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憧れ、楽しさ、ロールモデル

スキンケアがいまひとつ男性に浸透していかない理由のひとつに、ロールモデルの不在があると思う。たとえばこれが女性であれば、メイクやスキンケアのお手本となる「こうなりたい女性」のロールモデルがいる。「田中みな実みたいになりたい!」と思う気持ちがスキンケアの原動力となり、商品を買うきっかけにもなるのだ。なにごとも目標や手本となる存在は大事で、ファッションの分野であれば男性にもロールモデルはいるのだが、スキンケアとなるとその存在がまったくいない。スキンケアの分野にロールモデルがいてくれれば、もう少し広がるんじゃないかという期待を持っている。誰かに憧れるという感情は、ものごとを始めるきっかけとしてもっとも強力なので、これを利用しない手はない。

たとえば星野源がオススメのスキンケア製品について語れば確実にきっかけになるだろうし、日常的なスキンケアが広まっていくような気がする。あれほど清潔感のある方だから、スキンケアしていないわけがないし、きっと自分なりのルーティンやお気に入りの製品もあるはずで、そんな話をしてくれたらいいのにと思う。しゅっとしたアイドルでもいいし、親しみやすいお笑い芸人なんかも適役だ。EXITのりんたろー。さんは使っているスキンケア製品を紹介したりしているので、そんな方が増えていけばいいなと思っている。現状、男性にとっての美容ロールモデルだと、いきなりGACKTというハードルの高い選択肢しかなく、その前にもうちょっと誰かいないのかという気がしてくる。普通のサラリーマンが急にGACKTになろうとしても無理である。

男性化粧品市場を広げていくには、個人的にはロールモデル戦略しかないと思っていて、業界全体であらたなロールモデルを探していく工夫、スキンケアについて語るのが自然になるような風潮を作っていくべきだと思う。いかにも宣伝というのではなく、放っておいても好きな製品を推薦したくなるような状態をいかに作るか。もうひとつはメンズコスメが陥りがちな「モテ戦略」からの脱却。男性化粧品が「これを使用すればモテる」「女性が手に入る」という売り出し方をしている限り、市場はすぐに頭打ちになると思う。なぜならスキンケアを継続するために必要なのは、スキンケアという行為そのものの楽しさ、気持ちよさ、気分がよくなる感覚なのであり、「これを続けていればいつかモテる」という不確実な期待だけでは継続するのが困難なためだ。スキンケアそのものが商品価値でなくてはならない。「モテるためにガマンして行う作業」では、2ヶ月もすれば面倒になってやめてしまうだろう。商品を買って使う、そこにすべての魅力が凝縮している必要がある。

また「モテる、モテない」という発想は、女性を獲物のように見る態度であって、攻撃的な考え方は男性を孤独にしてしまう。そうした男性と関わる女性も不幸になるし、男性自身を追い詰めてしまう結果になる。孤独な男性はそのうちスキンケアも面倒になるはずだ。ジェンダー観としても時代遅れだし、倫理的にもやや問題があるので、そろそろ「モテる」を基準にするのはやめませんか。「モテる」は誰にも約束できない不確定な状態で、化粧品会社がそこを売りにするのは単純に不誠実でもある。扇情的な惹句にそそられて試しに買う人はいるかもしれないが、リピートしてくれなければ市場として成立しないので、「モテる」をセールスポイントにするのはビジネス的にも悪手という気がする。憧れや楽しさ、商品そのものの魅力を原動力にした方が、結果的には安定した市場が作れるように思う。なんで私ごときが提言してるんだ、って話ではあるのですが。

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