医療トピック⑤~器質疾患と心因性疾患の鑑別~

今回は横浜市立大学医学部総合診療医学でご勤務されている石塚先生から
「器質疾患と心因性疾患の鑑別」についてのお話です。

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皆さんは、一般外来で器質疾患を心因性疾患と危うく診断エラーしかけた経験はないでしょうか。身体症状を主訴に受診する心因性疾患患者はプライマリ・ケア外来の約3割を占めると言われています。多愁訴や医学的に説明できない身体症状(medically unexplained physical symptoms; MUPS)では心因性疾患を鑑別する必要がありますが、器質疾患に合致しないから心因性疾患というプロセスは危険です。なぜなら、このプロセスでは器質疾患について、全て網羅していることが前提にあり、想起している器質疾患を除外できても、自分が想起していない器質疾患が含まれている可能性があります。そのため、器質疾患に合致しないから心因性疾患と判断するのは診断エラーのリスクが高まります。
心因性疾患のうち, 気分障害や不安障害では、中等症未満であれば治療に対する反応も良好であるため、内分泌疾患のような器質疾患に準じた病態とみなせる可能性があります。しかし、葛藤がベースとなる転換性障害、病者の役割が複雑に絡み合う身体症状症や病気不安症、疾病利得のない虚偽性障害、訂正困難な誤った信念を有する妄想性障害などの心因性疾患では、精緻なbiopsychosocialアプローチが必要となり、診断・マネジメントはしばしば困難を極めます。後者の心因性疾患と比較した器質疾患の特徴には以下のポイントがあります。 

1) 自覚所見と他覚所見・ADL障害が乖離していない
2) プラセボ効果
3) 増悪寛解因子が明確
4) 進行性の経過
5) 発作性, 間欠性の症状
6) 聞きなれない症状であるが奇異ではない表現
7) 睡眠中, 安静時に悪化する症状

診断エラーは説明できない症状を強引に心因性とする、あるいは軽視することから生じることがあります。そのため、器質疾患と心因性疾患の鑑別を適切に行い、両者が複雑に関与している場合はその関与する割合を考察することも重要です。器質疾患か心因性疾患かの鑑別を適切に行い、そのうえで、診断の鍵となるキーワードを抽出するプロセスは診断エラーの防止に効果的であると考えられます。

器質疾患と心因性疾患の鑑別について詳しく知りたい先生方は以下の論文もご参照下さい!
Ishizuka K, Shikino K, Li Y, Yokokawa D, Tsukamoto T, Yanagita Y, Kojima J, Yamashita S, Noda K, Uehara T, Ikusaka M. The differential diagnosis of medical and psychogenic disease in primary care. J Gen Fam Med. 2023 Nov 29;25(2):110-111.
The differential diagnosis of medical and psychogenic disease in primary care (wiley.com)

引き続き医療トピックも発信してまいります。
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