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もう会えない相手への怒りについて、思い出してしまった話

祖父(故人)の話

先日接客対応したお客様が、やたらとイラついた。
歩くのもあまり達者ではないご高齢の男性で、別に嫌なことを言われたわけではなくただ、ひたすらマイペースだっただけだが自分でも不思議なくらい、イラついて関わりたくなかった。

何故だろうと考えて、父方の祖父を思い出したのだという考えに至った。

私の父は、大人数な兄弟の末っ子でいちばん上の兄弟とは親子ほどに年齢が離れており、まだ幼稚園児な年齢で叔父になった。
したがって、自分の両親が祖父母と言ってもおかしくない年齢である。

私からしてみれば、曽祖父でもおかしくない年齢の祖父のことが、端的に言って苦手だった。
昔の人にありがちな【男児至上主義】を悪気無く発揮する人で、女の孫は眼中に無い人だった。
このことを父に言っても否定しないので、その通りでしかないのだろう。

私は長子で長女だった。
だから、下の兄弟が嫌なことでもやるしかなかった。
そのひとつが【祖父への挨拶】だ。
何故嫌なのかといえば、眼中に無いからだ。
祖父は、私が挨拶をしても弟の名をしきりに呼ぶ。
典型的核家族な我が家は、両親の実家に行ったときのみお年寄りに接する。
弟は弟で未知の生物に対する畏れなのかなんなのか、決して挨拶をしなかった。
その様がはにかみやで愛らしいとか言うふざけた周囲の意見が、私の怒りのボルテージを更に引き上げた。
私だって、嫌です。避けたいです!
周りの大人は「まだ弟は小さいから…」と宥めたが、奴は長じても変わらない。
私の言い分としては『私はいつまでもソイツよりは歳上ですが?』
この辺りで、私の弟への当たりがキツくなるのだがまさしく『大人はわかってくれない』である。

話を戻そう。
祖父はとにかくマイペースで、ぼんやりした人。
その一方で頑固。
視力が弱く、歩きも達者で無いにも関わらず散歩が好きで、ひたすら自分の世界に居た。
祖父と会話が成立した覚えがまるで無い。

末っ子のところの女孫などノー眼中。
祖父にとって、末っ子のところの孫は弟しか居ない、もしくは私は弟の付属品くらいの認識だったのではないかしら?(実際どうでも、幼い私にはそう感じられた)

なるほどな、可愛がられた長男はそれで許されたわけか。良かった良かった。

先日接客した方も、店員の言葉が聞こえないフリが大変お上手なご高齢の男性でした。
話していて『よし!スルーしよう』と早めに諦めた自分が不思議でなりませんでしたが、誰かに似ていると考えて、もう鬼籍に入った祖父でした。
姿かたちではなく、自分は不自由な老人であるのだから大切にされるべきで、自分の話は無条件で聴いてもらえるということが全面に押し出された態度が、私の中でイラついたのだという考えにいたり、まさしく三つ子の魂百までだと思いました。

もういい歳した大人ですが、祖父はそういう生き物だと認識している価値観は、もう修正出来ません。
だって、祖父から挨拶を返されることは永遠にないのだから。

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