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カフェ物語#1 異世界の扉が開かれる-CHAMBER OF RAVEN-

始めに

皆さん、初めまして。カフェ物語屋の中でカフェの物語を書き記している者です。

普段は空間デザイン会社で働き、都内で運営されている、もしくはこれから運営する個展(個人経営をされているお店)の魅力を「文字」で発信しています。

本業でもやっていることを、このカフェ物語屋でも行っていきます。要はそれくらいカフェが好きで、皆さんにもその魅力を知っていただき、是非足を運んでいただきたいと思っています。


此処では私が訪れたカフェを、仮想ストーリーを交えて紹介していきます。ストーリーの中で表現されているカフェに少しでも魅力を感じていただければ幸いです。
コーヒーや料理は勿論、そこでしか体感できないインテリアの質感や、音や、景色を味わってください。


仮想ストーリー:異世界への扉が開く

杉並区の天沼。穏やかな雰囲気の飲食店が軒を連ねている。

この雰囲気が私は好きで、渋谷や大手町のような人が雑踏としている場所よりよっぽどいい。仕事の疲れを癒してくれる何かが此処にはあると、私は思っている。

東京へ来てもう1年が経つ。

生まれ育ったのは都会の景色とは真逆の田舎街。その景色が好きだったこともあり、上京してからの1ヶ月間は特にこたえた。最近はようやく都会の景色に目がいくようになったが、やはり田舎を想起させる住宅街は落ち着く。


そんなことを考えながら歩いていると、目の前に怪しげな洋館が現れた。

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『CHAMBER OF RAVEN』と書かれてある。気になってスマホで指を走らせて調べてみると、どうやら完全予約制のカフェのようだ。

店舗詳細https://www.raven2015.com/


「2日前からの予約じゃないとダメみたいだな。カフェで予約制だけって珍しい。」

すっかりその店構えと雰囲気に飲み込まれてしまった私はその場ですぐ予約し、2日後にはまた同じ場所に足を運んでいた。


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中に入ると、店内は薄暗く怪しげなランプや本棚、不気味な人形たちが目に入った。店員もコロナ対策でオリジナルのフェイスガードをしている。その様相は今から戦いに挑む女剣士のようだった。


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2階に案内されると個室に通された。どうやら来店者毎にひとつひとつ部屋が用意されているようだ。これはなかなか面白い。


私が通された個室には、ガイコツのカップルが椅子に座っていた。不気味すぎると思うかもしれないが、部屋の所々に小物が置かれていて、ガイコツカップルが霞んでしまうほど目移りするものが沢山置かれていた。

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まさにどこかのテーマパークを想像するようなワクワクさと、少しの不気味さを感じさせる異様な空間だった。


注文したのは、チョコレートをメインにピスタチオアイスなどがトッピングされた「恋の導き」というパフェと、真夏の三日月夜をイメージした「クレッセントレイク」という飲み物。


恋の導きはチョコレートで作られた蝶が特徴で、全体的に甘すぎないビターな味わいのため、量はあったがすぐにたいらげてしまった。深層にいく毎にどんな味に変化していくのか楽しめるパフェの醍醐味を堪能しつつ、何よりそのビジュアルに魅了されていた。

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クレッセントレイクは透き通った青色が芸術的だが、備え付けのシロップをかけてかき混ぜると、徐々に紫色に変化していった。味はさることながら、このような体験で楽しませてくれるカフェも徐々に増えてきたように思う。

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追加でパフェをもうひとつ注文してしまった。

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店内にはまさにアミューズメントパークを思い出させるような、英語の重低音で陽気な音楽が流れている。座ったソファーは長時間座っていても疲れることはなく、肌感もこだわっていることが分かった。

なるほど、完全予約制で入念に準備していることが頷ける空間提供だ。


洋館を出る頃には、どこか心に清々しさを感じていた。
長らくテーマパークに行っていないからだろうか、久しぶりにあの高揚する感覚を味わえたように思う。

「サラリーマンとして働いているだけでは、こんな感覚は味わえないな。」

辛い現実から一時的にでも開放してくれたこのカフェは、まさに異世界。その扉を開けてよかった。


さて、明日からまた仕事か。
だが歩みを進めるその足は、少しだけ、軽くなっていた。

(この物語はフィクションです。)

Instagram:https://www.instagram.com/cafe_story_branding/?hl=ja