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第1回 丸山純子 「入国拒否」

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数年前からドイツで長期研修できないか考えはじめ、今年の3月15日からベルリンのベタニエンで滞在制作できることになった。ちょうどコロナが身近に感じて来ていた時だ。ベルリンまでは、格安航空券でアブダビとベルグラードを経由して入国する予定だった。アブダビ行き飛行機は思いの外すいていたがベルグラード行きの便の中では、ドイツ語の会話も聞こえるようになっていた。ベルグラードに到着すると、セルビア人のみ飛行機を降り、外国人は中で待つようにと指示が出る。飛行機の中ではパスポートを没収され、飛行機の清掃の間、空港の建物と飛行機をつなぐ通路では1時間くらい待たされた。空港の中から男性が出てきて、一人一人入国拒否書を手渡していく。それからTOKYO行きと書かれた航空券 とパスポートを返され、アブダビ行きの飛行機に乗り込む。入国できなかった我々外国人を乗せた飛行機は中継点であるアブダビに向かった。空港では、鼻の粘膜を採取され、パスポートに蛍光緑のシールを貼られた。飛行機会社は入国拒否を受けた我々たちのためにホテルと食事を用意してくれていた。日本でお世話になっている方々にも協力していただいて部屋で情報を集めていると、3月17日にはEUが封鎖するという情報が入る。ドイツ大使館に確認すると、封鎖するという情報はあるが、はっきりと公言されてはいないと返答が来た。日本に到着後のベルリン行きのチケットを取り直し、ホテルの食事をとる。部屋に戻り、ベッドに横になりながら日本行きの飛行機を待っているとウトウトと寝入ってしまった。ふと目が覚めたその時は、飛行機の出発する時間になっていた。急いでカウンターに行くと、もう飛行機は飛んでしまったという。では万が一ということもあるので、飛行機会社の受付の男性にドイツ直行便の飛行機のチケットは買えないか聞いてみる。すると、やはりEU諸国には入国できないというので日本行きのチケットを購入。新しいチケットを持ってチェックインカウンターに行くと、違う男性が荷物の対応をしてくれた。もう一度、聞いてみる。ドイツにいく直行便はないか。3月17日の夜23時ころである。こちらの男性はこのすぐ後にミュンヘン行きの飛行機が一つあるという。日本行きのチケットをドイツ行きのチケットに交換してもらい、男性に、心からお礼を言って、 搭乗口に向かった。
2:40発のミュンヘン行き搭乗ゲートは、ヨーロッパ系の人々でごった返していた。入り口で日本のパスポートと搭乗券を見せると、この便から外国人を封鎖するように通達が来たのであなたは入れないといわれた。2度目だった。3月18日朝5:00 日本行きのチケットを購入。22:00発の飛行機を待つ間に、空港の飲食店が、一つ一つ営業を停止して行く。帰りの飛行機は満席だったが、成田では待つことなくすんなりと入国でき帰国した。


丸山純子
 1976年、山梨県生まれ。ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ美術学科卒。国内外問わず様々なアートプロジェクトに参加。主に身近にある物を収集し手を加え、新たな風景を作る。主な展覧会は、2017年「BankART Life V-観光」(BankART Studio NYK)、2016年「5rooms」(神奈川県民ホールギャラリー)、2015年 越後妻有大地の芸術祭2015(星峠村、新潟)など


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