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登22-令和2年度、過去問(登記法)

Aが所有する甲マンション201 号室には、AのBに対する債務を担保するためにBの抵当権が設定されている。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Bの抵当権の効力は、Bの抵当権が設定された当時、既に201 号室内に存在していた従物に及ぶ。

2 Bの抵当権について設定登記がされる前に、Cが、Aから201 号室を賃借して同室の引渡しを受けていた場合において、Bの抵当権が実行されてDが同室を買い受け、Cに対して同室の明渡しを請求したときは、Cは、同室の賃借権を有することを理由にその請求を拒むことができる。

3 Bの抵当権が設定された後であっても、Aは、201 号室をEに賃貸し、Eから賃料を収取することができる。

4 201 号室にAのFに対する債務を担保するためにFの抵当権が設定された場合には、Bの抵当権とFの抵当権の順位は、抵当権設定契約の前後によって決まる。

問題文は長いですが抵当権設定の基本を問う問題です。

設問1の解説

1 Bの抵当権の効力は、Bの抵当権が設定された当時、既に201 号室内に存在していた従物に及ぶ。

この問題のポイントは「従物」とは何かを知っているかどうかです。
民法では主物(マンション専有部分)に附属せしめられた物のことを「従物」という(民法第87条第1項)。
取り付けられたエアコン、造棚、トイレ、バス、キッチンは従物である。
判例に現れた従物の例としては、建物に対する畳・建具、宅地に対する石灯籠・取り外し可能な庭石などがあります。

これを知っていれば、抵当権は従物にも権利はおよぶため、当然に抵当権の範囲に含まれます。

と言う訳でが正解です。

設問2の解説

2 Bの抵当権について設定登記がされる前に、Cが、Aから201 号室を賃借して同室の引渡しを受けていた場合において、Bの抵当権が実行されてDが同室を買い受け、Cに対して同室の明渡しを請求したときは、Cは、同室の賃借権を有することを理由にその請求を拒むことができる。

不動産登記の原則は権利の発生した時間軸により影響が及ぶ範囲が決まることです。
今回の問題は、設定登記がされる前の賃貸物件が引渡しされた後と記載されています。
と言うことは、借りた時は抵当権は設定されていません。
賃借人は借りる物件の登記を調べても抵当権の設定を確認することはできません。
以後の設問内容は、すでに物件が引渡された後に抵当権設定➡抵当権の実行➡物件所有者の変更が起きた時に、賃借人に明渡し請求ができるかと言うことです。

民法は弱者を守る法律です。
借りた後に起きたことを無関係の賃借人に不利益を与えることを許すはずがありません。
当然、賃借人は拒否することが出来ます。

と言う訳でが正解です。

併せて覚えること

では、賃借人Cがすでに抵当権が設定された物件を借りた場合はどうでしょうか。
賃借人Cは不動産登記を調べれば、抵当権がある物件であることを知ることができました。
と言うことで、抵当権設定➡抵当権の実行➡物件所有者の変更は想定できると判断します。
新しい所有者から賃借人に明渡し請求があった場合は、拒絶はできません。
ただし、すぐに退去しろ!では賃借人Cが可哀そうです。
そこで、6か月間の猶予期間を与える必要があると定めています。

設問3の解説

3 Bの抵当権が設定された後であっても、Aは、201 号室をEに賃貸し、Eから賃料を収取することができる。

この問題は、抵当権と質権の違いと抵当権に意味を問う問題です。
抵当権と質権はともに債務の返済が不履行になった時に、債務の対価として所有権の強制譲渡、あるいは売却による返済を求めます。

抵当権と質権の違いは、債務の返済期間中の物件の占有にあります。
質権は品物を預けるため、所有者はその利用ができません。
抵当権は返済期間中も自由に使用することができます。
この違いは覚えておきましょうね。

自由に使用することができる以上、賃貸借物件として利用することも可能です。

と言う訳でが正解です。

併せて覚えること1

もし、債務の遅延が起きた時はどうでしょうか。
抵当権設定者(債権者)は、債務者が得る家賃収入を債務の補填として回収することができるのでしょうか。
答えはできるです。

抵当権の行使は債権者の自由意思で行うことが出来ます。
住宅ローンの返済が遅延した場合、その債務に対しての給与の差押えをすることは可能です。(やるかやらないかは別にして)
この時は会社に対して債務者の給与の差押えを行います。
債務者の収入により債務を回収することはできます。

ただし、注意点として家賃が債務者の口座に入金されると出来なくなります。(口座の差押えが必要になる)
理由は、口座に入金されると口座残高と賃料の区別が出来なくなるためです。お金に名前が無いので区別することができないと判断されます。

これは火災保険等でも同じです。(過去問にもあります。)
抵当物件が火災で被害を受けた場合、保険金で債務を支払わせることは可能ですが、債務者の口座に入金された後には、請求できません。
先程同じお金に名前が無いので区別することができないと判断されるためです。
債権者は保険会社に保険金の差押えを行うことでお金を受取ることが出来ます。

抵当権は競売により債務を充当する方法ですが、最終手段であり、住宅ローンの返済不履行による回収方法には債務者の収入を差押える方法もあり、そのルールも併せて覚えることが重要です。

設問4の解説

4 201 号室にAのFに対する債務を担保するためにFの抵当権が設定された場合には、Bの抵当権とFの抵当権の順位は、抵当権設定契約の前後によって決まる。

この問題を解くポイントは抵当権の優先順位です。
1つの不動産に複数の抵当権が設定されることは珍しいことではありません。
不動産登記法の原則は、登記申請順位により権利の優先が決定されることででしたね。

ではなぜ、申請順位なのでしょうか。
これは登記簿が誰でも見れる為と考えてください。
1番抵当権が設定された登記簿を見た人は、抵当権設定契約の日付を優位になるように作ることができます。
それでは、不公平です。
そのため、抵当権設定契約の日付ではなく、登記所に申請した順番によって優先順位が決められると言うことです。

と言う訳でが正解です。

併せて覚えること2

抵当権だけでなく、権利についてはすべて申請順番に権利の順位が決定する不動産登記法ですが、例外もあります。
公的機関(住宅金融支援機構)が抵当権を設定すると自動的に1番抵当権になるケースがあります。
このような問題はマン管や管理業務主任者では出題されることはありませんが、知識として覚えておくと良いでしょう。(宅建試験やFPでは出題される可能性があります。)

解答


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