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【YouTube】笑って元気になる日本語ラップのMV3選。

 私はカエサル。今日は日本語ラップのMV…………Music Videoを3つ紹介する。なぜいきなり? 経緯を説明しよう。世界に元気になって欲しいと思った。経緯は以上だ。世界には元気が必要だ。世界の一部であるあなたにも。

 本題に入る前に、あなたはラップと聞いて何を思い浮かべるだろうか? …………ヒップホップ…………ストリート…………B‐BOY…………バイオレンス…………ドラッグ…………アポカリプス………人の精神に干渉するマイク…………ディビジョンバトル……………。

 概ねそんなところだろう。確かにラップの一側面はそうだ。いかに自分を大きく見せるか、強く見せるかというアティチュードは時に暴力的で攻撃的だ。マイクバトルなどのシーンもそのイメージに拍車をかけているだろう。

 ラップは元々「持たざる者」の文化であり、高価な楽器などなくても言葉さえあれば最高の音楽ができるぜという精神性から成り立っている。そして、そんな持たざる者たちは「今日を生きる」だけで精一杯だ。

トランペット

 そう、余裕が無いのだ。「金持ち喧嘩せず」などと言うが、まさにその逆だ。喧嘩もするし虚勢も張る。バトル勃発だ。その攻撃性がラップ・ミュージックの一側面であるのは間違いない。だがしかし、それだけでは消耗し疲れていくばかりだ

 では、そのときどうしたか? 疲弊しすり減った精神をラッパー達はどう癒したのか? その答えも、もちろんラップだ。彼らはラップで元気を出した。例えるならRPGの魔法使いだ。メラゾーマやブリザトなどの攻撃魔法だけでなく、ヘイストやバイキルトなどの補助魔法も使いこなした。日々の暮らしに楽しさと笑いを見出し、それを音楽という呪文で世界に撃ちだしたのだ。

・くまちゃんリング 【Pizza Love】

 くまちゃんリングだ。これは別に十勝平野に生息するヒグマとプロレスリングにブチ込まれてデスマッチをする…………とかそういう意味ではない。くまちゃんリングとは、その名の通りくまちゃんがデコレーションされた指輪のことだ。

 ファミレスのレジ横を思い出せ。あなたは包み焼きハンバーグとかチキン南蛮とか食べた後にレジで会計を終えたはずだが、その時レジカウンターの横にミニカーやキュートなぬいぐるみ等のおもちゃが置いてなかっただろうか。そこはキッズを喜ばせるおもちゃ売り場ではない。ジュエリーショップだ。

 何故なら、くまちゃんリングが売っているからだ。

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(↑画像は動画より)

 Pizza Loveはギャルを名乗る屈指のラッパーだが、ガストのレジ横にジュエリーショップを発見したその慧眼は非凡と言わざるを得ない。

 口座に金は無いがオシャレしたい。そんな情熱がラップになったこの楽曲は、3分間でくまちゃんリングの話しかしない。彼らなりのファッションをした4人の男たちがフラフラと踊りながら我々にくまちゃんリングを見せつけてくる。

 しかもリリックは以下の通りだ。

指輪350円ネックレスは1000円です
これを買う為だけに足を運ぶ地元のバーミヤンへ
赤青黄色くまちゃん3150
ツキノワグマアメリカグマヒグマのどれなの?
てかてかなんで売ってないのよ渋谷のガスト

 完全に最高だ。サビではくまちゃんリングと5回も繰り返し、ピカピカ光る、キラキラしてる、といった要点をまとめたプレゼンテーションで我々にもくまちゃんリングをオススメしてくる。

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 これを聞いたが最後、ガストに走るしかない。ハンバーグなんて目じゃない。そもそもテーブルに着く必要すらない。何故なら目的はレジ横にあるのだから。事は一刻を争う。こんなラグジュアリーなジュエリーがいつまでも市場に残ってると思うな。わかったら、財布を掴んでダッシュするべきだ。


・千年バズル feet.オオイエ 【MAKI DA SHI*】

 もしも今すぐまとまった金を手に入れたらどうする? 現金で60万円だ。豪華に海外旅行? クラブに繰り出して酒池肉林の豪遊? それとも貯金だろうか? しかし、それらの選択肢はこの曲を聞くまでの話だ。これを聞いたが最後、60万円の使い道はこれ一択、

 青眼の白龍《ブルーアイズホワイトドラゴン》だ。

 MAKI DA SHI*は医療に携わる人間ながらラップに目覚めた多才な人間だが、その友人も大物だった。これは動画タイトルに【友人が1枚60万円のブルーアイズを自慢するだけの曲】とあるように、メガネの友人(オオイエ)が嬉しそうに自分のブルーアイズホワイトドラゴンを自慢するための楽曲だ。

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 ラップうまくないけど ブルーアイズもってる
 1枚60万のブルーアイズもってる
 ヘネシー飲まない(いらない)
 bi**hも抱かない(抱けない)
 でも心に余裕 ブルーアイズもってる

 高級なコニャックも飲まないし女だって居ないが、彼にはブルーアイズがある。白いベッドに転がってニコニコしながらウルトラレアカードを眺める姿は見ているこちらも笑顔にさせる。そう考えると、彼はもはや「持たざる者」ではないのかもしれない。世界が何を言おうと、少なくとも彼の帰りを待っている「青眼の白龍」はいるのだから。

 MVの内容は、男たちが両の拳を振り上げて千年バズルと繰り返し、闇カジノで遊戯王カードを遊ぶという内容だが、その2分と少しの映像には人を元気にさせる力がある。

 私が個人的に好きなのは「フェイクメディア」と「エグゾディア」で韻を踏んだあと、エクスカリバー ⇒ 聖なるバリアー と続けたのに、次のパートでは「ミラーフォース」ではなく「ミラーボール」で話をカードゲームからラップに戻す点だ。

 もう一点好きなのは、「傷つかないよう 個別ディスプレイ」と全く韻を踏んでないが嬉しそうにカードの枠をなぞるシーンだ。もはやそこまでされたらこちらに言うことは無い。ただ黙って高評価のボタンを押すしかないのだ。

・やべ〜勢いですげー盛り上がる 【田我流】

 このタイトルから「愛や恋の切なさの歌ったセンチメンタルな歌かな……」と考える奴はいないだろう。その通りだ。このMVの内容は一言で表すことができる。

 「5人の男たちが暴れまわる」

 本当にこれだけだ。動画冒頭に崖の上に5人が並び、タイトルが現れポーズを取る。後はノリと勢いだけの4分39秒だ。半裸になって踊りだし、ハンマーやつるはしを振り上げ、フォークリフトに5人乗りして爆走する

 田我流(でんがりゅう)率いるstillichimiya(すてぃるいちみや)は自分達の生活に満足していない。キツい仕事、満足とは遠い生活、そこから抜け出そうとする精神は純粋でピュアなラップ・アティチュードと言える。そしてその手段として彼らはやべ~勢いですげー盛り上がった。そのインパクトはハイパワーかつストロング、とにかく彼らは本物だ。

田我流【MV】やべ〜勢いですげー盛り上がる 1-43 screenshot

オレら ドゥーム ドゥーム
オレら バーン バーン
ちょっと思ってたよりも
思ってたよりも
やべ~勢いで すげー盛り上がる
やべ~勢いで すげー盛り上がる
やべ~勢いで すげー盛り上がる
すげー盛り上がる
すげー盛り上がる

 このリリックが思いつくか? 合法の手段じゃ私には無理だ。しかし彼らはそれを成し遂げた。この楽曲には勢いしかないが、勢いだけで全てを盛り上げる気合と覚悟がひしひしと伝わってくる。

 男たちが暴れまわるMVだというのは先述した通りだが、それにしたって落ち着きがない。元々、楽曲のMVというものは抽象的なものが多いが、このMVは抽象的を通り越してもはや概念的だ。ビデオのどこで一時停止しても成人男性がはしゃぎまわる姿が映っており、「やべ~勢いですげー盛り上がる」の概念を体現している。

 私は気分が落ち込んだとき……そんなときには元気を出すためにこの曲を聞く。ネガティブを払う方法は人それぞれだが、私の場合はそれが爆発とハンマーとノリのよいラップだった。半狂乱になった男が荒野で暴れる映像を見つめながら将来の不安など考えることができるか? つまりそういうことだ。 

・以上だ

 人間は不完全な生物なので、時に落ち込んでしまうことがある。人間によって構成されている世界も同じだ。そして元気のなくなった世界はつまらない。つまらないのはダメだ。そんなときの対抗手段のひとつとして、今日は3つのMVを紹介した。

 YouTubeは数回のクリックで辿り着くから素晴らしい。かなりインスタントな回復手段だ。あなたにとってのホイミやケアル、注射器やメディ・キットが何かはわからないが、まだその救急箱に空いたスペースがあるのなら、今日紹介したMVを入れてみてはいかがだろうか。

 それでは、私はもう行く。何故なら、私がこの記事を書いている最中にヒプノシスマイクの新曲が公開されたからだ。次に会うのがいつかはわからないが、もしその時があったのなら飲みながらお互いのオススメMVを紹介することにしよう。もちろん、その場所はガストに決まっている。



Twitter:@caesarcola


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