CAEエンジニアはなぜ会社の中で理解されないのか

メーカーでCAEを行っている人たちとの話の中でよく出てくる話題の一つに、会社の中ではCAEが理解されないというのがある。CAEが大学教育の中であまり行われていないということも関係していると思うが、私としてはその会社の中でCAEが理解されないのは、経営がCAEに投資しているにもかかわらずCAEエンジニアが投資以上の利益や効果を上げられていないことと、それに対してCAEエンジニアが説明責任を果たせていないからだと思う。どちらか一つでもできていれば、少なくとも経営者にCAEが理解されないということはないと思うし、現場にもCAEが浸透していくと思う。

CAEの理解を困難なものにするもの

CAEは現実の現象をコンピューター上に仮想的に再現する。これはあたかも現実と同じもののように錯覚されるが、あくまでも仮想上に表現しているだけで近似的に一致したとしても現実とは厳密に一致したものではない。しかし、あまりにも美しいグラフィックは、あたかもそのようになるという誤解を与える。

下図に示すように、バーチャルで与えた初期値・境界値に数値解析により得られた解析結果を表現しているに過ぎない。現実に解析結果を活かすためには、その結果を具象化し意味づける必要がある。ここにCAEエンジニアとしての力量が試される。

CAEの全体像_適用と技術的な課題

また、数値解析作業は現実とは別次元(バーチャル)での作業のため、知らない人からすると単にPCで遊んでいるだけのように見られる。これは美しいグラフィックを動かして作業しているさまは、PCゲームをしているそれに酷似しているからと思われる。

これらは、相手側のCAEに対する本質的な理解が欠如しているからであるが、この無理解を相手に求めたところで何も変わらない。

CAEの必要性を理解してもらうためには

・相手にとってCAEの必要性を相手自身が感じるようになること
・CAEで直接利益を上げること
に尽きるのではないかと思っている。これは経営者に対しても、現場の人に対しても、CAEを使う設計者に対しても、CAEエンジニアが行うべきことでありそれがCAEエンジニアの仕事であり役割である。相手が理解しないということを嘆くということは、単にCAEエンジニアが果たすべき役割を放棄しているだけである。

そのためには、CAEの必要性を相手自身が感じられるように働きかければよいし、CAEでQCDを改善すれば間接的にも効果を訴えることができる。少なくともCAEエンジニアが自分の専門領域の中から物事を訴えることを手放し、相手の領域に踏み込み相手の現実の中から自分の専門領域を見ることが第一歩ではないかと思う。

間違っても、相手に初期値・境界値を一方的に求めそれが得られなければ門前払いをしたり、理論を知っていることを前提に数値解析的な正しさを振りかざしたりしてはいけない。これをやっていては永遠にCAEが理解されることはないだろう。

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