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三秋縋という作家

 本屋で何となく買った”スターティング・オーヴァー”(デビュー作)に感動し、私は三秋縋という作家自身に興味を持つようになった。

 彼は2ちゃんねるで”スターティング・オーヴァー”の元となる話を、体験談のように書いて投稿していた。当時の作品は話題となり、様々なまとめサイトでまとめられている。『十年巻き戻って、十歳からやり直した感想』

 2ちゃんねるに投稿していた頃から、彼は有名だった。「げんふうけい」という自分のサイトで物語を投稿していて、たまに2ちゃんねるに現れる。彼はいつしか「げんふうけいの人」と、呼ばれるようになっていた。

 彼の作品を一度でも読んだ人はわかると思うが、思春期以降の人間が読めば強烈な印象を受ける作品が多い。

 子供の頃にやり残したこと、会いたくても会えなかった人、好きだと言えなかったあの日々。

 そんな、誰にでもある、寂しさを伴う懐かしさを、彼の作品はめまいがするほど鮮明に思い出させてくれる。

 

三秋縋作品のオススメ


デビュー作「スターティング・オーヴァー」
 三秋縋を知りたいと思ってくれた人に、必ず初めに読んで欲しい一冊。
 元となった2ちゃんねる投稿の作品「十年巻き戻って、十歳からやり直した感想」というタイトルの通り、主人公は二十歳の誕生日を迎えた日、朝起きると十歳に戻っている。自分の人生に納得がいっていた彼は「なんてことしてくれたんだ」と思い、今まで通りの人生を模倣して生きるようと努める。

 書影を用意したかったが、記事に使っても良さそうなフリーの書影が見つからなかったので是非調べてみて欲しい。大体どの本屋にも置いているイメージ。


三日間の幸福

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 三秋縋作品の中で、この作品を読んだことがある、知っている人はかなり多いと思う。好きな作家を答えると、「三日間の幸福の人?」と言われることがとても多い。
 寿命を売ることができる店を知った主人公は、自分の寿命をほとんど売ってお金を得ようとするが、自分の寿命に殆ど価値がなかったことを知らされる。
 自分の寿命には今どれほどの価値があるのか、考えながら読んでしまう作品。


君の話

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 新刊が出ず、死にそうになっている私が発売の知らせを聞いて飛びついて買い、面白くてすぐに最後まで読んでしまい「もっとじっくり味わいたかった」と後悔した作品。
 主人公は”偽憶”という、偽物の記憶を購入できるようになった世界で、偽億を愛する両親の元で育ち、孤独な人生を歩んでいる。しかし彼にも”偽億”上の、一度も会ったことのない幼なじみの女の子がいた。彼女は実在しないはずなのに、彼の前に現れる。
 自分の記憶は果たして正しいのか、どんどんわからなくなってくる。吸い込まれるような作品。


 2021年、「恋する寄生虫」という作品が映画化される。私はそれまで、じっくりと彼の作品の世界を味わいながら待つことだろう。

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