館林城跡の訪問記録(1989年、秋田世豪)

群馬の史跡・観光地の訪問記録(1989年、秋田世豪)

・館林市の館林城(たてばやしじょう)跡
・城沼(じょうぬま)
・つつじが岡公園


ツツジが花を付けていました。目を凝らすと、ほとんどのつぼみは大きさを増して、小指の先ぐらいに膨らんでいます。桜も満開です。つつじが岡公園でツツジと桜が咲きそろうのも珍しいことです。「いつもより10日は早いかなぁ」と、ツツジを管理して32年目の管理人さんは言いました。「20年ぐらい前にもあったかな」。これも暖冬のせいでした。

樹齢650年、高さ5メートル。見上げるようなツツジは、ほかでは見られなません。全部で1万株はあります。花弁の先がさじ状に広がる「西行」や、刻々と色を変える「胡蝶揃(こちょうぞろい)」など珍種も見られます。毎年4月15日からの開園日以降、約30万人が燃えるように花を付けるツツジを目当てに、関東、東北地方から訪れます。

現在の館林市に生まれた田山花袋は「幼き頃のスケッチ」で、館林城、城沼周辺の風土を書き残しています。「私の大きくなった町は平野の中の摺鉢(すりばち)の底のような処にあった。(中略)冬は赤城おろしが吹荒(ふきすさ)んで日光連山の晴雪が寒く街頭に光って見えた」と書きました。

室町時代、赤井照光がキツネに導かれ建てたと伝えられる館林城は、三の丸土橋門と本丸の土塁が一部残っていますが、花袋時代の面影はもう薄いです。城沼の水面には、桜が映え、湖畔の冒険広場で遊ぶ子供たちの姿が噴水にけぶります。約11万平方メートルの公園内には今、黄色の花を付けたレンギョウやユキヤナギが咲き、しばらくして、ショウブ、カキツバタなど3万株が花開きます。

公園内には近く、古代住居3棟を復元した「縄文邑」と南国の草花を集めた温室がオープン、ツツジに彩りを添えていました。

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