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【与太話】かめはめ波

ビジネスモデルとは関係ない与太話です。
なぜこんなものを載せているのかの理由は、こちらを参照してください。

かめはめ波

「かめはめ波…」とつぶやいた話をします。

あれは、小学生のとき、1人旅で他県に住む伯母の家に、1週間の予定で遊びにいった夏休みのこと。
その家には1つ上のイトコの兄ちゃんがいましたが、初日から様子が変なんです。
しきりに僕にモノをくれようとしました。

たとえば、家族の誕生日プレゼント用に作ったという肩たたき券の在庫。
「5枚セットなんだけど、いらない?」
断りました。
何枚セットでも欲しくありません。

「じゃあ、アイスの当たりの棒が2本あるけど、どう?」
「いらない」これも速攻で却下。
だってペロペロ舐めた棒だろ?ないわー。

そんなイトコが最後に出してきたのは
「しりとり必勝法」
と題した手書きのノートでした。

イトコの説明では、
スイカ→カズ(数)→ズック→クズ→ずるい→ いず(伊豆)…
のように、つねに「ず」で終わる単語を返せば、相手はそのうち言葉が尽きる。
「ず」から始まる単語は少ないからです。
「ず」以外にも「る」なども有効だとか。
そのノートには「ず」や「る」で終わる言葉が書き連ねてありました。

これにはちょっと魅了されましたね。
学校で自慢できそうです。

イトコはニコニコと言いました。
「じゃあ、そのノート、やるよ」

「え、いいの?」
ノートを受けとる僕。

「たしかに渡したよ」
イトコは妙にほっとした表情で念押ししてきました。

「時間ですよお。居間に来なさぁい」
翌朝5時。おじさん(伯母の夫=イトコの父)の声に叩き起こされました。

昔からこのおじさんは、子供相手でも”ですます調”で話す人でした。
それに語尾をちょっと伸ばす癖がある。

眠い目をこすりこすり居間に入ると、おじさんが待ち構えていました。
イトコの姿はありません。

「じゃあ今から算数ですよお。おじさんが問題を出しますからねえ」
「は?」
「この家ではねえ、毎朝ラジオ体操の前にこうして勉強する決まりなんですよお」
「ええっ?」

夏休みなのにこれから毎朝叩き起こされ、こんなアウェイな場所で強制勉強?
いや、自分、遊びにきただけなんですけど。

でもそのとき、思い出しました。
たしか、おじさんは小学校の先生で、仕事以外でもやたら人に勉強を教えたがる、「教え魔」だと母親が言っていたような…。

「あの…兄ちゃんは?」
「ああ、あの子はいいんですよお。あの子はねえ、1週間、免除ですからねえ」
おじさんはココココと笑いました。

事態が飲みこめてきました。

  • 「塾などに通わなくても、教え魔のもとに送りこめば、息子は勉強するだろう」うちの親は、そう読んでいた。

  • そしておじさんは、生贄がいれば、もとい、教える相手がいれば、それで満足。

  • イトコは身代わりに僕を差し出すことで魔の手を逃れた。1週間限定だけど。秘蔵のノートを気前よくくれたのは、罪悪感を軽減するため。

みんなの思惑が一致して、こんな展開になったのでしょう。

陰謀を理解した僕は、つぶやきました。
「そうだったのか。かめはめ波…」

おじさんがポカンとしています。

お前、それ言うなら「はめられた…」だろ。





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