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【与太話】ニセモノ女子

ビジネスモデルとは関係ない与太話です。
なぜこんなものを載せているのかの理由は、こちらを参照してください。

ニセモノ女子

小学5年生のときだったかな。

「なんかおかしい」

年が明けて3学期が始まった初日、クラスの様子が昨年と少しだけ違う気がしました。
どこがどう違うのか、はじめのうち、自分でも原因がよくわかりませんでした。

ところがその日の給食の時間。
班ごとに固まって座ったときに、はっ!と気づいたんです。

隣の班にいる、クラスの人気女子のN。
彼女はこっち向きで座っています。

目が一瞬あいました。

別人でした。

目が合うとすかさずニコっと笑うところは、さすが人気者の如才なさ。
ドキドキしました。

でも、知らない女の子だった。

顔はNですが、どこかぜったいNじゃない。
Nの席に座り、Nの声で話し、Nのようにふるまっている。
けど、彼女じゃない。

そう思っていたのは僕だけらしく、ほかのみんなは気づいていないようでした。
彼女も自然体でみんなと話しています。

怖くなった僕は、その日からNを意図的に避けるようになりました。
人気者のNは、僕が避けていることなんて気づかないだろうけど。

そんなあるとき。
担任の先生がトンデモ企画を発表しました。

「各自、好きなクラスメイトを1人選び、手紙を出しなさい」

手紙を書き、封筒に宛先を書く。
先生が全員のを集荷する。

翌日、先生がそれを宛先に配る。
誰が誰に送ったかは、先生と本当人たちだけの秘密。

という企画です。

これがなぜトンデモかというと、だって僕は誰からも手紙をもらえるアテがなかったから。

教師のほうはクラス内の人間関係をこれで把握しようと考えたのかもしれません。
でも、不人気者には孤独を思い知る企画でしたね。
令和の現代にこれをやったら、保護者からクレーム来るだろうな。

ちなみに僕は誰に手紙を書いたか、記憶がありません。
こういうところが良くないか。

それはともかく、翌日は配達の日です。

3席前に座っているNは、さすがに人気者。
手許に何通も手紙が届いているようでした。

いっぽう、僕はといえば、どうせ来ないよ。
何の期待もないまま、ボーッとしていると…。

「はい、ヨッシーくん」
担任の先生が、僕の机に手紙を1通、置きました。

驚いて手紙をひっくり返すと、差出人は、なんとNだったんです。

彼女は僕に背をむけて座っています。
ロングヘアーにリボンのうしろ姿からは何も読み取れません。

なんだろう。
もしかして人生初のラブレター、ゲット?

違いました。
たしかにハートマークがついていたけど…手紙にはこうあったんです。

「これからも黙っててね」





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