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「好きの傾向」の話。

17年間読み続けている漫画がある。
タイトルを『あひるの空』というその作品はいわゆるバスケ漫画で、本作の魅力は超人的なスキルを持つ主人公たちの爽快なサクセスストーリー…などではなく、むしろその真逆の超現実的なストーリー展開にある。
そう簡単に試合に勝てないのは序の口、暴力事件や喫煙による部室火災、ケガによる離脱や部員の退部など、試合以前のトラブルで思うようにいかない現実に苦しむ場面が何度も訪れる。
しかしそうして壁にぶつかる度、それを何とか乗り超えようと悪戦苦闘する主人公たちの姿に胸打たれる。
苦悩や挫折を未来への糧にすべく、前向きに行動し続けるひたむきさに心惹かれる。

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なお、この『あひるの空』を開始当時に中学生として読み始めた僕は、その後高校生の主人公たちをあっという間に追い越し、今や立派なアラサーになってしまった。
気付けば17年間も高校生として過ごしている主人公たちにやや嫉妬しつつも、一生に一度しかないキラキラした時間をこんなに長く見せてくれてありがとうという感謝もある。

ちなみに2021年8月現在において本作は休載が続いている状態だが、単行本は既に51巻まで発売されている。
ただ「一気に全巻読んでくれ」とは言わない。
まずは12巻まで読んでみて欲しい。
そこで話が一区切りするので、そこまで読んで刺さらなかったら切ってしまって構わない。
その代わり面白かったらぜひ続きも読んでみて欲しい。

さて、なぜこんな話をしたかというと「“好き”という感性の土台は幼少期に固まる」と改めて思ったからだ。
幼少期の経験や触れてきた作品群がその人の趣味趣向の下地を形成し、一生を通じた「好き/嫌い」の感性に影響を及ぼす。
そんな仮説をぼんやり考える機会が増えてきた最近のアラサー事情である。

話を変える。
僕には好きなアイドルがいて、グループ名を「クロスノエシス」という。
ドルヲタに好きなアイドルを語らせると往々にして主観にまみれすぎるので、あえてここでは距離感を取りつつ紹介すると「綺麗なお姉さんたちがダークで格好良い音楽に乗せてスタイリッシュなライブを見せてくれるグループ」ってなもんである。

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この通称「クロノス」ことクロスノエシス、はっきり言ってこれまで苦難が多かった。
2019年に結成するも、同年暮れにメンバー1人が脱退。
記念すべき1stワンマンが卒業ライブを兼ねる形で開催された。
翌年、新メンバー2名が加入するも直後にコロナ禍に突入。
ライブ規制により新体制での華々しいスタートを切ることが叶わず。
更に続くコロナ禍の影響で2ndワンマンは度重なる延期を余儀なくされ、一時は開催中止の判断を迫られるほど苦しい状況に追い込まれた。
しかし、逆境の中でもただ手をこまねいて傍観していた訳ではない。
対面イベントの規制中は配信ライブで新曲を披露。
2度の延期を経てようやく開催された2ndワンマンでは、思うようにいかない期間も決して絶やさなかった努力の跡をステージに強く深く残した。
そこから更に現体制としてのシングルを2枚発表。
更に3rdワンマンの成功…と、これまでの苦労をバネに躍進し、ファン目線にもカタルシスを感じる展開が続いている。
こうした流れを改めて俯瞰した時「あ、『あひるの空』と一緒だ」と気付いた。

単に他人が苦労している姿を見たいという訳ではないが、人間が理不尽な不幸や突然のトラブルに見舞われた際、その苦境にどう立ち向かい、どう受け止め、どう未来に繋げていくのかという姿勢と行動に興味があるのだと思う。
同時に、もし自分が「あひるの空」を通らずにクロスノエシスに出会っていたら、果たして今ほど熱を持って見られていただろうか、とも感じる。
そう考えると幼少期に「あひるの空」に出会えたことは僕の大きなアドバンテージであり、また現在クロスノエシスを好きで応援している経験も、同じく今後の人生に前向きに影響していきそうな予感がある。
創作の漫画作品と実在のアイドルグループという異なる性質ではあるが、果たして両者が今後どのような物語を紡ぐのか、引き続き楽しみながら追い続けていきたい。


P.S.
実在のメンバーと架空のキャラクターをチーム内でのポジションや共通項から紐付けて対応表を考えるのが個人的な趣味なので、「クロノス×あひる」でもやってみた。
そう思った理由もカッコ書きで添えるので、両者を知ってる人だけニヤニヤしながら読んでくれたら嬉しい。

AMEBAさん=千秋(唯一無二の存在感。チームの精神的支柱)
FLAMEさん=百春(切り込み隊長のムードメーカー)
LAKEさん=空(不器用だけど真っ直ぐな主人公気質)
RISAさん=トビ(絶対的スコアラー)
MAIさん=モキチ(クレバーで視野の広いセンスの人)

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