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そこにある月

私と月のお話
今日の新聞に日本月面着陸ロケット発射成功の文字が躍る100年も経てば人は月に住み赴任先は、月などとなる日も遠からず来るであろう。
もう60年も前のことである。私が物心が付き始めた頃
は、まだ月の存在をはっきりとは認知してはいなかった。世の中はまだ暗がりが広がり山を見れば漆黒の闇 人家の灯りもない黒の世界であった。そんな中で母にお使いを頼まれた。300メートルほど離れた家に頼まれ物を持って行く役目を私にさせた。その夜は、満月それもとびきり大きな卵の黄身が熟んだような月だった。
行きは、背中に月を感じながら足元も明るくスキップするぐらい調子良かった。頼まれ物を渡し きびすをくるりと返すとそこには恐ろしい程の大きな月が私に覆い被さるように突然現れた。
私は、なるべく見ないように、急ぎ足で家に向かうのだが怖いもの見たさでチラチラと覗いているうち
どうして私の行く方向に執拗についてくるのか 歩けど歩けどついてくる しかも私を呑み込むかのように
怖くなって一目散に家に逃げ帰った。(ワアー)と声を上げ母の胸に飛び込んだ。私が泣き止むまで膝に抱いてくれた。
今になってもあの日の記憶がおぼろげに月への思慕と共に思い出されるのである。
地球がある限り月も有る。世の中で起きた総てのことを呑み込んで静かにそこに居る。
常に私の見上げる先にいて励ましていてくれる。一体どれほどの人が月に癒やされているだろうか。
月よそのままに
決して私利私欲で人間が月を荒らしてはならない
幼い日の憧れと敬愛をそのままに 
月を抱き胎児のように眠りたき

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