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Ep.45 「旅行」

僕はjamesと名古屋を歩いていた。なんとも言えない中途半端な都会のビル群が空気を冷たくする。寒い日だった。

僕とjamesは交差点へ辿り着き、赤信号で止まった。
暇だ。

キョロキョロした。
何もない。
ビルはある。
地面を見た。
おじさんがいた。

白ティーシャツ一枚ジーパン丸刈りのおじさんだ。

彼はまるでスパイダーマンのように地面に手を着き、今この場に降り立ったかのように見えた。
地面の感触を確かめるかのようにさわっさわっと触っている。

信号が青になった。彼は周りの人に追い抜かれてから歩き出した。

jamesが言った、この人について行こう。

そう、それは何もない土地で彷徨っていた僕たちに一筋の光が差した瞬間なのだ。
彼についていけば退屈だった1日が報われる、そう感じた僕たちは彼の背中を追った。

彼は行き交う人々、車、ビル群をじっくりと見て歩いている。しかしその眼差しは少年のように輝いていた。その輝きには疑問を覚えつつも僕たちは彼を追った。

しかし、突然、彼は立ち止まる。

なんだなんだと僕たちは臨戦態勢に入る。

そして目の前に現れたのは、Sony storeだった。

しかし彼が興味を持っているのは、その店の前に立つお姉さんが持っている小さな看板だった。

そこにはPSVR体験会やってます!のような文字とともにPSVRの写真。彼はそこを凝視していた。輝きは最高潮だった。

お姉さんは少し困惑しつつも彼に言葉を投げかける、よろしければ体験してみてくださーい。

彼は聞く耳を持たず看板を見ている。

そして、店の中へ歩みを進めて行った。

何が起こるんだ、、、僕たちの期待感はMAXだった。
一呼吸おいて、僕たちも店の中へ歩みを進めて行った。
中に入って早速VRコーナーへ向かった。

しかし、そこに彼はいない。

そして、jamesが見つけたその目線の先には、色鉛筆をもった彼の姿があった。

そう、彼は塗り絵をしていた。

???????

僕たちは混乱した。

なぜ塗り絵?VRじゃないの?

そうして混乱しているとVRコーナーのお姉さんが体験しますか?と声をかけてきた。

このまま店の中で彼を観察し続けるのは流石に怪しすぎると判断した僕たちはお姉さんにやりますと答えた。

実際PSVRは物凄かった。初めて電動自転車に乗った時のような、全身の毛がぞくぞくするような、未知のものを体験する時に覚える感覚が僕たちを襲った。

そしておそらく20分はたっただろう体験会は終わり僕たちはゲーム界の技術の発展に心を躍らせていた。

いやー面白かった。帰ろう帰ろう。そんなことを言っているうちに彼の存在を思い出した。

彼は今どこだ!もう塗り絵コーナーにはおらず消えてしまっていた。

少し残念な気持ちになりながらも、PSVRに感動した僕たちは店を後にした。

帰り道僕たちは彼は何者だったのかを考えた。

、、、、、、、、、、、、、、、、、

唐突に僕の頭に稲妻が走った。

まさか、、、彼は、、、

そう、彼は宇宙人だったのではないか。

地球に旅行中の宇宙人、そういうことにすればすべての事象に納得がいく。

まずは最初の出会いを振り返る。

地面に手をついて地面の感触を確かめるようにしていたところは、まさに今地球に降り立ち、この星の材質、肌触りを確かめていたのではないか。
コンクリートという肌触りこれはおそらく他の星には見られないだろう。

彼は行き交う人々、車、ビル群をじっくりと見て歩いた。これに関しては言わずもがなだろう。初めて生で地球を見るのだから当然である。

そして、彼が見ていたPSVRの看板。彼はその時、地球の文字を見て感動していたのか、はたまたPSVRという地球でいうところの技術の最高峰を見て、なんと古い物が存在するんだと感動していたのかもしれない。
僕たちからしたら縄文土器を見ているような感覚なのか。

そして、極め付けは塗り絵だ。おそらく最初はPSVRという彼の星では古代のものを体験しようと歩みを進めたものの、更に古い物を見つけた。それが塗り絵なのではないか。

塗り絵は彼の星の発達しすぎた技術から考えると見た事も聞いた事もないものなのかもしれない。彼らにとっては伝説のような、失われた技術なのかもしれない。だからこそ彼はPSVRを尻目に塗り絵に興じたのだ。

そう、彼は確実に宇宙人だった。

しかし、真冬に白Tシャツ一枚とはなんとも変装が下手くそである。もう少し四季を意識した方がいいよというのが地球人からのアドバイスだ。



白Tシャツしか着ないjamesもまた宇宙人なのかもしれない。

臼井

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株式会社BYNAZR−未知なる可能性に挑み続けるクリエイティブ集団 https://youtu.be/rRAgYZaia8A
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