたり平均して10,000円の売上を達成したわけです。

なお、キャンプ場によっては、区画ごとに料金設定が異なっていたり、予約方法やプランによって価格が変わったりする場合もあるでしょう。しかし、ADRにおいては、それらは考慮されません。単純に、全体の売上額を販売区画数で割り、平均単価を算出します。

基本的に、キャンプ場の事業戦略は、大きく以下の2つに分かれます。
・お客様を増やしていく
・単価を上げていく
このうち、ADRは、「単価を上げていく」部分に焦点を当てた指標だと言えるでしょう。キャンプ場経営者は、適切な価格戦略を考え、ADRを高めることを目標にしなければなりません。

また、周辺にあるキャンプ場のADRをチェックすることも大切です。ADRの相場を知っておくことで、「どれくらいの価格設定をすべきなのか」が見えてきます。あまりにも相場を上回る金額を設定してしまうと、お客様に敬遠されるので、十分に注意してください。

ⅲ▪RevPAR

最後に解説するのは、「RevPAR(レブパー)」という経営指標です。

RevPARとは、「Revenue per available room(レベニュー・パー・アベイラブル・ルーム)」の略語であり、「販売可能な1区画(サイト)あたりの収益」を意味します。キャンプ場経営における財務パフォーマンスを計る代表的な指標です。

RevPARを求めるには、以下の2つの計算方法があります。

「RevPAR = 区画売上の合計 ÷ 販売可能区画数」
「RevPAR =  ADR(平均区画単価) × OCC(区画稼働率)」

それでは、とあるキャンプ場のRevPARを計算してみましょう。例えば、その日のADRが10,000円、OCCが20%であったとします。この場合、RevPARは下記のように計算できます。
「10,000円 × 20% = 2,000円」
つまり、RevPARは「2,000円」になります。

なお、「販売可能な1区画あたりの収益」を表すRevPARは、言い方を変えると、「販売可能な全ての区画の平均単価」です。同じ平均単価でも、ADRは、「実際に販売した全ての区画の平均単価」なので、混同しないように注意してください。RevPARは、「売れなかった区画」も含めて計算する指標です。

ちなみに、一般的に、ADRとOCCは反比例の関係にあります。ADRを上げようとすればOCCは下がり、OCCを上げようとすればADRは下がります。ADRもOCCも高いレベルにあることが望ましいですが、両者はトレードオフの関係にあるわけです。そのため、キャンプ場の経営状態を正しく分析するためには、ADRとOCCという指標だけでは不十分だと言えます。

そこで登場するのが、ADRを見ながらOCCも見られる、RevPARという指標です。RevPARを最大化させるためには、ADRとOCCのバランスを上手く取ることが重要です。例えば、下記のようなイメージです。
「今は不景気だから区画の単価を引き下げてOCC(区画稼働率)を向上させてみよう。もちろんADR(平均区画単価)は下がってしまうけれど、仕方がない。OCCが十分に向上したら、徐々に区画の単価を引き上げ、ADRも上げていこう。」

または、RevPARの目標値を設定し、逆算してシーズンの方針を考える手段としても活用できます。
例えば、周辺の施設や競合施設を分析したうえで、適切なRevPAR値を目標として設定します。閑散期・繁忙期や景気の状況などから、OCCとADRのどちらを伸ばして目標のRevPER値に持っていくか考えられると、安定した経営戦略が立てられそうですね。

このように、状況に合わせてADRやOCCを調整し、RevPARの最大化を図ることで、効率的なキャンプ場経営が可能になります。

③■その他の経営指標

キャンプ場運営における主な経営指標である「OCC」「ADR」「RevPAR」について、簡単に解説しました。以下では、「その他の経営指標」にも軽く触れておきます。具体的には、下記の2つです。
・リピート率
・顧客満足度


ⅰ▪リピート率

リピート率とは、一度来店したお客様が、一定期間内に再来店してくれる割合のこと。一般的に、キャンプ場経営においては、リピート測定期間は1年に設定します。

また、リピート率は、以下のような計算式で求められます。

「リピート率 = 再来店者数 ÷ 総来店者数」

冒頭で述べた通り、確かにキャンプ需要は年々高まっています。しかし、年に何回もキャンプに行く人は多くありません。だからこそ、一度来店してくれたお客様を大切にし、少しでも良い印象を残すことが大切だと言えます。

リピート率が向上し、固定客が増えれば増えるほど、キャンプ場の経営も安定していくでしょう。

ⅱ▪顧客満足度

顧客満足度とは、お客様の満足度を数値化したデータのこと。リピート率同様に、キャンプ場経営において非常に重要な指標です。

基本的に、顧客満足度は、お客様に対してアンケート調査を行うことで計測します。料金・施設・備品・イベント・従業員など様々な項目を設け、5段階評価をしてもらいましょう。さらに、自由記入欄を設け、お客様の心の声を記入してもらうと良いでしょう。

もちろん、顧客満足度が低かったり、厳しい意見を頂いたりすることもあります。しかし、見方を変えれば、経営課題を発見したことにもなります。ぜひ皆さんも、顧客満足度をしっかりと計測し、経営改善に役立ててください。

【まとめ】

「キャンプ場の経営指標」について解説しました。

アウトドアブームによりキャンプ需要が増えている一方で、経営に苦しんでいるキャンプ場も多いはずです。まずは、今回ご紹介した3つの経営指標「OCC」「ADR」「RevPAR」についてしっかりと理解し、実際に分析してみてください。

経営指標を分析することで、自身のキャンプ場に何が足りないのか、どこを改善すれば良いのかが分かります。今回解説した経営指標以外にも、キャンプ場運営に活用できる指標はまだまだ多く存在します。ぜひ様々な指標を組み合わせ、効果的なキャンプ場運営を行ってください。


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