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登-19 区分所有物件の登記表を覚える(2)

登-18では、マンションの躯体の表題部の登記項目について説明しました。

今回は、専有部分の登記項目について説明します。

登記と建物建設の時系列関係

皆さんが登記が苦手な理由として分譲マンションが完成するまでの登記の流れを理解していないことが理由にひとつにあります。
建物の建設と登記の時系列(建築確認も加えます)

1、土地の取得(土地の登記の所有権移転登録
2、建築確認申請、許可
3、躯体の建設開始
4、原始規約の公正証書
5、建物の屋根の完成(建物の表題部登録
6、各部屋(専有部分)の表題部登録
7、宣伝開始(カタログ等の作成)
8、躯体完成
9、原始規約の公正証書の変更
10、分譲開始
11、専有部分の売買成立(専有部分の所有権移転登録
12、権利部(甲区)に所有権移転登録
13、権利部(乙区)抵当権設定登録
但し抵当権等の設定がない時は乙区記載は無し

これが一連の流れになります。

前回説明した躯体の表題部登録は建物の屋根が出来た頃に登記申請がされます。(詳細は登-18を参照)

この時の躯体の所有者はデベロッパー会社、あるいは社長さんが所有者になります。
また、この時点で各階の床面積は、図面上の面積であって実測ではありません。(壁芯法で計算されています)

発売の準備

分譲マンションの発売の宣伝が開始できるのは建築確認後です。
当然、売るにはカタログも必要になります。
滅茶苦茶良い紙を使用した分厚いカタログです。
カタログには専有部分の権利関係も記載しますよね。
Aタイプ、床面積○○㎡、ファミリータイプ・・などなど
図面も掲載されています。

ただし、この段階では図面上の床面積です。
実際、施工が進むと図面通りにできないことは日常茶飯事です。
そこで、原始規約を何度も変更する必要があります。
カタログと登記床面積が違う理由はここにあります。
また、この時の面積は壁芯法で求めているケースが多く、登記簿の延床面積と一致しないことが一般的です。

原始規約で権利関係に間違いがないことを公正証書で作成することになります。

原始規約とは

区分所有法 第32条(公正証書による規約の設定)
 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第4条第2項、第5条第1項並びに第22条第1項ただし書及び第2項ただし書(これらの規定を同条第3項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。

 その4つとは以下の通り
・規約共用部分
・規約敷地
・専有部分と敷地利用権とを分離して処分できるとの定め
・敷地の持分

非常に重要な権利関係、管理共用部分、管理敷地、敷地の持分と分離処分が可能な物件であればここに定められます。

分譲が開始される

モデルルームが完成すると発売が開始されます。
未完成でも売買契約をされる方もいますし、竣工後に売買契約をされる方もいます。(売残りもでますね)

不動産を購入した経験者であれば、不動産契約は同時履行であることは理解していますよね。
分譲会社、金融機関、購入者が大抵は銀行に集合して、契約と金額の振込と同時に法務局に出向き、購入者は専有部分の移転登録(分譲会社の同意も必要)、金融機関は専有部分に抵当権設定登録をそれぞれに同時に行います。

分譲会社の所有物だったマンションが区部所有物件になります。

この時点で原始規約はマンション管理組合の規約になり、分譲会社が勝手に変更をすることができなくなり、これ以降は組合員の3/4以上の議決が必要になります。(特別議決と言います)

分譲マンション購入者の一人目が購入すると区分所有法3条にある区分所有物件になり、この時点で自然発生的に3条で示される管理組合が発生ます。

この段階で分譲会社も組合員になるわけです。
次々に専有部分の売買が進むと組合員が徐々に増えます。
一般的には戸数分だけの組合員が生まれるわけです。
*複数戸購入とかを考えないでくださいね。

登記が不動産の履歴書と言われる理由

躯体の表題部登録を行うと各部屋数分の専有部表題部を登記官が作成します。

この時、専有部分の表題部の所有者の欄にはデベロッパーが記載されます。
すべての専有部分の所有者ですから当然ですよね。
*専有部分と言う言い方が正しくはなく、各部屋の所有者が正確になります。専有部分は区分所有物件になった時に初めて付けられる名称です。

専有部分の表題部

次の項目がポイントです。

1、建物の名称

部屋番号が入ります。
各戸の専有部分の登記表には必ず躯体の表題部登録があり、マンションの名称はそこで確認できるため、建物の名称は部屋番号になります。

2、床面積は

一般的には原始規約で公正証書で定めた床面積になりますが、異なるケースもあります。(分譲会社が公正証書の書換をしない場合とは・・。)
ただし、この時の面積算出方法は、内法面積です。
(壁紙とかの厚みを考慮しない面積です)
注意してください。
ここで示される面積が登記床面積です。

もうひとつ、住宅ローン控除の対象となる「登記面積」がこれです。

現況(課税)面積

ついでに覚えておきたい面積は現況床面積(課税面積)です。
この面積は共用部分の持分面積(按分)を登記面積に加えた面積となります。
これが毎年納付する固定資産税、都市計画税などの納付税額の算出に用いられる面積です。

3、敷地権の種類

借地にマンションを建てた時は借地権と言うケースもありますが、一般的には所有権になります。

4、敷地の割合

延床面積に対する専有部分の割合が記載されます。
躯体の表題部の各階の面積の合計ではありません。

各専有部分の床面積を、全ての専有部分の床面積の合計で割って算出します。

5、所有者

各専有部分の分譲前の時点での所有者は躯体の所有者になります。
そのため、必ず、表題部の所有者には躯体表題部の所有者が登記官によって記載されます。

結果、新築マンションを分譲で購入した人は、決して所有権保存登録を行うことはできません。
必ず、所有権の移転登録になります。
*ここ試験に出たことがあります。(注意です!!)

デベロッパー=分譲会社の場合は、躯体の所有者はデベロッパーです。
購入者はデベロッパーから購入します。
そのため、すべての専有部分の表題部の所有権保存者はデベロッパーになります。

以上が、専有部分の表題部登録になります。

次回は権利部(甲)と権利部(乙)について説明します。


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