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DIYに無縁の人生を送ってきました

憧れの暮らしがそこに

YouTubeで、タレント井上咲楽さくらさんの動画を見た。彼女が生まれ育った実家の様子を紹介する動画なのだが、見てみると、ご家族が豊かな自然のなかでDIY生活を送っているいきいきとした姿があった。私はこの動画に衝撃を受け、とてつもない敗北感にまみれていた。すばらしいと思った。なにしろ井上さんの実家では毎日、薪を割ってお風呂の湯を沸かしているのだという。信じられなかった。一方、私の人生にはDIY要素がない。私は生まれてこの方、「ゼルダの伝説」のゲーム内でしか薪を割ったことがないのだ。おそらく、リアルでは一度も割らずに人生を終えるに違いない。どうやったら、薪を割る暮らしを選択できるのだろうと尊敬の念を抱いた。私はいくらがんばっても、こういう生活ができないのだ。

【私の実家】大自然に囲まれすぎてる実家を全部見せます!(井上さんのYouTube)

井上さんの父親は手先が器用で、下駄箱や表札など、なんでも自作する方だ。家には、父親が作った家具や入れ物がたくさん並んでいるという。母親はかつてパン屋さんをやっていて、発酵機でパンも作れば、ピザ窯でピザを焼いたりもする(どうして家に発酵機やピザ窯があるのか)。まさにDIY夫婦。むろん、毎日の食事もたいへん手が込んでいる。井上さんの家では食事が重要な意味を持っており、家族総出で準備するのだ。そしてめくるめく保存食の数々! 味噌、梅シロップ、びわの焼酎漬けなど、さまざまな自作の保存食を瓶に詰めて保管している様子も紹介される。まさに圧巻。私は、保存食を自分で作る人を見るとすぐに降参してしまうのだ。瓶のふたにはマスキングテープが貼られ、作った日時と使用された材料が記録されている。これも実にいいではないか。この保存食置き場の映像にはため息が出そうだった。

憧れちゃうよ〜

なんでそんなに、いろいろ自分で作ってしまうのか

ていねいな生活すぎて、ぐうの音も出ない。どれだけがんばっても追いつける気がしない。なにしろ豆板醤まで自分で作ってしまうというのだから驚きだ。豆板醤を買わずに自作しようという、その斜め上すぎる発想はどこから出てくるのか。私は、漬物のぬか床を作る人や、庭でバジルを育てて、料理をする前にちょっと取ってきて使うような人に途方もない憧れがあるが、井上さんの実家動画にはそうしたきらめきがつまっていた。私自身はだらしない性格で、取り込んだ洗濯物を畳むのですら数日かかるのであり(その間、洗濯物は床に置きっぱなし)、蚊に刺されたときに塗るどくだみチンキを手作りするような生活ができない自分に恥ずかしさを感じている。なんでそんなに、いろいろ自分で作ってしまうのか。その技術をどこで覚えたのか。やる気はどこから生まれてくるのか? 聞きたいことは無限にある。

人生で一度は薪を割っておきたい

井上さんご自身も料理が得意で、レシピ本を出版されたりしているが、それはあきらかに、こうしたDIYていねい暮らし家族のもとで育った経験が大きく影響しているのだと思う。ご両親から受け継いだ経験や知識が、井上さんを作っているように思えた。一方、考えてみれば、私の両親はあまり生活に興味がない人だった。父親はいっさい家事をせず、食器を下げるところすら見たことがない。ましてや自分で棚を作ったり、釣ってきた魚をさばいて食卓に出すなんて絶対にあり得ない人だ。それはそれで両親の選択なので、別にしかたないのだが、私が父(ハードコア共産党員)から受け継いだものといえば、「歴代共産党委員長の名前がすらすら言える」くらいで(村上弘を忘れがちなので注意)、もう少し別のなにかを伝授してほしかったという思いがある。靴箱の作り方とかさ。

私だってきっとできる

そんな自分が情けなくて、なにかを変えたいと思った私は、いま初めて豆苗を育てている。育てているといっても、ただ単に、スーパーで買ってきた豆苗の上の部分を食べたあとに、下のスポンジみたいな部分を捨てずに皿に置いて、毎朝水をやっているだけなのだが、思いのほか早いスピードで豆苗が伸びてきている。「これが、ていねいな生活……」と、初めてDIYを経験した綾波レイみたいな感想が出てきた。キッチンのシンク横に置いておいたら、太陽の光が入る方向に向かって豆苗の先が曲がっているのに気がつき、「太陽を目指している」と思った。豆苗は生きている。よし、DIY生活の始まりだ。そしていつか私も、薪を自分で割ってストーブにくべる薪サウナ室を作って汗を流すのだ。どこかの山奥で。サウナ室も自分で建てる。いつかDIY人生をモノにしたいのである。やるといったらやるのだ。

阿佐ヶ谷姉妹の影響で育て始めた豆苗

【井上さんのレシピ本、うらやましさしかない】

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