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自由研究に悩む子どもたちへ

こんにちは、カエル研究室のコウです。
やってきましたね、自由研究の夏!さあ、考えただけで気が重くなる宿題No.1の自由研究について、今回は語ろうと思います。

研究をお仕事にしてきた私ですが、私にも小学生時代はあります。「どうせ、子供の頃から研究好きで、自由研究とか楽勝だったんでしょ?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。私も「自由研究ってマジやだ」と思っていました。幸い、私の通っていた小学校では自由研究と自由工作のどちらかを提出すればよかったので、私は毎回必ず工作の方に逃げていました。
今、冷静になって考えても、子供にとって自由研究ってハードルが高すぎるんですよ。だって、学校で研究のやり方、一切教えないじゃないですか。学校では理科実験はしますよ。調べ学習もします。でも「研究」はしないんです。そもそも「研究」とは何なのかも教えてもらえません。もしかしたら夏休みに入るときに「自由研究のやり方」的なプリントを渡された人もいるかもしれませんが、それ一枚読んだくらいで、すらすらできるようにはなりませんよね。
もちろん、自由研究が大好きだよ!研究のやり方わかってるよ!というお子さんもいるでしょう。大人顔負けの研究をしてコンクールに出品されたり、賞をとる人もいますよね。でも、多くのお子さんは自由研究という、つかみどころのない宿題に悩んでいることと思います。そんな皆さんのために、役に立つかたたないかはわかりませんが、私流、自由研究の進め方をご紹介します。

何をやったらいいの?

そもそも何をやったらいいかがわからない。テーマが決まらない。そういうお子さん多いと思います。ちなみに私は家の中にいるだけでも研究テーマは10個くらい思いつきます。近所をお散歩すればさらに10こくらい思いつきます。自慢したいわけではなく、皆さんもコツをつかめばあっという間に研究テーマがどんどんと思いつくようになります。そのコツを今から紹介しますね。

テーマの決め方のコツ1

好きなことや興味があること、身近な疑問を出発点にすると、案外難しい。

自由研究を始めるときに意外と多いのが「好きなことや身近な疑問をテーマに決めたところまではいいけど、この先どうやってすすめたらいいかわからない…」というお悩みです。この壁にぶつかると、途端に面倒くさくなって、テーマは決めたけど後回しにして結局夏休みの終盤まで自由研究が残っちゃうんですよね。

例えばサッカーが好きだったとします(私はサッカー観戦が好きなので!)。サッカーが好きだから、サッカーの自由研究しよう!と決めたあと、皆さんだったら何をしますか?私はすぐには思いつきません。うーん、ワールドカップの優勝国を調べてみる?でもそれをどうやってまとめよう?サッカーのフォーメーションを研究?無回転シュートの軌道?なんか難しそうだし調べ方がわからない……。

じゃあサッカーはやめて、身近な疑問をテーマにしよう!そうだ、雷ってどういう仕組みで落ちるんだろう?って気になってたんだ。これをテーマにしよう。これならネットでしらべたり図書館で本を借りればわかりそう。…でも、分かったところでどうやってまとめよう。図を書き写せばいいのかな。どの図を?どれくらい細かく書けばいいの?考察は…何を書けばいい?

おやおや、私の思考が迷子になってしまいました。こうなるともう面倒くさくてやりたくなくなってしまう。
迷子になる原因は、「スタートを決めたものの行き先を決めていない」というところです。行き先が決まっていないけど、とりあえず家を出発してみる、するとどうなるか。家を一歩出たところで、どうしたらいいか分からなくなります。どこにゴールがあるのかもわからない。果てしなく遠く、長い道のりが横たわっているように感じられます。あてのない旅が好きな方も中にはいます。でもそれとはまた違います。あてのない旅は「行くあてを作らずに楽しむ」という目的があるでしょう。でも自由研究はゴールにたどり着くことが求められているのです。なのにゴールを設定せずに飛び出してしまったら、そりゃパニックになります。
でも、例えば「しながわ水族館に行きたい!」と、行き先が決まっていたらどうでしょう。小学生であっても、場所を調べて電車を調べて、駅からの道のりを調べて、時々人に訪ねながら、自分の力で目的地までたどり着くことができるでしょう。
まずはゴール地点から決めることを強くおすすめします。その決め方は、このあと説明していきますので、安心してくださいね。

テーマの決め方のコツ2 

仮説が立てられて、検証ができそうで、考察ができそうなことをテーマにする

自由研究のゴールを決めるといいよ、とお話しましたが、じゃあ何をしたらいいか、もうちょっと詳しく説明していきます。
自由研究のレポートをまとめるときの流れは、テーマを決めたきっかけ(動機、背景)→実験→結果→考察、です。で、自由研究のゴールというのはその流れの最後のほう、「結果と考察」のあたりのことをイメージすると良いでしょう。
結果と考察を先に決めるってどういうこと…?
それはですね、「もし、こういうことをしたら(実験・検証)、こういう結論が出せそうだな(結果・考察)」の見通しが立てられる、ということです。というか、むしろはじめから結果や結論がだいたい分かっていることを研究テーマにするといいよってことです。


とても簡単な例ですが、コップに水を入れて外に置いておいたら、水は乾いていきますよね。結果が分かっています。それに、蒸発という仕組みも、5年生くらいであれば知っていると思います。なので、結論も書けますよね。こういうのを研究テーマにすればOKなんです。
え?と思うでしょ?こんな当たり前のことでいいの?
でもそれが研究の始まりです。実際にやってみてください。コップ一杯の水が完全に無くなるまでの時間って、意外と長かったりします。長いな、と思ったら、時間を測ってみたくなりませんか?これをコップの水ではなくて洗濯物でやってみたらどうでしょう。少しずつ、生活に結び付く意味のある研究になってきたでしょ。でも「どれくらいの時間で乾くか」だけではちょっと物足りないですよね。ですので、コツ3ではもう少しひねりを入れて、より研究っぽさをつけていきます。具体例を紹介するので、このコツ2を頭の片隅に入れて読み進めてみてくださいね。

テーマの決め方のコツ3

似てるけどちょっと違うものをくらべる

ここからはちょっと具体的になってきますので、よりイメージしやすいかもしれません。
研究の一番大切な要素は何かというと「比べること」です。何かを明らかにするときには、たいてい何かと何かを比べます。例えば製薬会社で、ある植物がある病気に効くとき、その植物の中のどの成分が効くかを研究するとします。このようなときは、必ず、成分を与えたときと与えなかったときを比べて効果があったかなかったかを調べます。

いくつか自由研究のテーマになりそうな身近なものを題材に、比べる、ということをしてみましょう。

「タオルと服の生地をくらべてみる」
タオルは服と違ってふわふわしている。それは水を吸いやすくするためなのでは?どれくらい違いがあるのか、比べてみよう!きっとタオルのほうがたくさん水を吸うはずだ。

「今の気温と昔の気温を比べてみる」
お母さんが、「昔は学校にエアコンなんてなかった」って言ってたけど、それで大丈夫だったのかな。昔は38度とか行かなかったのかな。30年前の夏の気温と、最近の夏の気温を比べてみよう!きっと、今のほうが高くなっているはずだ。


どうでしょう?どちらも「比べる」ということをしていますよね。そして、コツ2もしっかりできていますよね。「こういうことをしたら(検証・実験)」「こういう結論が出せそうだな(仮説・考察)」というところまで想像できます。ここまでできたら、自由研究は90%出来上がっています。あとは計画通りに進めば、迷わずに悩まずに最後まで行くことができます。最後まで行ったときに、自分の考えと違う結果が出てもいいのです。それも一つの結果だし、新しい発見の種になります。

ここで、コツ2のところで出てきた「水が乾く実験」に「比べる」ということを追加してみましょう。
みなさんだったら、どんなふうに比べてみますか?日なたと日かげで比べる?それとも室温と冷蔵庫で比べる?風ありとナシで比べる?結果は想像できますよね。こうしたほうが乾きやすそうだなって予想がつきますよね。実際にやってみると、たまに裏切ってくることもありますが。それをなんでだろう?って考えるのが面白いところでもあります。

いかがでしょうか。こんなかんじの方法だったら、自分の力でできそうな気がしませんか?途中で「難しすぎてもうヤダ!」なんて挫折することも無さそうですよね。

ここまでさんざん、「ゴール」とか「結果・考察」が見えてから研究を始めるといいよ、とお伝えしてきました。
実は、実際の研究のお仕事もそんな感じなんです。実験を組み立てて、その結果の予測ができて、さらにその結果が世の中に貢献できるような意味のあるものだ、というところまで考えてから、初めて手を動かし始めます。「こういう実験したらどうなるかな〜?」なんて段階で、実験を始めることはほとんどありません。ものによりますが、研究ってたいていの場合、けっこうな時間とお金がかかります。この方法ならちゃんと意味のある結論が出せる!と分かっていなければスタートさせられないんです。

さすがに小学生の場合は、世の中に貢献するところまでは意識しなくても大丈夫ですが、少なくとも自由研究をどういう道のりで進めて、どのようにしめくくろうか、というところまでは考えてから、研究を始めると良いでしょう。というか、しめくくりまで自分で考えられるレベルの内容を研究テーマにすると、後々楽になりますよ。

テーマの決め方のコツEX

自由研究用のワークショップに参加すると、楽に終わらせることができるよ!でも…?

夏休みになると、自由研究にどうぞという、うたい文句で子供向けのワークショップや科学イベントが色んなところで開催されますよね。普段はなかなかできない体験ができたり、様々なことに興味を持つきっかけになるし、自由研究のサポートもしてくれたりするので、利用しない手は無いです。
でもね、「研究を組み立てる力をつけたい」とか、「考える力をつけたい」と思うのなら、このようなワークショップで自由研究を終わらせてしまうのではなくて、それとは別に自分でテーマを決めて自分で方法を考えて、研究をしてみましょう。ワークショップではすでに型を用意されていて、特に難しいことを考えることもなく自由研究ができてしまうことがほとんどです。これは小学生の宿題であればもちろんOKですが、研究者から見るとそれは「研究」ではありません。ただの「作業」です。あまり頭を動かさずにできてしまうので、研究力はほとんど鍛えられません。

もし、ガチで研究したい!と思っているのであれば、ワークショップの力を借りずに、すべて自力でやってみてくださいね。どういう実験をしたらいいか、結果をどんな形の表に記録したらいいか、どんなグラフにしたら見やすいか、そういうところまで自分で考えるのです。そりゃ大変です。学校の教科書を自分が作るくらいのことですから。
でも、自由研究コンクールで賞をとるのは、たいてい、子供が自力で研究を組み立てた作品です。

……とはいえ、この時期に開催されるワークショップはとても魅力的だし、参加することにとても価値があると思います。ここだけの話、夏休みは自由研究なんて宿題をやめて、ワークショップをたくさん受けられるようにしてくれ、先生よ、と内心思っています。小学生の時期は、とにかく体験することが大切。小学生のうちに様々な体験を積んでおけば、それを基礎として、中学生以上になれば知的な活動が楽にできるようになります。研究活動はそれからでも全然遅くありません。現に、私が研究というものの本質を知って、自分で研究を組み立てられるようになったのは大学生になってからです。そんな私の研究力を支えたのは、子供の頃からやってきた工作とかお絵かきとか料理とか遊びの経験でした。特に工作。実際に手を動かしてものづくりをすることで、ものごとの道理を直感的に身につけていたのですね。具体的にどんなふうに役に立ったのかは……、話しはじめると三日三晩かかりそうなので割愛しますが、今でも工作したときの思考錯誤は研究にも生活にも大いに役にたっていると感じます。

なので、自由研究に頭を抱えている皆さん、自由研究はそこそこにして、貴重な夏休み、普段できない体験をしたり、じっくりと工作をしてみましょうプログラミングでのものづくりもオススメです。

いや、私は自由研究やりたいんだ!この記事でテーマの決め方はなんとなく分かったから、実験の組み立て方とかまとめ方を教えてよ!って方のために、もう一本、記事を書こうと思います。夏休みが終わる前に投稿できたらいいなと思います。投稿が間に合わなかったら、謝りますのでどうか許してください。

それでは、また(きっと)近いうちにお会いしましょう。悩める小学生のみなさんに少しでも役に立てますように!

カエル研究室 助手 コウでした。

→ 自由研究に悩む子供たちへ2
https://note.com/caeloolab/n/nb4bd25e6a047

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