【開催報告】第7回 デジタルガバナンスラボ「デジタル人材の登用・評価システム」
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【開催報告】第7回 デジタルガバナンスラボ「デジタル人材の登用・評価システム」

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター

第7回目のデジタルガバナンスラボのテーマは「デジタル人材の登用・評価システム」。デジタル庁での人材獲得、AI人材の教育・育成の取り組み、民間企業におけるデジタル人材の登用・評価システム、そして近年注目を浴びている再教育「リスキリング」をトピックに取り上げました。ラボの後半では、デジタル庁に必要なソリューションとは?という問いに対し、採用、人材育成、評価、組織文化といった焦点を踏まえた活発な議論を行いました。


開催報告

デジタルガバナンスラボ
第7回「デジタル人材の登用・評価システム」2021年5月8日@オンライン

登壇者(敬称略)

津脇慈子(内閣官房IT室・デジタル改革関連法案準備企画官)
松尾豊(東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター教授 / 日本ディープラーニング協会理事長)
石黒卓弥(LayerX執行役員 / デジタル改革関連法案検討推進委員)
後藤宗明(一般社団法人Japan Reskilling Initiative代表理事)

<モデレーター>
酒井一樹
(Code for Japan / 元経済産業省デジタル化推進マネージャー)

立ち上がるデジタル庁-デジタル人材採用の観点から

ご存知のとおり、デジタル庁はデジタル化の遅れによって生じた社会課題を踏まえ、行政の縦割りを打破し、大胆な規制改革のための突破口としてその創設が進められています。

内閣官房IT室の津脇氏からは、デジタル庁における人材獲得の現場と課題について紹介がありました。国民が当たり前に望んでいるサービスやデジタル化による利便性を実感できる社会を実現するために、同庁は供給者目線ではなく利用者目線をもとにしたサービス提供を行うこと、官主導から民間主導に移行すること、透明性の高い政府を目指すことを掲げています。社会全体のデジタル化をリードする強力な組織を構成するデジタル人材の獲得のために、2021年4月から民間人材の募集を開始し、通年採用への移行を見据えながら採用活動を行っています。

デジガバラボ第七回

デジタル改革を牽引する人材を確保するために、ITスキルに係る民間の評価基準活用により採用を円滑に進める等、優秀な人材が民間、自治体、政府を行き来しながらキャリアを積める環境を整備することが「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において掲げられています。

AI人材の育成に向けて動く教育

IoT・ビッグデータ・ロボット・人工知能等により未だかつてない規模・速度感で変化している私たちの社会。複雑かつ多様な非定型作業においても省人化が進むと予測される一方、変革を支えるIoT技術・AI等の専門人材は不足しています。東京大学の松尾氏からは「AI人材の育成-最強の戦士を世の中に送り出す」というテーマのもと、東京大学松尾研究所を始めとしたAI人材の養成と教育現場の現状についてお話がありました。

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東京大学松尾研究所では、2014年からグローバル消費インテリジェンス寄付講座として、データに基づくマーケティングを行うCMO人材(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)の育成を目標に教育を開始。学生・社会人合わせて累計6000人超にAI教育を実施しました。松尾研究所出身のAI人材に共通する特徴として、ここ数年の卒業生の多くが起業や進学を選択していることがあげられます。この流れは松尾研究所出身者に限らず、情報系の人材でも広がりつつあり、スタートアップは一般的なファーストキャリアの選択肢となりつつあります。

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AI人材の育成は、大学生・社会人を対象としたものだけでなく、高専生にまで広まりを見せています。松尾氏が理事長を務める日本ディープラーニング協会(JDLA)では、高専生の「ものづくり」のスキルをベースに、ディープラーニングを活用したビジネスを考え、その事業性を競うコンテスト「DCON」を主催。同大会で出されたアイデアの中には企業価値評価額が5億円とされる事業も考え出されており、実際にDCONを経て創業されたベンチャーも誕生しています。

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最後に松尾氏は「現代の最強の戦士」を育てる環境を創るというビジョンを提示しました。優秀な人がスタートアップを興し、それぞれの産業領域で色々なイノベーションを興す未来を見据えています。

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デジタル人材を活かす組織を作る

新しい組織を作る上で、どのように人材を採用し組織作りをしていけばいいのかーーLayerXの石黒氏からは「デジタル人材の登用・評価システム」をテーマに、メルカリ・デジタル庁での経験を題材にしながら、特にデジタル人材の採用・組織作りについてお話いただきました。

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デジタル人材の採用、デジタル組織を作りあげるのに最も必要な本質的要素として、上述の5つを提示。特に人事では採用が重視されがちであるものの、採用後に組織を作る段階の重要さが強調されました。

石黒氏はデジタル庁の目指す方向性に関して、平井大臣の記者会見での答弁が単なる方法論に焦点を当てたものでなかった点を評価しています。例えば「誰ひとり残さないデジタル化」という方向性は、考え方への共感を持つ人材の採用と、採用後の組織作りの成功にとって非常に重要です。

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採用後の組織作りのありかたについて示唆に富んでいるのは、「ミッションとバリュー」に基づいた組織づくりを徹底しているメルカリの経営です。メンバーにはミッションへの強い共感を求める一方、意思決定に際してはバリューに基づいた意思決定が徹底されています。また組織運営においては、ミッションとバリューに対する「しらけ」を生まないためにも、一貫した意思決定・信念に基づいた行動を示していくことが重要となります。

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さらに石黒氏は、従業員体験(EX)に焦点を合わせること、従業員の期待値に合わせること(EA)が、デジタル庁における組織作りにも大切だと説きます。特に期待値に合わせるための手段の一つとして、組織の透明化を図ることの重要性を訴えました。

DXに向けた人材育成~リスキリングの実践

IoT、AI技術の発展は、企業の製品やサービスの生み出し方、提供といった幅広い領域で企業活動のあるべき姿を変えつつあります。こうした大規模なDXが進行するなか、一部の人材のみがデジタル技術に造詣深いだけでは不十分であり、より多くの人材がデジタル技術に知見を深める必要があるーーJapan Reskilling Initiativeの後藤氏からは、デジタル人材の育成として注目を集める「リスキリング」を紹介いただきました。

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海外を中心に注目を集めているリスキリングの概念には、その背景として採用コストと比較して安く済むという研究結果が出ていることや、必要期間が必ずしも長くないことなどが挙げられています。機械による省人化が不可避と見られるなか、失われる雇用に代わってデジタル分野で新たな雇用創出がおこっていることからリスキリングのありかたが経営課題となり、世界経済フォーラムでも2018年から社会全体におけるリスキリングの必要性を訴えています。

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海外事例として、企業・NPO法人主導、財団主導、行政と民間の連携による主導、行政主導など、さまざまなリスキリング事例について紹介があり、日本には上述のような国・企業・個人の各レイヤーで課題があるとの指摘がありました。その上でリスキリングはDX推進に必須であり、デジタル庁においても取り組むべきとの提言がありました。

デジタル庁が目指すべきものは

第二部のブレークアウトセッションでは、デジタル庁への提言も見据え、同庁が目指すべき姿を、人材採用方法、人材育成、人材評価手法、組織文化の観点で4グループに分かれて参加者全員で議論しました。

全体を通して、デジタル化を推進するには「スモールステップ」、つまり時には小さな失敗を重ねながら少しずつでも前に進む重要性、そして組織文化の観点からは失敗した際の担保となる心理的安全性の重要性を周知する研修の必要性などが議論されました。

おわりに

デジタル化に向けた取り組みは、アジャイルに進めていくことが重要であり、小さな失敗を繰り返しながら、都度都度軌道修正し、スケールさせていくことが重要です。デジタル庁だけでなく世論を形成する私たちも、失敗を涵養できる雰囲気を醸成していく必要があります。

デジタルガバナンスラボでは、今後も国民生活への豊かさに繋がるデジタル化の在り方を、官民の壁を越えたマルチステークホルダーで探るべく、今後も活動を続けて参ります。

Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 伊藤龍(インターン)
Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)
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