またいつか、と言いかけて


この前、学生時代の友達から連絡があった。

「リナのことってもう聞いてる?」

リナとは同じクラスだった。
明るくて利発で、綺麗な顔をしていた。

結婚だ、と直感した。
人づてに聞くクラスメイトのニュースといえば、それしか考えられなかった。
私も同級生の結婚式に出るような年齢になったんだな。


だから、リナが亡くなったなんて嘘だと思った。


正直、私とリナはそこまで特別に親しい仲というわけではなかった。
同じ教室にいた頃は、リナの好きな本を貸してもらったり、二人で話したりすることもあったけど、卒業してから個人的に会うことはなく、共通の友人のインスタの投稿で見かける程度だった。

でも一度だけ、卒業後にリナと電話したことがあったのを思い出した。
それは同窓会の日。

その日用事があったリナは、一次会に来なかった。
でも途中から参加できるかもしれないと言うので、誰かがリナに電話をかけ、いつ合流できそうか聞いていたのだ。

そして、集まっていたクラスメイトたちが次々と電話を代わり、リナに「私は誰でしょう」クイズを出し始めた。
私が電話を代わったとき、リナは最初、私だと分からなかった。
「え〜??誰〜??」楽しそうに考えている。

しばらくして、答えを知った彼女の、「あ〜、おみゆか〜!元気?」という明るい声がした。私は少しリナと話した後、そのまま次の出題者に電話を代わった。

そしてリナは結局、一次会には間に合わず、今度は私が二次会の前に抜けた。
二次会に行かなかったことで、もう二度とリナに会えなくなるとは、知る由もなく。

あのとき二次会に行ってリナに会っていたら。そういう小さな選択ひとつで、彼女の死に対する思いも、私の記憶に残る彼女の姿も、少しだけ違っていたのかもしれない。

リナへお別れの言葉を贈ることになって、何を言うべきか迷った。

「またいつか」

一瞬言いかけた、その言葉の重さに打ちひしがれた。
それはもう、二次会に行かなかったあの日に思っていた「いつか」ではない。
もう来ないと分かっている「いつか」だった。果てしなく遠くなった「いつか」のことを、一人で考えていた。

未来に何が起こるかは分からないし、誰にいつ会えなくなるかも分からない。
かといって、今の行動に最善を尽くしたところで、未来がより良くなるとも言い切れない。

それでも、今この瞬間の一つ一つの選択を丁寧にすること、その選択がどんな未来に繋がったとしても、選んだ自分に胸を張ること。
私たちに出来るのはそれだけだと、改めて感じていた。

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