見出し画像

瞬間移動を体験した日。

今日、世にも奇妙な体験をした。
あれは瞬間移動だったとしか考えられない。

知人に頼まれて冷蔵庫を運ぶのを手伝っていたのである。
私は車の荷台からその冷蔵庫を降ろして、6〜7段くらいある玄関の石段を登ろうとしていた。

1〜2人用の小さめのものではあったが、まぁまぁ重い。
そして冷蔵庫というのは大体、抱きかかえるには大きすぎるし、かと言って指を引っ掛けて持ち上げようにもツルツルしているので、文字通り掴みどころの無いヤツである。

仕方が無いので、縦置きのまま右手の指先を上段扉と下段扉の隙間に差し込む。
そして左腕を大きく巻き込むようにして持ち上げた。

3〜4段目まで上がった所で石段を踏み誤ったかなにかで、よろよろとバランスを崩してしまった。

そのまま踏ん張りがきかず、「あ〜もう無理!コケる!」と思った瞬間に、体の向きが変わり、私が石段の上側になって、重みで下側になった冷蔵庫を段差のフチに「ガツっ」と音をたてて落としてしまった。

石段のフチに引っかかっただけの冷蔵庫は当然、階下に向かって落下する。
上から押さえて止めようにも、勢いがついてしまっているうえに、表面がツルツルしていてやはり掴むところが無かった。
お前はなんて掴みどころの無いヤツなんだ。

運ぶのを頼まれた冷蔵庫が「ガシャーン!」と大きな音を立てて地面に叩きつけられる瞬間が見えた気がした。

と同時に、「あぁ、なんて無様な僕、、、」という己への哀れみがコンコンと湧き出てきた。

すると次の瞬間、どういうわけか私は傾いた冷蔵庫を石段の下で支えていた。
さっきまで落ちゆく冷蔵庫を上から見下ろしていたのに、である。

そして、その間の記憶がまったく無いときた。

今年最大の焦りと、先回りして感じたとてつもない羞恥心が、私の秘めたる超能力を覚醒させたに違いない。

そんなこんなで、今日からアベンジャーズの一員です。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。