夏雨(なつめ)

短歌やってます。小説や散文も書くつもりです。

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最近の記事

欺瞞も正直もどっちもキモい──『ナミビアの砂漠』感想走り書き

 「現代を生きる女性の等身大の肖像〈ポートレート〉」みたいな宣伝文句がいろんなところで謳われていて、確か予告編でも「今まで描かれなかった令和の女のリアル」みたいなことを言っていた気がするけれど、これはすごく変だ。だって普通いないでしょ、あんなむちゃくちゃな人。あれが令和の女性のポートレートだって言われて、本物の令和の女性は自分ごとに置き換えられるんだろうか。  一方で山中瑶子監督自身は「言っちゃいけないことなんて何もないんだよっていうメッセージ」みたいに言っていたと思う。これ

    • 第3回角川U-25短歌選手権応募作品 25首連作『滞留する夜』

      慣性の法則めいたいとなみを編んで座礁のような夕暮れ 歓びも楽しみもあるようだった スクランブル式の後夜祭 僕だけが見ているものに影はなくラストノートの色のネオンが いき急ぐ人を追い越せないバスで左半身ゆっくりしずむ 水滴をそのまま握る 隔たりも覚えられないバーカウンター シシュポスに少しだけ似た者共の落石事故にご注意ください アンビエントを奏でていれば鍵盤の上にも夜が夜を探して 醜形をおそれつ嗤う子どもらのピアスホールも上唇に いつまでももたれていたく背泳ぎの

      • 映画『花束みたいな恋をした』をめぐって

         『花束みたいな恋をした』は、『劇場』、『ソラニン』、『ピース オブ ケイク』などと似たタイプの映画だ。東京の下町のボロアパートでボサボサヘアのサブカル男子がロクでもない恋をする。個人的に、このタイプの映画は家で見るに限る。映画は家派?映画館派?という野暮な質問が世間にはあるけれど、ただひとつの正解は「私ではなくその映画が決める」である。  花束みたいな恋がどのような恋なのかはよくわからなかったけれど、この映画をリアルタイムで見て広告代理店志向に染まった麦くんみたいには絶対

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