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ドライブ

 ドライブが好きなのだ。

 自動車が実家にある。
 といっても自分で買った自動車ではない。母(故人)が、父が亡くなってから買ってくれたものである。未だに母の名義だ。公正証書遺言で譲渡を明記されているのでいつでも名義が変えられるのっていいね。(めんどくさがりに公正証書遺言はとてもよいです)
 父が亡くなってから買った、と書くと、まるで父の遺したお金で買ったかのようだが、そうではなく、母のお金で買ったのである。単に、父の没後、母にとって自動車が家にあったほうが都合がよかったのだ。
 母は免許を持っていない。
 姉1曰く、結婚しようと考えたのは「理恵(わたし、このnoteを書いている当人)が免許を取ったからあんたはもう家を出ていっていいよ」と言われたからだそうだ。それまで、姉1は母を駅まで送り迎えしていた。つまり運転手だったのだ。
 運転手その2が爆誕したのでおまえはもう要らないよととれる台詞でもあるが、母としては、30過ぎても結婚できていなかった姉1への配慮だったのではないかとも今なら考えられる。しかし姉1はそうとらず、ずっとそのことを怒っていて、結婚後、正月に帰省するたび、正月の夜、誰もいない台所で、わたしにその話をずっと聞かせつづけた。そしてわたしは鈍いので「このひとは何故こんなことをわたしに言うのかな?(わたしに言っても無駄では?)」と思っていた。
 後年(15年くらい経ってから)、「おまえから母親に自分の不快を告げろ」という意味が含まれていたのだとわかり、姉1のいる前でその話をしたところ「そんなこと言ったっけ?」とけろりと返してきた母である。
 そんなわけで、他者を自分の都合に合わせさせることを無意識にしている母であった。母が自動車を買ったのも、運転手であるわたし(新幹線距離の遠方に住む三女)に、通院の送迎をさせるため。
 それまでも通院の送迎のたびにひと月半に一度、十日から二週間の帰省をしていたけれど、そのときには比較的近場に住む姉1の車を借りていたのである。(フリーランスでないとこの周期で帰省するのは無理なのに、フリーランスであることをたびたび責められたこともいつまでも忘れず根に持っているのだ)(姉1と姉2は自動車で1~2時間の隣県住まい)
 ほかにも母の、正しく自己中心エピソードには事欠かないのだが、noteには比較的楽しいことだけ書こうと考えているので(実行できているかは別として)、今回はここまでにしておこう。

 それでもわたしは自動車がすきでドライブが好きなのだ。遠くへ行ける。しかも自動車は居住性が高い。いろいろと持ち込める。自動車で旅をするときは選別せずに荷物を持っていける(だいたい使わず終わる)。
 購入した自動車にはナビをつけたので、以前だったら古い地図(前世紀に買った地図!)で確認していた道も、スッスッと入力するだけで道案内してくれる。でもナビさまはときどきとんでもないルートを示して徒労感を味わわせてくれるので、目安にするだけにとどまるようになった。
 実家はそこそこ田舎なのだ。実家から最寄り駅が目視できるが、たどりつくのに20分くらいかかる。もたもた歩くせいもあるが、途中の国道がなかなか渡れないためもある(地下道はあるが通りたいシロモノではない)。最寄り駅のひとつ手前、急行の終点からはバスが使えるが、休日(お盆や年末含む)は終バスが18時!!!である。先日うっかりその時季に帰省して、ぼんやりと20分くらい待ってから気づいた。うそだろ承太郎……タクシーひろって帰ったけど、そのタクシーだって来れば運がいいレベル。
 真の田舎住まいの民にはその程度で田舎ぶるなよと言われそうだが、物心ついたときに地下鉄の駅まで10分足らず、家の裏手の道路を越えたら書店がある土地に住んでいたので、現況はたいそうつらいのだ。
 微妙な田舎なので、自動車がないと買いものもたいへん。自転車はとなると、帰りはものすごい登り坂である。今年の1月に思いついてアシスト電動自転車を買ったけど、高校時代にほしかったな!(当時はそんなものなかった) この坂をのぼりおりしてよく犬山まで通ってたよ。自転車部があれば入ってこの環境を役に立てたかもしれん。
 実家があるのは地名に「丘」とついているが山を切り開いた宅地なのだ。誰だよこんなところに宅地造成したの。尾張徳川家の墓石を切り出すような山だよ。要するに岩山だよ。どういうこと。

 そんな土地だから自動車がないと生きていけない。自動車があるだけでQOLが上がる。
 母が購入した自動車にはナビだけでなくETCも導入したので遠出もしやすくなった。高速道路に入るとき、止めるのと減速して通り抜けるのとではあんなにもストレスが違うのだと、今になってしみじみと思い知っている。
 高速道路を利用すると、遠くまで行ける。もちろん料金はかかるが、とにかく行ける。今回(2019.10~11)の帰省で行ったのは、浜松、長野、琵琶湖の三か所だった。トータルで500km以上は走った。爽快。最高。ただし!
 ただし、中央道から長野道は自動車の前面に虫が体当たりをしてくるので車体がたいそう汚れたよ……
 ひどい。

 とにかく自動車はすてき。ドライブは楽しい。晴れでも雨でも、もたもたと走って、行きたいところへ行ける。急いでいない限り、道も譲るよ!
 ぐいぐい入ってくるマナーのよろしくない運転手はきっと漏らしそうなんだろう。いつもそう思ってる。

 ヘッダの写真は、中田島砂丘でつくったネコカップのねこ。可愛い。
(この記事、ドライブっていうか、自動車の話では……)