好きな人に、好きと言えないまま生きて来たような気がするけど。
小さなギャラリーで、青と紫に光る
ちいさな万華鏡を数年前に箱根で買った。
十字架みたいな形をしているそれの横に
やさしくつらぬかれたガラスの棒をくるくる
まわすと、ビーズのような粒や星が、
オリーブオイルに似た色つきのとろんと
した水の中で泳ぎながらおちてゆく。
ダイニングキッチンの灯りの下や
廊下の淡い間接照明の下、
じぶんの部屋のぼんやりした傘の下。
丸くちいさく開いた窓から覗いていると、
花の開花を高速度で垣間見ているような
ふしぎな気持ちに一瞬