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クレーム対応はチームプレー

クレーム対応の心がまえとは? 

コールセンターのオペレーターの仕事を、クレーム係みたいに考える人は多い。実際、苦情やクレームの電話はあるし、苦情でなくたって次々と知らない人の問合せや相談を受けるだけでも大変な仕事だ。しかし、顧客対応が基本的に楽しいという人もいれば、ストレスで参ってしまう人もいる。その差はなんだろう。

心理学的なバックグラウンドのある人は、その人の性格や考え方によるものが大きいと指摘する。はなから向いていない人はコールセンターで働かないほうがいいということになる。そんな一面はたしかにあるかもしれない。もしそうなら、電話だけじゃなく店舗などでも顧客対応する人は、ある一定のタイプしか向いてない仕事になってしまう。お客にもいろんな人いるのだから、顧客対応のオペレーターにもいろんな考え方や性格のタイプがあっていいはずだ。そこにはもって生まれた考え方や性格だけでなくて、仕事への取り組み方や姿勢などのテクニック、つまりあとからちょっとしたコツや訓練で身に着けられる技術や心がまえがあるはずだ。

それらは、きっとオペレーターから別の仕事にキャリアをチェンジしてもすごく役立つ、本当に使えるスキルになるはずだ。

豪傑な女性課長の話

社会人になりたてのもう30年近く前の話になる。自分がコールセンターのオペレーターとして配属されていた時の話だ。

普通のオペレーターで手に負えなくなったクレームや苦情を引きついで対応をするのを「エスカレーション」という。エスカレーターのように上位の者や、上長の者が電話を替わって対応することだ。実際には、『上司を出せ!』と言われてすぐ電話を転送することはあまりないのだが、もうオペレーターの手に負えなくなって「エスカレーション」されるときには、もうお客様の怒りは炎上していることもよくあった。

その女性課長は、そうした選りすぐり?の苦情やクレームのエスカレーションを受ける担当課長だった。化粧品や家庭用品をあつかう会社だったから、化粧品をつかって肌がかぶれたとか、洗剤で大切な衣類が縮んでしまったとか、いろんなクレームが入ってくる。彼女は、嫌がるわけでもなく、冷静に、そして理路整然とクレーマーもしくはクレーマー寸前となったお客様と対応し、お客様と会社がお互いに納得できるポイントを見つけ出し、話合い、解決に導いていく。

クレームをさばく秘訣

お客様が怒っているからと言って、それをなだめようと平身低頭おわびするのとは違う。たしかに発生してしまった事象やお客様の怒りという状況については、お詫びはする。しかし、そこからなにがあったのか、事実関係を丹念に洗い出していく。時にはクレームを言っているお客様に対して「事実がわからなければ前に進めない」という感じで諭すようにそして鋭く迫っていく。事実関係を明らかにしていきながら、社内のプロセス上にミスがなかったか、あるいは会社として何をどこまでしていくべきか、時には保険会社や顧問弁護士などとも調整していく。そして最終的には、双方が納得できる解決策まで導いていくのだ。

思わず出た質問とその回答

「いつもクレーム対応ばっかりで、コワくないんですか、大変じゃないんですか。ストレスとか感じないんですか?」

その課長の行動があまりに凛々しく清々しいので、社会人になって間もない私は質問をした。

「ぜんぜん。だって、私は会社の立場でやってるんだからまったく怖くないわよ。個人でやってるんじゃないのよ。会社のバックアップがあって、会社としてできる範囲があって、それを整理していくだけなんだから。こんな楽な商売ないわよ。」

このやりとりを30年近くたってからも、忘れたことはない。

いくら何でも「楽な商売」ではないだろう。でも自分も苦情・クレーム対応を結構やったが、この言葉を思い出すとすごく楽な気持になった。 彼女の心の態度と行動がずっと指針になっている。

クレームをチームで対応する

コールセンターのオペレーターは、苦情を受けるマシーンではない。会社に対する苦情やクレームが来たら、チームで取り組み、お客様も会社も納得できる解決案にむけて努力する。チームプレーヤーなのだ。だからこそ、苦情やクレームがあったら、次に同じような問題が起きたときにスムーズに解決するか、あるいは同じようなことが起きないようにプロセスを改善するかを、チームとして考えることができるのだ。 あの女性課長の行動の基盤にはチームに支えられているという確信があったからだと思っている。

こんなコールセンターだったら成長できない

もし、苦情やクレームを最初にうけたオペレーターに「最後まで対応しきってみろ」とか「がんばれ」としか言えないコールセンターだったら、そこで働いても得るものは少ないだろう。もちろん事実関係もまったく整理できないで、お客様が不機嫌で怒っているという理由だけで上長に電話を替わるような体制では、かえってお客様に不信感を与えてしまうだろう。しかし、コールセンターとはチームなのだ。チームとしてお客様対応をする、それができないなら、そこで働く人は成長できないし、お客様もハッピーにはならないだろう。

最近、企業のミスなどで苦情が炎上したりする事例がインターネットでも話題になることがある。対応の過程で、しっかりとクレーム対応をできるプロと彼らを支えるチームはいたのだろうかと思う。あげくに最終的には会社のかなり偉い人が記者会見を開いたりする。

1人じゃできないこと

苦情やクレームに対して、毅然と、でも優しく対応し、お客様を納得させ、企業を守るような対応をするには、一人のプロがいればいいということではない。会社として顧客接点の部門としてコールセンターとして、チームプレーが必要なのだ。

まとめ

・苦情やクレームのない仕事はない。だからそれにどう対応するかは重要な社会人のスキルである。

・苦情対応でお客様だけをみてストレスがたまるなら、自分を支えてくれるチームの皆に目を向けよう。

・苦情やクレームは個人としての仕事ではない。チームプレーだ。

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