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NFTの歴史を記録するブロックチェーン"History Ledger"の仕組みと役割

NFTには様々なユーティリティがあるということは、各方面でも言及されているが、果たしてそのNFTが様々なユーティリティで実際に利用された際にその「記憶」はトラストレスに記録されるのだろうか。

そんな疑問から生まれたのがHistory Ledgerだ。NFTは所有のつながりを記録することが出来る。つまり、誰から誰にそのデジタルデータが渡ったのかは記録されていく。すると、例えばあの有名人が持っていたものを私が持っているといった情報はうまく伝わっていくため、このつながりによる付加価値をつけることが出来るようになったのは革命的な出来事であるといえる。

ところが、そのNFTが前の持ち主、またその前の持ち主によってどのように使われてきたのかは知る由が無い。傷跡や劣化が起こっているわけでもない。あくまで誰からだれに渡ったかという情報しか伝わっていない状態だ。

実際の物には、もっと多くの情報が宿っている。例えば「関ヶ原の戦いで使われた鎧」とか、「あの名勝負で使われた刀」というようなものだ。

NFTにもそんな「歴史」を纏わせたい。それは、2017年から開発してきたフルオンチェーンブロックチェーンゲーム「Crypto Ninja」で構想していたことだった。

忍者は城の財宝(FT)を盗みに来る、城の城主はその忍者から財宝を守るという戦略シミュレーションゲームだ。その中で、各戦歴はすべてトランザクションとしてNFTに紐づいて記録される仕組みになっていた。​

ただ、2018年のCEDECでも発表したのだが、これには大きな問題があった。ゲームの状態が変わる毎にトランザクションが発生し、そのたびごとにウォレットでの認証を行わなければならないというわずらわしさと、書き込みにガス代がかかってしまうという点だ。

私はここから、仮想通貨を使わない分散台帳によるデジタルコンテンツの証明書システムによって、より簡単にブロックチェーンの良さを利用できる仕組みの開発に携わらせていただいた。

しかし、まだ当初に思い描いていた「NFTの歴史を記録する」というチャレンジはやっていきたいと思い。ずっとそのことを考えていた。

そして、ある日おぼろげながら浮かんできたんです。History Ledgerという言葉が。

History Ledgerの概要

NFTにそのまま歴史のトランザクションを記録していくには、NFTそのもののデータに書き込まなければならない。それはやはり厳しい。であるならば、NFTがIPFSの画像とリンクされているように、該当のNFTと、戦歴データを紐づけて管理すればよいのではないかと。

History Ledgerにはいくつか検討すべき技術要素がある。主に次の4つだ。

1.NFTとの紐づけをどのように管理するか
2.History Ledgerの確かさをどう担保するか
3.Ledgerの永続性をどう保っていくか
4.どのサービスでも参照できるフォーマットをどう作るか

1.NFTとの紐づけをどのように管理するか

NFTとの紐づけについては、NFTのトークンIDとLedgerIDを紐づける必要がある。これは一度固定してしまえば永続的にこのアドレスのこのトークンIDのHistory Ledger IDはこれだと1対1で紐づければよいので比較的実現可能かもしれない。

2.History Ledgerの確かさをどう担保するか

ブロックチェーン上のデータとして格納するため、基本的に書き込まれたデータが改ざんされるというケースはリスクとしては低いと考えられる。しかし、データを書き込む権限とそのデータが本当に正しいかどうかというのは常に確認しなければならない。

基本的に、ゲームやメタバース等のエコシステム側と接続し、オンチェーン、オフチェーンに関わらずそのデータを直接接続して受け取る形ができれば、ゲーム運営母体が不正をされる、もしくはオフチェーンのゲームそのものがハッキングされるという事態を除きある程度は安定して運用できるだろう。

運営母体のオフチェーン上のデータの攻撃に対しては今のところ頑張ってという他なく、もしバックアップがしっかりしてあり復元できるのであれば、Ledgerそのもののロールバック機能もあった方が良いかもしれない。

3.Ledgerの永続性をどう担保するか

これはLedger自体をパブリックチェーン化し、DAOでの運用をするというのが今取れるスタンダードな方法ではないだろうか。しかし、いきなりパブリックチェーンでの運用というのが難しい可能性もあるため、例えば3年後にDAO化するといったロードマップを引く必要がある。

4.どのサービスでも参照できるフォーマットをどう作るか

これは、業界全体で協議をしていくことも必要だが、ある程度ユースケースを作ってデファクトをスタンダードにしていくやり方が向いているかもしれない。基本的な規格はERC721のように厳格に決めておいて運用していくことが、データの可用性や相互運用性にとっては極めて重要であり、History Ledgerが信頼を勝ち得るための方法だと思う。

Hisotry Ledgerは、ゲームのバトルだけではない。例えばアート作品で「どこの美術館で展示された」といった情報や、「〇〇賞を受賞した」という受賞歴も記録することが出来る汎用性を持たせたい。

歴史を刻むというのはロゼッタストーンの時代から、もっとさかのぼるとアルタミラの壁画の時代から行われてきたものだ。平安の絵巻や中国の史書があるからこそ、我々はそれを学習し、経験として蓄積することが出来る。

History Ledgerは、NFTにより豊かな付加価値を与えることが出来る技術であり、デジタルデータの保管と並んで、NFTの進化に必要不可欠な要素であると確信している。

History Ledgerプロジェクトはまだ始まっていない。もし興味のあるエンジニアの方がいらっしゃったら、私のTwitterまでDMをお願いしたい。一緒に勉強会を開催しましょう!


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