「アフターコロナ」で人事管理はどう変わるか

緊急事態宣言発令後、新型コロナウイルスの動向は非常に重要な局面を迎えている今日この頃。皆様はいかにお過ごしでしょうか?

今しばらくの外出自粛や手洗い、うがいといった予防策の徹底をしていきましょう。

さて、今回はこのコロナウイルスの影響で人事管理はどのように変容していくかというのがテーマです。

今回のコロナウイルスによって様々な問題が明らかになってきています。それらも含めて色々と考えてみましょう。

1.コロナ後の衛生管理はどうなる?

今回のコロナウイルスが明らかにしたものの一つに「衛生面」に対する認識の甘さが挙げられます。

医療機関や精密機器の製造など一部の業界を除いた多くのサービス業などにおいては特に、衛生管理の重要さが骨身に沁みて理解できたのではないでしょうか。

新型コロナウイルスが深刻化する前の段階で早期に「出勤停止」「自宅勤務」という対応ができた企業は非常に少数です。

また、多くの企業は経営を優先し緊急事態宣言が発令されるまでは経営を停止できませんでした。これらは仕方がない面があるとはいえ、ごく少数の早期に対応ができていた企業との対応の差は如実に表れてしまいました。

現時点でも「自粛要請」に応じず営業を続けている一部企業に対して店名を公表したり、嫌がらせが起きたりしています。

「自粛要請」に過ぎない以上このような反応が起こるのはおかしな話ではあいりますが、この辺も含めてリスク管理ができているか否かというのは大きなものであると感じます。

話を元に戻しますが、衛生管理という意味合いではかなりの変容が起こるのではないかと思います。

これまでは多少体調が悪くても出勤することが一種の美徳とされていました。風邪薬のCMなどを見てもそのような風潮を後押ししていました。

コロナウイルスに限らず、風邪やインフルエンザといった「他人に罹患させる危険性がある病気」というのは存在します。

休みを取りやすい体制作り、他社への感染リスクを低減させるための取り組みなどは早急に整備していかなければいけない衛生管理上の課題です。

2.テレワークの推進

出社して顔を合わせてコミュニケーションを取る。これまで当たり前のように行われていた慣習も今回のコロナウイルスの影響で見直しが迫られる課題の一つです。

衛生面以外でも、「働きすぎ」や「労働生産性の低さ」は長年の日本の課題です。忘れられがちですが、今年4月からは中小企業に対しても『働き方改革関連法』が適用されています。

柔軟な働き方のあり方については、もっと踏み込んだ形で考えていかなければいけません。

ひと昔前に比べると、ツールが充実化されたことにより自宅勤務の従業員とのコミュニケーションも格段に取りやすくなっています。

インターネットが物理的な距離という制約を取り払おうとしています。

これは、何も人事管理的な側面に限らず営業面や採用など様々な面で有効に活用できるものです。

出社させることの意義は何かというものを考えていかなければいけない段階にあるような気がします。

3.書類主義・印鑑主義の見直し

テレワークに移行できなかった企業の発言で注目すべきは「書類主義」「印鑑主義」です。

現物の書類や印鑑がないため、自宅勤務が難しいというものでした。

特に印鑑などは個人的には不要なものであるとすら思いますので、これを機に見直してもいいかと思います。

とは言え、大本の官公庁がそういう主義なのでなかなか難しい面もあるかとは思いますが・・・

印鑑を不要にするというのは、改めて決済のプロセスを見直すことにもなります。

「起案者⇒主任⇒課長⇒部長⇒代表」みたいに決済の印鑑欄だけ無駄にあるような書類が撲滅されれば、よりスピーディーな意思決定が可能になります。電子印や電子署名で十分事足りる行為ですからね。

大事なのは、「署名」「捺印」という結果の形ではなく意思決定そのものであるように思います。

となれば当然、マネジメントのあり方や責任の所在を見直す必要がありますが。しかし、現代の経営に求められるのは決裁者の数ではなくスピードです。これについては次でお話していきます。

4.マネジメントのあり方はどう変わる?

という訳で、マネジメントの話です。先述の通り、今後のマネジメントは「スピード重視」の感覚が求められるかと思います。

さらに言えば、トップダウンの硬直化した指揮命令系統だけでは上手くいかないケースが増えるでしょう。

何もコロナウイルスの影響は関係なく、最近のマネジメントの風潮は「トップダウン」から「各人主義」に変わりつつあります。現場に求められるスピード感にトップダウン型では対応できなくなっているからです。

一人ひとりの役割や業務の範囲を明確化して、そこにおける責任と義務を持たせること。「命令通りに動けばいい」という管理型のマネジメントではなく、「自分で考えて動ける」人材を育てる必要性が出てきます。

当然、『チーム』という概念にも変容が生じるかと思います。一方通行だった「指揮命令系統」が各人の責任と義務の元、多様な形での「コミュニケーション」という形になるでしょう。そうなれば当然『役職』というものの意味も変わります。

そして、テレワークが進めば進むほど業務の「過程」を事細かく管理するようなマネジメントスタイルは取れなくなってきます。

筆者の知人の企業では、テレワーク実施にあたって15分単位の「日報作成」を義務付けているそうです。

「監視していなければ人はサボる」とでも言いたいのでしょう。このような監視型・管理型のマネジメントはほぼ意味をなさないでしょう。第一、あまりにも従業員を信用してなさすぎる。

業務の責任範囲を曖昧にせず、「何をなすべきか」それに対しての「責任」は誰にあるのかを明確化すればいいだけの話です。

何でもかんでも全てを把握しようとするには無理があります。結果や成果物で判断すべきであり、過程は委譲してかなければいけないと思います。繰り返しになりますが、マネジメントに求められるのは「スピード」です。

他人を監視して逐一指示を出すようでは後手に回ってしまうだけです。

5.採用はどう変わる?

今回のコロナウイルスの影響が一番表出するのは恐らく「採用面」であるように思います。

新卒・中途に関わらず、大きく変わっていくでしょう。

これまでの「説明会」「面接」の対面型アプローチは一瞬にして変わっていっています。

今はツールの発達速度が速く、リモートでの面接や説明会は何の抵抗感もなくできるようになっています。

もちろん、対面型にも意味はあるのですがテレワークと同じくなぜ対面型でなければいけないのかを考えなければいけない段階にあると思います。

説明会や面接をオンラインで実施できるようになった利点は様々でしょうが、物理的距離の垣根を取り払えるのはかなり大きなアドバンテージであると言えます。

就活する側にとっての大きなネックの一つが交通費です。地方の学生が東京の企業を受験するにはかなりの出費が必要になっていました。

また、地方の企業が東京の人材を採用しようとしても同様の理由からなかなかうまくいかなかったのが現実です。

オンライン説明会やオンライン面接であればこのような問題は解決されます。

であれば、より広範囲に活動することが可能となります。企業側の目線で見れば、地場のライバル企業と人材を巡って競争していたのが全国区で獲得競争をしなければならなくなります。

これを「ライバルが増えて大変になる」と感じるのか「これまでアプローチできていなかった層を取り込めるチャンスだ」と感じるのかはそれぞれでしょうが。。。

しかしながら、否応なしに就活のオンライン化は進むでしょう。であれば、この流れにうまく乗っていける企業がより優秀な人材を獲得できるチャンスに恵まれると捉えた方が健全かと思います。

前向きにチャレンジングな姿勢を示していくことが、採用活動においてプラスになることは間違いないでしょう。

7.まとめ

ここまで「アフターコロナ」を見据えて何がどう変わるかを予想してみました。もちろん、個人の見解ですので全くの的外れという可能性もあります。

しかし、ここまで社会的にインパクトが強い情勢である以上、何も変わらず元通りになる方がおかしいと思います。

ここに挙げた例はあくまでも一部に過ぎません。もっと広範な変化が起こる可能性もありますし、変化が限定的な可能性もあります。

私たちのように「人事」に携わっている者にできることは、未来を予測してその変化に対応することです。未来を予測することはできても言い当てることはできません。それは恐らく別の仕事です。

今回の騒動で学んだことをどのように活かすのか。そして、次に大きなインパクトを与える事象が起きる前にどのような準備をしておくかが大切なことだと思います。

少なくとも、採用のオンライン化とテレワーク普及率の向上は確実であると考えています。それらに引っ張られるようにして、マネジメントスタイルが変容し、印鑑は電子印に変わっていく・・・このような流れが起きるのではないかと考えています。(もちろん同時並行的に動くこともあります)

まだまだ終息が見えず、経営的にも厳しい環境下ではありますがこの騒動が終わった時にスタートダッシュが切れるよう、しっかり準備しておくのは大切ではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?