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母と出遇う

私の母は、元気だ。
だから、いつもは母のことをそんなに考えていないし、思い出しもしない。
でも、先日担当した法要の時に、母のことを思い出した。


施主様のお母様の十三回忌法要だった。


施主様は法要の中で、急に思い出したそうだ。
子供のころ、学校に持っていく給食のナプキンにお母様が英語で曜日の刺繍を入れてくれ、そのナプキンを持っていくのがうれしかったこと。そのシーンとその時の気持ちが突然、立ち上がった。


 法要にはそんな力がある。
 僧侶の読経と、凛とした本堂のたたずまい。
 

その中に、亡き方と向き合う時、亡き方が姿を見せてくれる。姿を見せて、言葉をかけてくれる。微笑んでくれる。叱ってくれる。


私も、そのお話を聞きながら、離れて暮らす母を思い出した。母からはいつも本をたくさん読むように言われていた。子供の頃は分からなかったが、母は家庭の事情で中学しか出ていなく、勉強をする機会をもてなかったようだ。だから、子供の私には、生きていくための知識をたくさんくれる本を読む大切さをことあるごとに言っていたのだと思う。そしてそのありがたさを今はよくわかる。


施主様は法要を通して、お母様と出遇わせて頂き、私も久しぶりに自分の母と出遇わせて頂いた。

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