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着物をモンゴルへ——リユース100%に懸ける想い

こんにちは。バイセルの商品1部の井上です。
日々の業務では着物の在庫管理を行い、商品の最適な在庫配分、販売先を決定しています。

バイセルでは年間100万枚もの着物をお買取りしています。全ての着物を有効活用するために、今までさまざまな販路を開拓してきました。

百貨店で催事を行ったり、自社ECサイトで販売したり、業者向け市場を開催したり・・・。いろいろな手段で、必要としてくださる人のもとへ着物をお届けしています。

さらに、昨年11月からは、新たな試みとして日本国内で販売が難しい着物をモンゴルに提供する事業を開始しました。

「着物ってモンゴルの人たちに人気なの?」

と疑問を抱く方もいると思います。

ですが、実は結構ご好評いただいているんです。提供した着物がモンゴルの民族衣装「デール」に生まれ変わり、現地の方々に着用されています。

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最近ではメディアにも取り上げられ、多くの方から関心を寄せていただけるようにもなりました。

今回のnoteでは、モンゴル事業を通じて抱いている私たちの想いについて語ります。

すべてのリユース着物に持続可能性を

モンゴル事業のことをお話しする前に、どうしてモンゴルにまで着物を提供することになったのか、きっかけをお話ししたいと思います。

モンゴル事業が始まる前まで、バイセルでは着物の販路を十分に築けていないことが課題にありました。販路がなければ、少しの汚れがある着物でもお買取りするのが難しい状況だったのです。シミや焼け、ほつれなどがある着物は、そのまま商品として二次流通できなかったからです。

せっかくお客様が勇気を出して買取依頼をしてくださったのに、全てのお客様の想いに応えられない。その現状から、お客様から頂いたすべてのリユース着物を100%有効活用するために、より多様な販路の開拓を始めました。

入り口よりも販売の出口を広げることで、より多くのお客様からの買取依頼に応えられると考えたからです。

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着物の「素材」の魅力を発信すること

着物の販路開拓は、国内外で試験的に取り組みました。そのまま二次流通させることが難しい商品は、国内のリユースチェーン店に卸しても売れ残ってしまう。

それなら、着物の素材の価値を海外に伝えよう。部分的に汚れのある着物でも、絹や和柄には高級感や希少性がある。着物の素材の価値は、きっと誰かに必要とされていると信じていました。

絹糸は蚕が作り出す糸からできているので、製造工程は養蚕から始まります。その工程を踏まえても、着物をつくることは大変な作業だと思います。着物1着分の生地を作る場合、必要になる繭は50キロ。繭1つあたり1gなので、5000個分に相当します。・・・膨大な量ですよね。5000個分の繭からできた絹糸を使って、職人は手作業で着物を織ります。手間暇かけて作られた着物は化学繊維に比べて耐久性が高いのはもちろん、絹独特の光沢感があります

また、加賀友禅や京友禅に代表される華やかな和柄は、職人の手書きでデザインされています。細かいところまで行き届いた色鮮やかなデザインは、現代のプリント技術では再現できません。

着物1着がつくられる工程を知ると、次世代にちゃんとつなげなきゃいけないな、って痛感するんです。

そういった着物素材の特徴に親日国であるモンゴルの方々が注目してくださり、民族衣装「デール」に活用する試みが始まったのです。絹の肌触りの良さや和柄は、やはり現地の人に好評でした。

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また、現地の服飾学校で着物デールの制作授業が開かれ、20~30名の生徒が受講しています。着物のリメイク方法について熱心に授業を受ける生徒の姿勢から、着物デールへの熱量を感じました。

着物1つで国際交流や教育機会への貢献を果たせたことは、事業の目的以外のところでも大きな意義があったと思います。

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国内で使ってもらえなかったものが海外で価値を見出され、新しい形になって有効活用されること。モンゴル事業を通して、着物の素材としての可能性を日本でも感じています。

というのも、現地でデールにできない着物やデールを作った時に出るハギレを逆輸入し、反物として日本国内での販売を始めました。自社催事で試験販売した結果、売れ行きからハンドメイドのニーズがあることが確認できています。この取り組みが完全に機能すれば、着物のリユース100%が実現できます。

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リユース着物に加わる新たな価値

私たちは着物のリユース100%に大きなこだわりを持ってきました。日本人に生まれ、着物に関わる仕事をしている以上、着物文化の継承はマストであると思っています。

ですが・・・今の日本人の間では「着るのが難しそう」という心理的なハードルは高いです。特に若い人はそう感じてしまうことが多いでしょう。

着物をお譲りいただいたお客様の想いに応えるためにも、着物に対する心理的ハードルを越えていく。

これから私たちはリユース100%の第二段階として、着物に付加価値を付けた取り組み(=アップサイクル事業)に挑戦します。
着物に関するアップサイクルを実施している企業と提携することで、着物を気軽に着られるような商品の開発に携わっていきたいと考えています。

「特別な日」に身につけるものだった着物が、「なんでもない日」にも着ることができる。それが当たり前になるよう、今後は着物を取り入れた新しいファッションの提案をしていきたいですね。

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着物という伝統文化を新しい形に変えて後世に伝えること。

それは、私たち日本人の誇りの継承でもあります。今でこそ着物買取を行うリユース企業は増えていますが、着物流通量の多さはバイセルが随一。流通量が多いからこそ、業務提携などで着物を次世代に残すための輪を広げていける機会をたくさんいただけています。様々な活用方法を発見していくことで、私たちは着物リユース100%の質を高め、新しい着物の価値を創造し続けていきます。


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