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時間が止まった世界が教えてくれたこと

一体なんの時間なんだろう。

最近毎日のようにそう思う。


夫婦そろって家にいて、仕事をして、ごはんを食べて、また仕事して。

ごはんを一緒に作って、テレビを見る。

外出する予定はほとんどなくて、毎週のように遊びに行っていた週末も、スーパーへ買い物に行く程度。

時が止まったような毎日が、もう2週間ほど続いている。


3月で会社を辞めるまで、目まぐるしく忙しい毎日だった。

週5日~6日、9時から18時まで会社で勤務して、帰宅後と週末にライター・カメラマンの活動と勉強をして、まとまった時間があれば必ず撮影に出かけて。

いつも何かに追われていて、常にTODOリストをチェックして。

家から一歩も出ない日なんて、ここ数年で数えるほどだった気がする。


ありがたいことに、抱えている仕事やすべきことがこの状況下でもいくつかあって、「暇だ」と思う瞬間なんて少しもない。

それでも、外に出ることが「悪」となり、不要不急の動きがストップした今、世界中の時が止まったような、不思議な感覚を覚える。

(もちろん医療従事者の方や外で働かざるを得ない今まさに臨戦状態の方がたくさんいることは理解しています。皆さまのおかげで家にいることができる今に改めて感謝と敬意を表します。ありがとうございます。)


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先日、夫と初めてランニングをした。

あまりに運動していなくて、「このままじゃ仕事に支障が出てしまう」という恐怖心からだった。

夕方18時、まだ太陽が落ちきっていない中、お互いに見慣れないランニングスタイル(とはいえパーカーとズボンというラフな格好)で、外に出た。

持ち物はスマートフォンと鍵だけ。いつもカメラとレンズがたっぷり入ったリュックをかけている肩がびっくりするほどの軽装で、いつも使う道とは反対側の道を歩き出した。


家の周りとはいえ、普段歩かない道は新鮮で、私とは対照的に家の周りを熟知している夫は嬉しそうに周辺施設の説明をしてくれる。

いつの間にか驚くほどに暖かくなった4月中旬の空気が、肌をかすめる感覚が心地いい。

15分ほど歩いた後、近所の河川敷に到着。「そろそろだよ」と言われ、走り出した。


ランニングなんて、いつ以来だろう。

7年ぶりぐらい?


「気持ちいい」と思った時間は一瞬で、すぐに息切れと苦しさを思い出す。驚くほどの早さで再び歩き出した私を見て笑いながら、夫は少し前を走っていった。

河川敷から見る空はいつのまにか鮮やかな橙に彩られ、前を走る夫に重なる。

家の近くとはいえ、見慣れない道。いつもファインダー超しにしか見ない夕焼け。時折こちらを笑いながら振り返る、夫の姿。


旅ライターとしても活動している私は、「絶景」と呼ばれる場所に今までたくさん行ってきたけれど、

その光景を目にした時に急に、かけがえのない瞬間を見ているような、幸せなのにほんの少し寂しいような、そんな気持ちになった。


一体今は、なんのための時間なんだろう。



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コロナが収束する未来に期待するとして、こんな日々を送ることは、きっともうないだろう。

毎日仕事に出かけ、空いた時間に家事をして。週末は当たり前のようにどこかに出かけたり、友人と食事したり。

今送っている毎日が信じられないぐらいに、あわただしい毎日が始まる。

こんな時間は、きっともう二度とない。



「他人に気軽に会う」ことができなくなったこの2週間、家族の温かさに改めて気づかされる機会になった。

一緒にいてくれることがかけがえのないほどに幸せで、毎日を丁寧に過ごす今の時間は、私が忘れかけていた何かを思い出させてくれた気がする。

他の人から見たら全く価値のないものかもしれない。SNSに載せるほどの特別な体験でもない。

それでも、こんな日々を残す仕事をしたいと強く思った。



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私は今、出張撮影の仕事をしている。

結婚式の前撮りや家族写真、カップルフォトを撮影するカメラマンだ。

「知らない人の撮影をして楽しいの?」と聞かれることもあるが、めちゃくちゃ楽しい。

会ったばかりの方たちだけれど、たった数時間ではあるけれど、2人の出会いや、家族の決めごとなど、たくさんの方のストーリーを聞きながら写真に残す仕事は、私にとって非常に価値があり、やりがいがある。

今は自粛期間中ということもあり、撮影はお断りせざるを得ない状況で、残念ながらキャンセルになってしまったご依頼もたくさんある。



未曾有の恐怖が世界を陥れる中、あらゆることが変化せざるを得ない状況になっている。

今後の社会の流れを不安に思う人も多いだろうし(フリーランスである私もその一人)、医療従事者の方など、この状況を懸命に変えようと頑張ってくださっている方もたくさんいると思う。中にはこのnoteを読んで不快に感じる方もいるかもしれない。

それぞれに違う毎日を過ごしながらも、家族や大切な人への想いが変わった方は多いのではないだろうか。

きれいごとでは済まされない事象であることは重々承知したうえで話すと、この時間は「大切な人と過ごす今」を見つめなおすきっかけをくれたような、そんな気がする。



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「コロナが終わったら」なんて聞き飽きているかもしれないけれど、コロナが終わったら、落ち着いたら、写真を撮らせてほしい。

特別な日でもない、どこに行くわけでもない、何でもない1日でも、それはきっとあなたにとって、大切な人にとって価値のある日々で、

そんな瞬間を残すことで、「今のかけがえのない幸せ」に気づき、絆をはぐくむお手伝いをしたい。

その時は、ご家族やパートナー・友人など、皆さまのエピソードをたくさん聞かせてほしい。

まだ時間はかかると思うけれど、「ここにある幸せ」を残すための仕事を、早く再開させたいと、今は強く思う。








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instagram=@camel8326/@yuri.photograph 旅・花・人をテーマに活動する、フォトグラファー・ライター。 前撮り・家族写真撮影のカメラマンや書籍への写真提供、講演会登壇、取材など。