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「ある男」〜rap

数ヶ月前に映画を観て、「意外とよかった」と感じた

過去を入れ替えた男の話かと思って観始めたら、その男のことを調査する弁護士の話でもあり、一人の人間が与えられて拒絶できずに積み重ねた過去と、その過去と切り離して自由に捉えることのできた生き方の話であり、人間の幸福とは得難い場合にこそさらに強烈な力を持つ話であった。

原作を読んでみようと思い、バタバタする日常の隙間を縫って少しずつ読み進めてきた。
映画よりもっと濃厚な世界が広がっていて、幸福なラスト数章は移動中の交通機関の中で読み終え、こっそりと涙ぐんだ。

小説の中頃に城戸が幼い息子を思って強烈な幸福感を感じるシーンがある。
私にも過去にそんな瞬間があった。
「私の人生で一番幸せな記憶は、二人の子供(生まれたばかりの下の子と2歳になるかならないかの上の子)の間に寝ていた時に『こんなに可愛い子たちが二人とも私の子なんだ』って思った時よ」と、当の子供達にしか話していない、誰かに話しても理解してもらえないだろうと思っていたことが、城戸によって表現されていて、強く共感した。

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