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眠れない夜、甘いものに甘えたくなる。

夜眠る前に少しだけ甘いものを口に
する時のあの罪悪感のようなものから
逃れられない。

特に眠れない夜に。

辛い物も酸っぱい物にも感じないのに
お砂糖系の甘さにはそれがいつも
つきまとったまま。

好きになった芦屋が本店だったケーキ屋
さんのガラスケースの中には、タルトやパイや
おなじみのイチゴやショコラのショート
ケーキが並んでいた。

あのケーキショップはパンデミックの
せいでなくなってしまった。

ケーキショップのことを思い出すのは、なぜか
その店のことだったりする。

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職人さんがケーキを作る姿をいちど
見かけたことがあって、その時はみては
いけないものをみてしまったかのように、
そこには緊張した空気が張りつめていた。

鶴の恩返しみたいだった。

どんなシンプルなケーキやクッキーだって
その下ごしらえからの道のりを考えると
そこに流れている時間は、決して
スウィートじゃないってことを
目の当たりにした。

ついついショーケースの中でとても
簡潔にそして穏やかに存在している
せいか、ついついそのたたずまいに
騙されてしまうけれど。

ラップランドのベリーの記事を読んでいた。

国土の6割ほどがベリーの森でうめ尽くされ
ていて、6月から初雪が降る頃までずっと
ニュースではベリー情報が流れるという。

初雪が降る頃に収穫できるクランベリーを
思い描きながら、そこに暮す人たちは
いちにちの終わりを迎える時間になると
ミルクとクラッカーを食べると記されて
いた。

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すぐ側の文章ではムーミンの話も引用されて
いて。

パンケーキが入った「夜の箱」という名の
眠る前の楽しみをベッドの下にしまっておく
と書いてあって、そのことが気になって仕方
なかった。


ムーミンが届けてくれる甘い場所と彼らの
習慣を垣間みたみたいで、ふっとこころが
ゆるむ瞬間。

なんとなく夢想する。

口にする時に僅かばかりの後ろめたさを
憶えるのはたぶん、ちいさな甘いお菓子には
微かな後悔のスパイスが入っているんだと。

眠れない夜になるとこんなに甘いものが
欲しくなるのは、スイーツの幾つかに
たぶんじぶんが甘えたいんだろう。
そんな、気がしてきた。

夜っていつもなにかに甘えたくなる。

ひたひたと 樹液がつたい 移ろってゆく
ほとばしる 悲しみの中の 甘い欠片と


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眠れない夜に

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