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日本外食新聞掲載原稿 第62話

第63話が掲載されたので第62話をアップします。
今後どうなるかわからないドキュメンタリー(実話)連載です。


実録!飲食業界のパラダイムシフトに田舎の喫茶店マスターが巻き込まれたとき、現場をこなしながらどのように活路を見出すか。611日目。


おっ、あっちの方で桜が芽吹いてるぞ!呼ばれている気がする!!自転車で通勤していると季節の変化に敏感になる。よく考えたら13年も同じ道を通っているんだよな。客商売なので毎日小さな変化はあるにせよ、やっていることは単純作業の繰り返しだ。お店に到着したらまず珈琲を淹れ、新聞に目を通す。エスプレッソマシーンの電源を入れ、炊飯器にお米をセットしたら、真空管アンプに火を入れる。(真空管アンプは電源を入れるとは言わず「火入れ」、球がもの凄く熱くなるからだ)フロアとトイレの掃除をしたら、外回りの掃除と植物の水やり、そして仕込み。これを時間通りにこなす。もう身体に動きが染み付いているので、時計を見なくても今だいたい何時何分かわかるぐらいだ。そうなるとこのルーティンに対して熱が冷めるというか、鈍感になっていく…いけないとは分かっていても作業が作業になってしまって、結果的に自分の行動の解像度が低くなるという、いわゆる熟年夫婦感が出てしまうんだな、お店と自分というカップルに。
そうなると隣の芝生が青く見える、つまりお店の外の変化が急に眩しく新鮮に感じるようになるのだ。ついこの間まで蕾だった桜が一斉に咲き誇っているのを目にしたら、まるで20代の女の子に「すこし桜見ていきませんか」なんて声をかけられたような、フランボワーズの甘酸っぱさにも似たドキドキが……おっと、いかんいかん。我を忘れてメタバースに浸ってしまった。話を戻そう。
そういえば去年もこんな桜を見るシチュエーションあったなぁ。あの頃は何してたっけ?……ああ、そうだそうだ!昨年の今頃、福利厚生サイト「WELBOX」の掲載がスタートしたんだった。たしか大手企業1400社が導入していてそこの従業員380万人が見るサイトだから「ものすごい注文数が一気に来るかもしれませんが対応できますでしょうか?」って言われて、おいおい、ものすごい注文数ってどんなんなんだろうとウキウキしながら準備したけど、結局あれから一年たって入った注文は4件?5件ぐらいか?トータルで(笑)鳴かず飛ばずのサイトになってしまったので、勿体無いからせめて検索で上位表示されるようにはしておこうと多少いじってみたが、全く効果が無かった。導入している企業が多いというだけで、そのサイトのアクティブユーザーが多いということではないという当たり前のことが分かっていなかったので、数字に踊らされて契約してしまったなぁ。まぁ、そのおかげで自社専用のECサイトを2つも作れたのだから良しとしておこうか。200万円の高い買い物=勉強代になった。
あと、そうそう、あれだ。エリスリトールを使った低糖質のチーズケーキを開発してて、毎日試作品を焼いていたのが去年の今頃だ。確かあの頃は「悪魔的」「罪悪めし」とか「痛風鍋」というワードが流行った後、逆の流れで「低糖質」や「ロカボ」がブームになりそうな予感があった時だ。いち早く取り入れようと躍起になって、毎日試食を繰り返してはお腹をこわしていたのだが(エリスリトールの摂り過ぎには注意しましょう)、今はまたそれとは逆のことをやっているから、世の中とは実に不思議なものだ。
ただ、どれもこれも偶然ではなくその道を通ることが必然だったのだろう。だからこそ今見えているこの景色があるのだ。2年前はただの田舎の喫茶店だったのに(今もそんなに変わらないけど)、セントラルキッチン作ってお菓子をネット販売してるなんて、あの頃は想像もしてなかったなぁ〜。ついでに事務所兼倉庫も手に入れたし、最高だな。

3月16日、宮城・福島で地震があったその日に政府は『まん延防止等重点措置』の21日での解除を正式に決定した。これでいよいよ通常営業に戻せることになったのだ。とはいえアクリル板による席の制限や、入口での消毒と検温までが解除になったわけではない。あくまで最低限の要請を守った上での通常営業ということになる。そしてこの2年で染み付いたマスクを強要される生活様式や、夜飲みに行くことを咎める空気・近所の目はそうそうすぐに変わるものではない。田舎だから感染がバレるとすぐに噂が広まるので、相変わらず外食を禁止している企業も一定数あるくらいだ。その同調圧力にどう対抗していくかが解除後のカギになる。4月からは借入金の返済が始まるところが多いので、この厳しい空気の中での舵取りは本当に難しいなぁ〜としみじみ思う。あくまで予想だが、今回の解除で本当に最後の最後になると考えている。今後もう『まん防』や『緊急事態宣言』を出すことはないだろう。政府も協力金はこれで最後にしたいだろうし、これ以上経済を止められないギリギリのところまで来ていることは重々分かっているはずだ。この流れでいけば、4月にもコロナを2類から5類に落とすだろう。というか、そうしなければ経済が回せないのだから仕方あるまい。流石の岸田総理もここの判断は誤らないと信じたい。そしてコロナが5類に落ちたなら、本当の勝負の時がやってくる。この2年間何を準備してきたか、それが問われるのだ。まさかこの2年間何もせずに手をこまねいていたわけではないだろう。本当にそんなんだったら戦う以前の問題だ。全ての価値観が変わってしまった今、生き残れるのは新しい生活様式に臨機応変に対応できる、順応性の高い店だけだ。変化していない、もしくは変化できないお店は速攻潰れるだろう。残酷だがそれが世の摂理だ。2年間必死にもがいてあれこれやってきたお店は、それが無駄なことではなかったと確信をもって新しい時代に突入できるだろう。全ての失敗はこの時のための布石だったということだ。

3月18日、毎週金曜日がなぜか暇になる当店なのだが、その日は違ってひっきりなしにお客さんが入ってきた。みんなの表情を見ていると、どうも浮かれてるっぽい。そうか、もうすぐ『まん防』が解除されることにウキウキしている人達と、お母さん方の春休み前の駆け込み需要が重なったからだ。そして嬉しいことに皆さん食後にティラミスを注文してくださる。ん〜いい流れだ。どうやらティラミスのお店ということが認知され始めたらしい。このいい流れを断ち切らないように頑張らなきゃだな。
ランチ後、先日注文を受けたティラミスを運送会社の集荷場まで自分で運んだ。運送会社に回収に来てもらうこともできるが、やっぱり自分の手で運んだ方が安心だからだ。「今度こそノークレームで頼むぞ!」と段ボールに向かってお祈りする。さぁ、4回目にして初のノークレームとなるか。真空パックに入れてあるのでカカオが漏れる心配は無くなったが、どこで何が起こるか解らないのがネット通販。新たなトラブルが生まれないことを願うばかりだ。

21日でついに『まん延防止等重点措置』が解除され一気にお客さんがなだれ込んで来た〜(よっしゃー)と思ったのも束の間、24日には春休みが始まったのでいつも通りの静かな営業に戻ってしまった。
「終わったな」
「終わりましたね」
「俺たちのまん防解除は春休み終わってからだな」
「春休みっていつ迄でしたっけ?」
「4月6日まで」
「長いっすね〜」
「秘密工房のECサイトがあとちょっとの所まで来てるからこの春休み中に完成させるぞ。あと秋冬メニューから春夏メニューにガラっと変えるから考えておいて」
「了解です」
「まぁなんにせよ『まん防』解除で浮かれるやつが増えるから、感染者数の増加は避けられないっしょ。それまでに2類を5類に落とすのが先か、もう一回おバカな規制をかけるのが先か、見ものだな」
1月21日から3月6日までの時短協力金135万円の申請はきっちり済ませて、3月7日から21日までの45万円の申請もいつでも提出できるように準備してある。今後まださらに協力金を出したい、もう一度『まん防』を出したいと政府がおっしゃるなら、協力するにやぶさかではない。ただ、根本的な解決になるはずもないことはこの2年で分かっているのに、バカの一つ覚えみたいに同じことを繰り返すのはいかがなものか。もう少しちゃんと頭を使って考えて頂きたい。ってあれ?そういえばこのところ尾身さん見てないけど、どうしたんだろう?コロナ分科会ってちゃんと仕事してるのかなぁ?




カフェパルランテ/秘密工房   三井隆義

〒487-0026 愛知県春日井市不二町2-6-7  0568-53-2477

営業時間 12:00~22:00 (ランチ12:00~14:30LO・ディナー17:30~21:00LO)
月曜定休 + 不定休あり(noteで告知します)
P7台(乗り合わせて来てください)

http://www.caffeparlante.com/ ←カフェパルランテの歴史(2009年7月~)
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