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相次ぐフォークリフトの事故  22年の死亡事故34件 過去10年で最多

4月に大手運送会社で死亡事故

 フォークリフトによる労働災害が後を絶たない。フォークリフトの事故は毎年約2000件発生しており、2022年の死亡事故件数は34件と過去10年間で最多となっている。

 長野市の運送会社で、3月13日、荷降ろしの作業をしていた男性がフォークリフトの下敷きになり、死亡した。警察によると、男性は、フォークリフトに乗ってトラックの積み荷を降ろしていたところ、バランスを崩して下敷きになったという。
 また、4月23日、兵庫県加西市の大手運送会社で作業中のフォークリフトが横転し、操縦していた男性作業員がその下敷きになり亡くなった。警察によると、事故を起こしたフォークリフトはフォークを上げたまま走行し、フォークが天井に接触して横転したという。 
 フォークリフトは構造上、重心が不安定な乗り物で、バランスを崩しやすい。今回のような事例の他にも、最大積載量を超えた荷物の運搬やスピードの出し過ぎでも転倒事故は起こりうる。
「転倒」以外にもフォークリフトには様々な事故が起こる。「挟まれ・巻き込まれ」はフォークリフトのマスト(フォークを上下させる支柱)やヘッドガード(操縦席の屋根部分)に体の一部を挟まれたり、別の作業者がフォークリフトと別の車両との間に挟まれてしまう事例だ。

 「激突され」はフォークリフトに作業者がひかれてしまう事例を指す。この他にも操縦者がフォークリフトごと落下してしまう「墜落・転落」や、積荷が崩れ作業員に落ちる「飛来・落下」といった事故事例がある。
 フォークリフトの事故で最も多いのが「挟まれ・巻き込まれ」と「衝突され」であり、2022年から過去5年間に起こった死傷事故の6割強を占める。
 フォークリフトの販売とメンテナンスを行う会社社長は、事故が多い背景について、「コロナで人を減らした後、今は派遣からどんどん現場に人を入れてるが、不慣れなのもあって、労働事故が増えている。落下防止の腰ひもをフォークリフトで巻き込むとか、足を轢いてしまうとか。立って操作するプラッター1・5トンクラスは小さく見えるが、2400㎏もある。軽自動車5台分の重量。なので足を轢かれたら複雑骨折する。安全対策が急務」と説明する。
 
 三重県で複数の倉庫を構える運送会社では、作業中の操縦者への声かけを厳禁している。これは操縦者が声に驚いて操作を誤らないようにするためであり、同社では作業中のフォークリフトには絶対に近づかないよう注意を徹底している。 
 この他にも、勝手にドライバーにフォークリフトの操縦をさせないことや、自社のフォークリフトを他の事業者には使わせないといった区分けの徹底、倉庫間の通路に段差を設け、フォークリフトがスピードを出しすぎないようにする措置を施している。社長は「事故を起こさないためには、安全の基礎を地道に積み上げていくしかない」と話す。(7月1日号)

【写真】常に安全確認が求められる

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