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初めて観た社交ダンスの世界

はじめに

みなさんは社交ダンスをご存知だろうか。私は初めて社交ダンスの文字を目にした時、かつての貴族が社交パーティで踊るようなダンスをイメージした。このイメージはあながち間違いではない。しかし、歴史あるサロンや宮殿内に留まらず、現代の社交ダンスには大会もある。国内だけでなく世界大会も催されているらしい。

今年の正月に放送されたテレビ番組にも社交ダンスは登場していた。きっとご覧になった方もおられるのではないか。社交ダンスにはジャンルがあり、タキシードやドレスを着て舞うスタンダードと呼ばれるジャンルと、ブラジルの熱い男女が舞うようなラテンアメリカンというジャンルがある。国内の大学には競技ダンスの部活やサークルもあるようで、毎年熾烈な戦いが繰り広げられている。

私の彼女は以前社交ダンスを習い大会にも出ていた。社交ダンスの大会を観戦してそのハイレベルな様子を観てほしい、と彼女に頼まれたことをきっかけに、今回、先日行われた大会を訪れた。

概要

社交ダンス大会の運営団体は国内に複数あるらしいが、今回観戦したのは日本最大規模の団体が開催したものである。大会名は日本インターナショナルダンス大会と言う。オープン戦のため誰でもエントリーできる。そして、この大会には海外のプロダンサーも参加する。有明コロシアムにてスタンダードとラテンアメリカンの2ジャンルで、プロアマそれぞれ合計4部門の試合が行われた。大会は2日かけて開催され、私が尋ねた日曜日はプロのスタンダードと、アマのラテンアメリカンの試合がある日だった。

施設

有明コロシアムは比較的新しい施設のようで、内装も外装もピカピカだった。メインフロアはテニスコートほどのサイズであり、その周囲360度の座席がフロアを囲んでいる。野球スタジアムほど広大ではないので、たとえ遠くの3階席でもしっかり観戦可能である。

観戦開始

巨大なスピーカーが用意されており音楽がよく響く。素人の耳にも良いスピーカーだとわかるほど音楽が綺麗に奏でられており、贅沢な音圧が会場を覆っていた。予選レベルでは1種目1曲1分ずつ流れ、5つのダンス種目を踊っては選手が入れ替わっていくことで選考が進んでいく。このテンポの良い回転速度が飽きさせない秘訣と言えるだろう。短時間の間に大勢の選手が採点され、次の試合に進む選手が決まっていく。アマチュアと言えど、クオリティは非常に高い。「アマチュア」という言葉が相応しくないほどの演技に見えた。

スタンダードはクラシックなダンス5種目を指す。基本的にカップルがクルクル回りながらテニスコートほどのフロアを反時計回りに周回していく。確かに優雅だった。だが、あまりにも高度なダンスだった。自転速度も公転速度も超高速で、テニスコート1周分の距離をものの1分ほどで駆け抜ける。曰く、優雅に踊っている(これも採点基準らしい)ように演出しているが、実際はどの選手も息を上げるほどだとか。第1予選から決勝に進むにつれ当然体力を大きく消耗する。観客からすれば、全身で表現されるダイナミクスが印象的でエキサイティングである。

私は観戦しながら、選手たちがどのような想いをかけて臨んでいるのか、どうしても想いを馳せずにはいられなかった。素人が1日2日でなんとかなるレベルではない。数年、十数年、ひたすら研鑽してきただろうと一目でわかる。選手たちの熱気と、その選手たちを応援する観客の熱気が同期されていく。歓声は止まない。

気がつけば応援していた

社交ダンスに興味を抱いていなかった私がいつの間にか見入っていた。会場には背番号を叫んで応援する人も大勢いる。演技こそ見える視力ではあるが背番号まで見えるほどではない。メガネを忘れてきた自分を憎んだ。私も推しの背番号を叫びたかった。決勝戦へと局面が移る中で、初観戦の私にさえ推しのような選手ができた。その推しは表彰台にこそ登ったものの3位に終わってしまった。莫大な時間と情熱を注いだ彼・彼女が最も悔しいだろうと思う。そして、たまたま機会があって観戦していただけの私も悔しい思いをした。本当に悔しかった。彼・彼女たちが私をこの境地まで至らしめたのである。

私はスタンダードよりもラテンアメリカンの方が観ていて面白いと思った。ラテンアメリカンの試合中、愛と情熱が渦巻くドラマがそこに繰り広げられていた。ダンサーのみならず、その場にいた全ての人々が集中している。愛と情熱と全ての人々の巨大な精神エネルギーが会場を支配していた。どうしたって選手たちから目をそらすことはできなかった。

来年もまた

来年は幕張にて世界大会が開催されるらしい。世界中から屈強なダンサーたちが集って熾烈な戦いを繰り広げる。確実に約束された感動がそこにはある。今回、これまで社交ダンスに興味のなかった私はかつてないほど感動した。同じようにこれまで社交ダンスの大会を観戦したことのない方もきっと楽しめるだろう。推しの選手を見つけて応援するのもまた楽しい。ぜひ一度は足を運ぶことをおすすめする。私は来年、間違いなく幕張の地を踏んでいるだろう。

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